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2008年10月の投稿

Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【12】

【Mortal Kombat】

バジラの群れに混じり、突然大きな影がヘイゼル目掛けて飛び掛かって来た。
「な……ッ!? このっ!」
ヘイゼルは辛うじて、その攻撃を交したが、気を取り直し攻撃に転じようとした時には、その影は後方に跳躍し間合いから逃れていた。
砂色の外皮を持ち、昆虫の『蚤』を酷く擬人化したような姿をした生物は、身体を小刻みに上下させ、襲い掛かるタイミングを伺っている。
「ゴルモロも混じってるぞ! ヘイゼル、ユエルちゃん気を付けろ!」
ビリーが怒鳴る。
ゴルモロは二足で歩く人型をしており、蟹に似た爪を武器とし、長いクチバシ状の口で他生物の体液を吸い糧とするパルムの原生生物だ。
「やっかいな奴等がッ!」
ヘイゼルが舌打ちする。
トリッキーで敏捷な動きと、一気に間合いを詰めてくる跳躍力が手強い相手である。ユエルが相手にするには荷が重い。
「ユエル!」
「は、はいッス!?」
突然、ヘイゼルに名を呼ばれ、ユエルは思わず肩を竦めた。
「バジラの相手は任せた。牽制で良い、後はビリーがやってくれる!」 
「ヘ、ヘイゼルさんはどうするッスか!?」
「ゴルモロは俺が殺る!」
「そんな、手強そうッスよ? 一人じゃ無茶ッスってば!?」
「足手まといは黙って従っていれば良い! やるぞッ!」
「ヘイゼルさーん!」
ユエルの制止に耳を貸さず、ヘイゼルはゴルモロに向かって行く。
「ちょっと、ヘイゼル!? 私はどうすれば……」
アリアもヘイゼルの身を案じたが、悔しい事に彼女のロッドのPPは尽きかけており、援護も思うようにならない状況だ。
「アリアこれを使え!」
ビリーの声に反応し、アリアが顔を向けると、ビリーがアリアに向けて何かを投げてよこした。アリアは突然投げ渡された、それを何とか右手でキャッチする。片手に収まる位の大きさの物体。右手を開き中身を確認すると、それはフォトンリアクターのPPを再充填する為のカートリッジ、【フォトンチャージ】のシリンダーパックだった。
「有り難う、ビリー!」
アリアはビリーに感謝すると、急ぎロッドのシリンダーパックを交換を行う。
これでヘイゼルの援護に行ける!
「ユエルちゃん、奴が心配なのは解るが、バジラの数を減らす事が重要なんだぜ。ここは奴に任せようぜ!」
ユエルはビリーの言葉に僅かに迷った後、心を決めた。
「解ったッス。急いでバジラをやっつけて、ヘイゼルさんを助けに行くッスよ!」
ユエルの言葉にビリーはニヤリと笑みを浮かべた。
「上等、じゃあ始めようぜ!」

ヘイゼルは単身でゴルモロに斬りつけたが正直すぎる剣の軌道は、ゴルモロに難なく避けられた。カウンターで返された大きな爪の突きを交差した剣で受け止め、鍔迫り合いとなるが、横から別のゴルモロが飛び掛かって来た。
「無粋な、所詮は下等な獣かよッ!」
ヘイゼルが無茶な文句をつける。所詮動物並みの知能しかない原生生物である。一対一(タイマン)の心意気を理解できる筈も無い。
ヘイゼルは闖入者の攻撃を転がって避けるが、そこへ最初のゴルモロが飛び掛って来る。更に床を転がって避けるが、今度は二体目のゴルモロが飛び掛る。更に床を転がって避けると、またゴルモロが……。
(切がない、このままではいずれ追いつかれる!?)
焦り始めるヘイゼルだったが、追撃するゴルモロの足を、床に着弾したフォトンの光弾が止めた。
「このーっ!」
ソプラノの高い声を上げ、アリアが追撃のテクニック、バータを放つ。床を這うように直進する氷結のエネルギーを二体のゴルモロはサイドステップで交わしていた。
その隙にヘイゼルは起き上がり、剣を構える。好機を逃したゴルモロは、それ以上追撃をせず、睨みあいとなった。
「無理するなヘイゼル! 一人で何が出来る!」
ゴルモロの足を止める光弾を放ったビリーがヘイゼルに向かって叫ぶ。
「くっ!」
ヘイゼルは歯噛みした。
ビリーはユエルを守り、バジラを相手にしながら戦っていると言うのに、俺は……ッ!
ヘイゼルの苦悩をよそにゴルモロが攻撃を仕掛ける。やはりゴルモロの動きは速く、跳躍し飛び掛ってくる攻撃に対し、反応して避ける事が困難だ。
(ならば一旦受け止める!)
ヘイゼルは剣で受け止め防御し反撃に転じようとしたが、ゴルモロが尖った口先を突き出して来る方が早かった。
「なっ!?」
ヘイゼルは直前で顔を反らし避けたが、左頬を鋭いクチバシが掠め浅い傷が走る。
原生生物を相手に遅れを取る……。
(この程度か……俺の力は……ッ!)
繊細さにおいてキャスト並み、大胆さにおいてキャスト以上と言われた射撃センスを持つビリー・G・フォーム……。
成長途上にあるが、生まれついて高い法撃力を持ち、いずれ優秀なガーディアンに成長するであろうアリア・イサリビ……。
そんな仲間達に比べて、ヘイゼルには優れた面が無かった。
訓練生時代、天才(技術は)と言われたビリーに比べ、戦技評価も中の上と高くはなかったヘイゼル。
特別才能がある訳じゃない……俺だけが何も無い……だから俺は……俺には!

勝つ為の手段は選べないッ!

「おおおおぉぉっ!」
ヘイゼルは右手に握ったデスダンサーの柄尻で、組み合うゴルモロの顔面を殴りつけた。骨を砕く感触。左目を潰されたゴルモロが甲高い絶叫を上げる。ナノトランサーから左手にGRM社製ハンドガン『レイガン』を転送すると、右手の剣を放り投げ、逃れようと後退りしかけたゴルモロの首を押さえつけた。レイガンの銃口をゴルモロの腹部に押し当て、引き金を引く。ゴルモロが苦悶の悲鳴を上げるが無理矢理に押さえつけ、四度目の引き金を引いた頃には、ゴルモロの身体から抵抗する力が抜けはじめた。察したヘイゼルが全体重を乗せて身体を捻ると、ゴキリと言う鈍い音がする。そのままゴルモロの身体を仰向けに倒すと、痙攣しているゴルモロの喉元に渾身の力をこめた踵を落とし踏み付けた。果実を踏み潰したような水っぽい感触が足に伝わり、ゴルモロの動きが止まった。
鬼気迫る戦い方に本能的な恐れを感じたのか、もう一匹のゴルモロが躊躇している。
だが―――。
「その躊躇いは命取りなんだぜ!」
「命取りッス!」
ビリーが手にするバレル長い双短銃(ツインハンドガン)『アルブ・ボア』の連射と、ユエルの操るウィップの連撃が残る一体に止めを刺し、戦闘は終了した。
「ヘイゼルさ……ん……?」
ヘイゼルに駆け寄ろうとしたユエルは違和感に足を止めた。彼は釣りあがった凶暴な双眸で周囲を油断無く見渡している。どこか近寄り難い怖ろしい印象を受けた。
「ヘイゼル」
穏やかに呼びかけるビリーの声にヘイゼルはハッと我に返る。瞳から凶暴性が消えていくのをユエルは感じていた。ヘイゼルは肩から力を抜き大きく息を吐いた。
「相変わらず無茶苦茶だな……ハンターが武器を捨ててどうすんだぜ?」
ビリーはヘイゼルが投げ捨てたデスダンサーの片方を拾い、彼に手渡した。
「……言われなくても解ってる」
ビリーから手渡された剣をヘイゼルは乱暴に受け取ると、ナノトランサーに収めた。いつもの調子のヘイゼルに安心したのか、ユエルとアリアも二人に近づいて行く。
「とりあえず危険は無くなったな。情報が合ってればば此奴らが降りてきた上の階層に、フォトンチャージャーがある筈だ。補給と休憩にするとしようぜ」
ビリーがビジフォンのレーダーに動体反応が無い事を確認すると、事前に入手していたレリクス内部のマップと照らし合わせて指示を出す。
「解ったわ……ん? ヘイゼル、頬に傷が……」
ビリーの言葉に頷き、ヘイゼルの顔に目を向けたアリアが、彼が先程の戦闘で負った頬の傷に気付き、そっと触れようとする、その手をヘイゼルは払い除けた。
「あ……」
「触るな! ……掠り傷だ」
背中を向け歩き出すヘイゼルの後姿を、寂しそうに見送るアリアの肩に、ビリーはそっと手を置き「気にするな、いつもの事何だぜ」と声を掛ける。
「解ってる……うん、解ってるよ……」
アリアはビリーの気遣いに感謝しながら、消え入りそうな声で呟いた。
「ヘイゼルさん……」
三人の姿を見ていたユエルはヘイゼルの背中に視線を移し、見つめながら思う。
(皆は解っているみたいッスけど、私は未だ解っていないッスね……)

自らが望まぬのに、ガーディアンズとして生きる事―――。

触れる物を拒絶する高い心の壁―――。

全てに背くような孤高の反抗心―――。

(アナタの事(ココロ)を……)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ヘイゼルはアリアの好意的な態度を拒絶し、冷たく返した事を後悔しながらも謝る事は出来なかった。
(望んでガーディアンズになった訳じゃない筈なのに……何故、こんなにも苛立つのか……いや、解っている)
才能と言う力に対する劣等感。
それを嫉妬と呼ぶ事に、ヘイゼルは気付いていた。

---------- ここまで読んだ -----------

ユエル    「……」
ヘイゼル   「……(;´Д`)」
ユエル    「……で?」
ヘイゼル   「はいィ!?」
ユエル    「いつデレるッスか?(゚∀゚)」
ヘイゼル   「俺ツンデレなのか!? Σ(´Д`lll)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【11】(改定)

ちょっと気になった部分を修正しました(゚∀゚)

前のも残しておくので、どう違うか比べると面白いかも?

---------- 再開 -----------

グラール太陽系に存在する惑星の成層圏内を旅客・貨物運送目的で使用される飛行機械『Gフライヤー』
パルムの東地区には民間やガーディアンズが所有するGフライヤーの発着場、フライヤーベースがある。
フライヤーベースのターミナルでアリアと合流したヘイゼル達は、ガーディアンズ隊員移送用のGフライヤーに搭乗し、目的のレリクス近くにある野営基地へと出発した。
移送先の野営基地は、以前ラフォン草原で大規模なSEED汚染があった際に遂行された浄化作戦の際、前線基地として同盟軍が設置した物を、作戦終了後に撤退した軍からガーディアンズが買い上げ、ミッションへ赴く際の中継地として使用されている物だ。
今回、ヘイゼル達が受諾したミッションはラフォン草原にある、先史文明の遺跡群『レリクス』へ赴き、調査隊の障害となる原生生物、及び『スタティリア』を排除する物である。
四人は野営基地で一夜を過ごし、翌朝、日の出と共に借り受けたジープに乗り込むと野営基地を後にした。悪路を進む事、約二時間あまり、一行は目的のレリクスへ到着した。
森林地帯の最奥、悠久の時の中、生い茂る樹林に埋もれ、その遺跡は存在した。
「これが……『レリクス』……ッスか」
ユエルが樹木に溶け込んだ、巨大なピラミッド状の構造物を眺め、感慨深そうに呟いた。

【レリクス】

人類がグラール太陽系に移住する以前、およそ一万年前に存在した先住民の文明の跡。
非常に高度な技術力を持ち、その力は先のSEEDとの大戦末期に利用されSEEDを封印した、三惑星に跨る巨大な封印装置を建造した事実を見ても明らかだ。
だが、その高度な化学力を持った文明は、SEEDによって滅んだとされている。現代の人類より進んだ文明を持っていた彼等も、SEEDの脅威には勝てなかったのだ。
それでも彼等の遺跡は、グラールに移り住んだ人類にとって、研究資料の宝庫とも言える貴重な物である。
ユエルはピラミッド状の構造物にそっと手を触れてみた。風化して表面は磨耗している部分もあるが、それは非常に頑丈な物質で、石で出来ているのか金属なのか、それすら彼女には理解できなかった。
「おーい! あったんだぜ!」
遺跡を調べていたビリーの声が上がる。三人がビリーの声があった場所へ集まると、彼は入り口と思われる場所に密生した植物の蔦を小剣(ダガー)で切り払っていた。
「―――と、こんな物か」
人が侵入できる位に蔦を取り去ると、ビリーは一息付き、額にうっすらと浮かんだ汗を拭う仕草を見せた。蔦に覆われていた内部へ続くトンネル状の通路が露となっている。地上にある建造物は古代人の遺跡の一部にしか過ぎない。本当に重要な彼等の遺跡は地下に拡がっているのだ。

四人はレリクス内部へと侵入した。
内部は温度・湿度共に快適な状況に保たれている。数千年の経過を経ても、遺跡内部の空調設備は生きて稼動しているのだ。内部の壁や天井を無尽に走る、基板の配線を思わせる物の上をフォトン粒子が走り、明滅する淡い光源が生物の鼓動のように脈動している。
同盟締結百周年記念式典の当日に起こったSEEDの襲来による一連の騒乱……。
その最中、只の『遺跡』であると考えられていた『レリクス』が突然稼動を始めた。
一説にはSEED飛来が原因であると言われているが、本当の原因は解明されたはいない。
しかし言える事がある。レリクスは古代人が残した営為の跡などではなく、現在も生きて稼動している何らかの『施設』なのだ。
「相変わらず不気味よねえ……」
不気味なレリクス内部の様子に、アリアはぶつぶつと不満を漏らしている。
「だが来た以上、仕事はして貰うぞ? それが嫌なら邪魔だ。野営基地まで帰れ」
ヘイゼルが冷たく言い放ち、レリクスの奥へ歩き始めた。
「嫌なんて言ってないじゃない! もう、待ってよ!」
アリアは慌ててヘイゼルの後を追った。
「さ、ユエルちゃん、俺達も行こうぜぇ!」
「は、はいッス!」
先に進む二人の後を追って、ビリーとユエルも歩き出した。
今回、彼等がやって来たレリクスは、数年前に一度大規模な調査が行われている。その際に大掛かりな内部の掃討作戦が行われた経緯がある為、大きな危険は少ないと判断したビリーの読み通り、敵する原生生物も出現せず、一行は至って順調に奥へと進んでいた。
「こりゃ、何事も無く終わっちまいそうだ……読み通りとは言え、張り合いがないんだぜ」
ビリーがつまらなそうに鼻を鳴らした。既にブロックは二つ程経過しているが敵性の姿は見受けられない。長い通路を抜け、区画を仕切る自動扉を潜ると、かなり広い空間に出た。
「……楽な仕事にこした事は無いが、そう甘くはなさそうだぞ、ビリー」
「あはーん?」
ヘイゼルが顎で広間の奥を指し示したので、ビリーは視線をそちらへ向けた。広間の隅の暗がりで、小さな黒い影が群れを成し蠢いていた。
大きさは人の半分ほどで腕は無いが、後脚が大きく発達している。人類の起源となる惑星にかつて存在していた、小型の肉食恐竜を思わせる姿のそれは、こちらの存在に気付いたらしく、奇妙な鳴き声を上げると迫って来た。
「バジラだ!」
ヘイゼルが叫んだ。
『バジラ』と言うのが生物の個体名である。パルムに住む原生生物で通常地表に群棲しているが、稀に何処からかレリクス内部へ進入し繁殖しているケースもある。個体としては脅威ではないが、群棲し縄張り意識の強い習性があり、生活圏に侵入した他の生物には非常に攻撃的になる為、やっかいな生物だ。
「仕方ないが迎え撃つぜ。ヘイゼルは前へ出ろ! ユエルちゃんはヘイゼルの討ち漏らしを頼むぜ! アリアは二人のバックアップとテクニックの支援攻撃を!」
『了解!』ッスよ~!」
「OK! Let's lock!」
ビリーの指示に従い、それぞれが行動を開始する。意外な事かもしれないが、このパーティーの指揮を執るのは彼なのだ。
「発動!」
アリアから肉体機能を高め、シールドラインのフォトン反発力を上げる効果を持つ補助テクニックの支援を受け、ヘイゼルがバジラの群れに突っ込んで行く。ヘイゼルの両手にフォトン粒子が輝くと、ナノトランサーから転移した片手持ち剣が出現する。刃幅が厚いフォトンの片刃を持つ、GRM社製の『デスダンサー』と呼ばれる双片手剣(ツインセイバー)だ。
「おおおぉぉっ!」
右手の剣を突き出すとリアクターからフォトンの粒子がほとばしった。噴出す粒子を推進力にして敵陣に斬り込む。密集していたバジラに囲まれる形で足を止めたヘイゼルにバジラは襲い掛かった。デスダンサーのリアクターが再びフォトン粒子を噴き出す。フォトンの力で通常では有り得ない程の跳躍で空中へ逃れたヘイゼルは、空中で身体を反転させ、両手の剣を頭上に掲げるとフォトン粒子の推進力で身体を回転させながら降下し、ヘイゼルを襲撃する為、真下に集まっていたバジラの群れを一掃した。
ヘイゼルの攻撃を逃れていた数体のバジラがユエルに迫る。
「あ、あんまり近づいて来ないで欲しいッスよ~!」
ユエルは弱気な叫び声を上げながら鞭(フォトンウィップ)を振るっている。攻撃に精彩は欠くが、バジラは不規則な鞭の軌道に阻まれユエルに近づけないでいた。しかし、その内の一匹が鞭の攻撃を掻い潜り、ユエルに襲い掛かる。
「ひっ!」
悲鳴を上げるユエルの目の前で、飛び掛ろうとしていたバジラの頭部に風穴が開けられた。驚いて振り向くと、後方でビリーが銃身の黒いGRM社製の狙撃銃(ライフル)『バースト』を構えていた。
「あ、ありがとうッスよ~」
助けられた礼を言うユエルにビリーはウィンクして答えた。
「良いって事なんだぜ。バックアップは俺達に任せて、ユエルちゃんはもっと前に出ちゃうと良いんだぜ」
のんびりと話している間にも、ビリーのライフルは次々とバジラを捉えていく。簡単に作業をこなしている様に見えるが、彼の射撃センスは半端ではない。
「さあ、ヘイゼルの援護を」
ビリーの言葉にハッとなり、ユエルはヘイゼルに目を向けると、彼は多数のバジラに囲まれ苦戦していた。
「うわわっ! 今、援護に行くッスよ~!」
慌ててユエルはヘイゼルの元へ向かって行った。
「遅いわよ! 前衛なんだから、ちゃんと仕事しなさいよ!」
「す、すみませんッスよ~」
ヘイゼルの危機にフォーメーションのセンターまで上がって来ていたアリアから叱責が飛ぶ。
アリアはテクニック発動デバイス。優美なフォルムを持つ、ヨウメイ社製の長杖(ロッド)『ハウジロドウ』を手に、バジラの反属性『氷』系の単体攻撃用法撃術『バータ』を発動しバジラを牽制していた。
『アリア・イサリビ』
苗字が表すように彼女はニューデイズ出身で、ニューマンの父とヒューマンの母から生まれた混血児である。容姿はヒューマンであるが、ニューマンの資質を受け継いでおり、法術を行使する上で重要な彼女の精神力は、一般のヒューマンより高い数値を示していた。
「アリア! 突出しすぎなんだぜ!」
「解ってる!」
ビリーの指示がアリアの耳に飛び込んでくる。
(解ってはいる……けど……)
生まれのアドバンテージで高いテクターの資質を持つ筈のアリアの法撃は、バジラに致命傷を与えられていなかった。
回復テクニックの『レスタ』も後方からでは対象に届かない事もある。
経験不足による法術制御の未熟さ……彼女は発展途上のテクターなのだ。
四人の連携でバジラは次々と数を減らして行く。
「こいつらで……終わり……か?」
動いている二匹のバジラを見てヘイゼルが問う。流石の彼も息が上がっていた。
「ハァハァ……リアクターの……PP……もう無いわよ……」
アリアがロッドのPP残量(テクニック発動の際に消費される、デバイスのリアクターに装填されたフォトンエネルギーの事)を確認して泣き言を言う。
「ヘ、ヘイゼルさん! あ……あれを見て下さいッスよ!」
突然のユエルの声に彼女が指し示す方向に目を向けると、広間の奥にある別の階層へ繋がる階段から、戦闘の騒ぎを聞きつけたのか別のバジラの群れが降りて来ていた。
「そん……な!?」
その様子を見たアリアが呆然とする。そんな彼女とは対照的に、ビリーが不敵な笑みを浮かべて言った。
「良いねぇ、どうせ殲滅が目的だ。派手にいこうぜぇぇぇぇ!」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【11】(没)

グラール太陽系に存在する惑星の成層圏内を旅客・貨物運送目的で使用される飛行機械『Gフライヤー』
パルムの東地区には民間やガーディアンズが所有するGフライヤーの発着場、フライヤーベースがある。
フライヤーベースのターミナルでアリアと合流したヘイゼル達は、ガーディアンズ隊員移送用のGフライヤーに搭乗し、目的のレリクス近くにある野営基地へと出発した。
移送先の野営基地は、以前ラフォン草原で大規模なSEED汚染があった際に遂行された浄化作戦の際、前線基地として同盟軍が設置した物を、作戦終了後に撤退した軍からガーディアンズが買い上げ、ミッションへ赴く際の中継地として使用されている物だ。
今回、ヘイゼル達が受諾したミッションはラフォン草原にある、先史文明の遺跡群『レリクス』へ赴き、調査隊の障害となる原生生物、及び『スタティリア』を排除する物である。
四人は野営基地で一夜を過ごし、翌朝、日の出と共に借り受けたジープに乗り込むと野営基地を後にした。悪路を進む事、約二時間あまり、一行は目的のレリクスへ到着した。
森林地帯の最奥、悠久の時の中、生い茂る樹林に埋もれ、その遺跡は存在した。
「これが……『レリクス』……ッスか」
ユエルが樹木に溶け込んだ、巨大なピラミッド状の構造物を眺め、感慨深そうに呟いた。

【レリクス】

人類がグラール太陽系に移住する以前、およそ一万年前に存在した先住民の文明の跡。
非常に高度な技術力を持ち、その力は先のSEEDとの大戦末期に利用されSEEDを封印した、三惑星に跨る巨大な封印装置を建造した事実を見ても明らかだ。
だが、その高度な化学力を持った文明は、SEEDによって滅んだとされている。現代の人類より進んだ文明を持っていた彼等も、SEEDの脅威には勝てなかったのだ。
それでも彼等の遺跡は、グラールに移り住んだ人類にとって、研究資料の宝庫とも言える貴重な物である。
ユエルはピラミッド状の構造物にそっと手を触れてみた。風化して表面は磨耗している部分もあるが、それは非常に頑丈な物質で、石で出来ているのか金属なのか、それすら彼女には理解できなかった。
「おーい! あったんだぜ!」
遺跡を調べていたビリーの声が上がる。三人がビリーの声があった場所へ集まると、彼は入り口と思われる場所に密生した植物の蔦を小剣(ダガー)で切り払っていた。
「―――と、こんな物か」
人が侵入できる位に蔦を取り去ると、ビリーは一息付き、額にうっすらと浮かんだ汗を拭う仕草を見せた。蔦に覆われていた内部へ続くトンネル状の通路が露となっている。地上にある建造物は古代人の遺跡の一部にしか過ぎない。本当に重要な彼等の遺跡は地下に拡がっているのだ。

四人はレリクス内部へと侵入した。内部は温度・湿度共に快適な状況に保たれている。数千年の経過を経ても、遺跡内部の空調設備は生きて稼動しているのだ。内部の壁や天井を無尽に走る、基板の配線を思わせる物の上をフォトン粒子が走り、明滅する淡い光源が生物の鼓動のように脈動している。
グラール太陽系同盟締結百周年記念式典の当日に起こったSEEDの襲来による一連の騒乱……。
その最中、只の『遺跡』であると考えられていた『レリクス』は突然稼動を始めたのだ。
一説にはSEED飛来が原因であると言われているが、本当の原因は不明である。
しかし言える事がある。レリクスは古代人が残した営為の跡などではなく、現在も稼動している何らかの『施設』なのだ。
「相変わらず不気味よねえ……」
不思議なレリクス内部の様子にアリアはぶつぶつと不満を漏らす。
「だが来た以上、仕事はして貰うぞ? それが嫌なら邪魔だ。野営基地まで帰れ」
ヘイゼルが冷たく言い放ち、レリクスの奥へ歩き始める。
「嫌なんて言ってないじゃない! もう、待ってよ!」
アリアは慌ててヘイゼルの後を追った。
「さ、ユエルちゃん俺達も行こうぜぇ」
「は、はいッスよ~」
先に進む二人の後を追って、ビリーとユエルも歩き出した。
今回、彼等がやって来たレリクスは、数年前に一度大規模な調査が行われている。その際に大掛かりな内部の掃討作戦が行われた経緯がある。大きな危険は少ないと判断したビリーの読み通り、敵する原生生物も出現せず、一行は至って順調に奥へと進んでいた。
「こりゃ、何事も無く終わっちまいそうだぜ……読み通りとは言え、張り合いがないんだぜ」
ビリーがつまらなそうに鼻を鳴らす。既に二つ程ブロックを過ぎ、広い空間に出た。
「楽な仕事にこした事は無い。……だが、そう甘くはなさそうだぞ、ビリー」
広間の奥に小さな黒い影が蠢いていた。
大きさは人の半分ほどで群れを成している。腕は無く、発達した後ろ足で歩いていた。人類の起源となる惑星にかつて存在していた、小型の肉食恐竜を思わせる姿のそれは、こちらの存在に気付いたらしく、奇妙な鳴き声を上げると迫って来た。
「バジラだ!」
ヘイゼルが生物の名を叫ぶ。パルムに住む原生生物で地表に生息しているが、稀に何処からかレリクス内部へ進入し繁殖しているケースがある野生動物だ。
「ヘイゼル前へ出ろ! ユエルちゃんはヘイゼルの討ち漏らしを頼むぜ! アリアは二人のバックアップとテクニックの支援攻撃を!」
『了解!』ッスよ~!」
ビリーの指示に従い、それぞれが行動を開始する。意外な事かもしれないが、このパーティーの指揮を執るのは彼なのだ。
「OK! Let's lock!」
アリアから肉体機能を高め、シールドラインのフォトン反発力を上げる効果を持つ補助テクニックの支援を受け、ヘイゼルがバジラの群れに突っ込んで行く。ヘイゼルの両手にフォトン粒子が輝くと、ナノトランサーから転移した片手持ち剣が出現する。刃幅が厚いフォトンの片刃を持つ、GRM社製の『デスダンサー』と呼ばれる双片手剣(ツインセイバー)だ。
「おおおぉぉっ!」
右手の剣を突き出すとリアクターからフォトンの粒子がほとばしる。噴出す粒子を推進力にして敵陣に斬り込む。密集していたバジラに囲まれる形で足を止めてしまったヘイゼルに、バジラは襲い掛かるが、彼は跳躍し空中へ逃れていた。デスダンサーのリアクターが再びフォトン粒子を噴出す。フォトンの勢いで通常の跳躍では有り得ない程の空中へ逃れたヘイゼルは、身体を反転させ頭部を下へ向けると、彼を襲う為集まったバジラ群れに両手の剣の狙いを定める。フォトン粒子の推進力で身体を回転させ抉り込むような一撃を上空からお見舞いし、バジラの群れを蹴散らした。
「あ、あんまり近づいてこないで欲しいッスよ~!」
ユエルは弱気な叫び声を上げながら鞭(フォトンウィップ)を振るっている。攻撃に精彩は欠くが、バジラは不規則な鞭の軌道に阻まれユエルに近づけないでいた。しかし、その内の一匹が鞭の攻撃を掻い潜り、ユエルに襲い掛かる。
「ひっ!」
悲鳴を上げるユエルの目の前で、バジラの頭部に風穴が開けられた。驚いて振り向くと、後方でビリーが銃身が黒いGRM社製のライフル、『バースト』を構えていた。
「あ、ありがとうッスよ~」
助けられた礼を言うユエルにビリーはウィンクして答えた。
「良いって事なんだぜ。バックアップは俺達に任せて、ユエルちゃんはもっと前に出ちゃうと良いんだぜ」
のんびりと話している間にも、ビリーのライフルは次々とバジラを捉えていく。簡単に作業をこなしている様に見えるが、彼の射撃センスは半端ではない。
「さあ、ヘイゼルの援護を」
ビリーの言葉にハッとなり、ユエルはヘイゼルに目を向けると、多数のバジラに囲まれ苦戦していた。
「うわわっ! 今、援護に行くッスよ~!」
慌ててユエルはヘイゼルの元へ向かった。
「遅いわよ! 前衛なんだから、ちゃんと仕事しなさいよ!」
「す、すみませんッスよ~」
ヘイゼルの危機にセンターまで上がって来ていたアリアから叱責が飛ぶ。
アリアはテクニック発動デバイス、優美なフォルムを持つ、ヨウメイ社製の長杖(ロッド)『ハウジロドウ』を手に、バジラの反属性『氷』系の単体攻撃用法撃術『バータ』を発動しバジラを牽制していた。
『アリア・イサリビ』
苗字が表すように彼女はニューデイズ出身で、ニューマンの父とヒューマンの母から生まれた混血児である。容姿はヒューマンであるが、内面はニューマンの資質を受け継いでおり、法術を行使する上で重要な彼女の精神力は、一般のヒューマンより高い数値を示していた。
「アリア! 突出しすぎなんだぜ!」
「解ってる!」
ビリーの指示がアリアの耳に飛び込んでくる。
(解ってはいる……けど……)
生まれのアドバンテージで高いテクターの資質を持つ筈のアリアの法撃は、バジラに致命傷を与えられていなかった。
回復テクニックの『レスタ』も後方からでは対象に届かない事もある。
経験不足による法術制御の未熟さ……彼女は発展途上のテクターなのだ。
四人の連携でバジラは次々と数を減らして行く。
「こいつらで……終わり……か?」
動いている二匹のバジラを見てヘイゼルが問う。流石の彼も息が上がっていた。
「ハァハァ……リアクターの……PP……もう無いわよ……」
アリアがロッドのPP残量(テクニック発動の際に消費される、デバイスのリアクターに装填されたフォトンエネルギーの事)を確認して呟いた。
「ヘ、ヘイゼルさん! あ……あれを見て下さいッスよ!」
突然のユエルの声に彼女が指し示す方向に目を向けると、広間の奥にある別の階層へ繋がる階段から、戦闘の騒ぎを聞きつけたのか別のバジラの群れが降りて来ていた。
「そん……な!?」
その様子を見たアリアが呆然とする。そんな彼女とは対照的に、二人の男は疲れた表情の中にも、不敵な笑みを浮かべていた。
「クソが……ッ」
「良いねぇ、どうせ殲滅が目的だ。派手にいこうぜぇぇぇぇ!」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【完】

ユエル   「私達の戦いはこれからッスよ!(゚∀゚)」

ヘイゼル  「え、打ち切り!? Σ(´Д`lll)」

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【また】エルカ旅団決起【ACネタ】

今日のユエル(゚∀゚)

ヘイゼル   「わんこ!? Σ(´Д`lll)」

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ブテンとヒカイは似てる感じがするけど、フィニッシュの見た目がカッコイイのはヒカイッスね~(゚∀゚)

ヘイゼル   「(´-`).。oO(昔はブテンサイコー!とか言ってた気もするが…)」

で! 相変わらず雷獣を続けてたら、また『ダブルアギトック』基板が出たので、またまた早速仕込んでみましたッス!

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で、その結果!

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……な、何か、ネタにもならない。大喜びできる程でも無い物が完成したッスね……(;´Д`)<アラヤダ

ほ、本心ではオキクができるのを期待してたのに……

ブログのネタにもなりゃしね―――ッスよ!ヽ(`Д´)ノ

ヘイゼル   「いや、そこは期待すんなよ Σ(´Д`lll)」

でも、挫けないッス!

かの人の計画は着々と進行してるッスよ!(゚∀゚)

ヘイゼル   「え、何て……?」

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???    「私の名はユ……ゲフンゲフン! マクシミリアン・エルミドール! 最大のオキクテロ勢力『エルカ旅団』のお披露目の日は近い! 諸君、派手に行こう(゚∀゚)」

ヘイゼル   「休日使って何してんだ―――っ!? Σ(´Д`lll)」

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最大の敵は……

今日も巨大な敵に挑む、ユエルでッス(゚∀゚)

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雷獣S2ミッションにも慣れて最近ですが…

私の野望を阻む存在に気付いたッスよ

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ジュノー(PM)! お前だったッスか!?

成功率80%(位だった気が…)のダブルアギトをオキクに変えられた時は、笑って許したけど

せめてもと思って拾ったダブルアギト『ック』(成功率70%代)までオキクに……

今度はさすがの私の怒りも有頂天!

ヘイゼル   「○ロ○トさん!? Σ(´Д`lll)」

と言うか2個連続でオキクッスか!?

お前をオキク製造機にした憶えはないッスよ!

怒りが憎しみを…憎しみが行過ぎた攻撃性を…

こうして一人の少女がオキクテロリストの道を歩み始めた

ガーディアンズの天敵と呼ばれた彼女は、史上もっとも多くのオキクをテロした個人でもある……

ヘイゼル   「だから、また限定ネタを挟むなって Σ(´Д`lll)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【10】

~初心者でも解る、ここまでの粗筋~
ガーディアンズに所属するヘイゼルは、雨のパルムで一人のキャス子と出会う。
ひょんな理由で彼女を保護したヘイゼルだったが、彼女は自分に関する記憶を失っていた。
ガーディアンズ・パルム支部のキャスト専門医、モリガンの助力により、彼女の素性がガーディアンズに所属する『ユエル・プロト』であると判明する。
ユエルはグラールの未来を護るガーディアンズとして働く事を決意するのだった。
ユエル   「あれ? 四行で済んだッスよ?(゚∀゚)」
ヘイゼル  「短っ!内容薄いな!? Σ(´Д`lll)」
ユエル   「だが、まさにこのとき、濁り水はゆっくりと流れはじめていたのだ……ッス(゚∀゚)」
ヘイゼル  「また、理解者限定のネタをッ! Σ(´Д`lll)」

---------- 再開 -----------

ヘイゼルは再び、ガーディアンズパルム支部 キャスト専門医 モリガン・ホプキンスの元を訪れていた。
ブックスタンドからクリアファイルを取り出し、中に入ったカードを抜き取りながらモリガンは言った。
「ほら、頼まれてたユエルのガーディアンズ・ライセンスカードだ。再発行手数料は、お前の報酬から天引きしておくからな」
「ああ……って、俺が払うのかよっ!?」
「当たり前だ。あの娘は金を持ってないんだろ? 大して高いものでもないんだ。男の癖にケチケチするな」
ヘイゼルは「散財だ」とぼやきながら、モリガンからユエルのライセンスカードを受け取った。
ガーディアンズに所属する隊員達は、各自に身分証明証となるライセンスカードが発行される。だが、ユエルはこのカードを所持していなかった。カードの紛失が彼女の失われた記憶と関わりがあるのかは解らない。
全ては失われた、ユエルの記憶だけが鍵を握っている筈なのだ―――。
「念の為だが悪用防止の為に、以前ユエルが所持していたカードは使えないようにしてある。お前の事だから、その辺の手続きは苦手だろ?」
「……すまん、正直助かる」
「ほ! 殊勝な所も出て来たじゃないか。一応、お前も成長してるんだな。関心関心」
言わなきゃ良かったと、苦虫を噛み潰したような顔を見せるヘイゼルに、モリガンはニヤリと笑って見せた。
「しかし、お前達にとって大事なライセンスカード……何処で失くした物か……」
「そうだな……」
ぶつぶつと呟くモリガンに生返事を返し、ヘイゼルは受け取ったカードに目を落とす。
「ユエルの記憶喪失の件なんだがな、お前も何か気付いた事があったら教えてくれ……ちょっと引っかかる事があるんだ……」
ライセンスカードにプリントされた、証明写真を改めて見ていると、やはり何処かで見た記憶がある。
―――だが、一体何処で? それが思い出せない―――。
「それでだ……ユエルの調子はどうなんだ?」
モリガンの問いに、ヘイゼルはハッと我に返った。
「あ? ああ……記憶の事か? だったらまだ戻ってない」
「違うよ。リハビリの件だよ。ガーディアンズとして再出発する為に、おまえと訓練しているんだろ?」
「ああ、その話しか……」
一週間前の朝、ユエルはガーディアンズへの職務復帰をヘイゼルに宣言した。
確かに以前のユエルはガーディアンとして働いていた。ライセンスに記された情報に間違いが無ければ、WTという上級職である。それなりの実績はあったのだろう。
しかし彼女は今記憶を失っている。それまで経験していたガーディアンズの知識、スキルは生かせない。平たく言えば足手まといにすらなりかねない、そんなあやふやな状態だ。ヘイゼルはユエルの願いを却下したが、人々の為に働きたいと言う、ユエルの強い希望……自分とは真逆の強い意志に、やがて反論の言を失い、最後には折れざるをえなかった。
それでもユエルを行き成り、ガーディアンズの作戦に同行させる訳にはいかない。記憶を失っている限り、彼女の戦力は訓練生レベルの実力も期待できないからだ。そこでユエルは、リハビリと称し訓練を開始した。初めは一人でパルム支部の訓練場に通っていたユエルがが、見かねたビリーが半ば無理矢理ヘイゼルを伴って彼女の訓練に協力している。
「どんな感じなんだ。機動警護班隊員としてのユエルは?」
「何と言うか……変わった奴だよ。あいつがWTだってのは知ってるよな?」
モリガンは「ああ」と頷いた。
「習得技能(フォトンアーツ)を見たら、習得してるテクニックが凍結攻撃系のテクばかりなんだ」
「凍結攻撃特化か……だが、それはキャストとしては正解かもしれんぞ?」
『テクニック』とはフォトンを介し生み出す超常の力の事である。
古くは『ESP』や『魔術』や『心霊力』等と呼ばれていたこの力は、人の精神とフォトンが触媒となって生じる反応だと科学的に証明され、現在は利用されている。
機械生命体であるキャストは、精神力が威力に比例する法撃(テクニックを利用した攻撃)の制御を苦手としている。故に攻撃力としての法撃には頼らず、目標を凍結させ動きを封じ、状態異常を狙う事が目的の戦術ならば、判断としては間違っていないと言えるだろう。
記憶を失う前の彼女は、戦略的な物の考え方もできるガーディアンだったと言う事か……。
訓練中、ワンド(片手杖)をぶんぶん振り回し、テクニックが発動しない事に困惑するユエルの姿が浮かぶ。
『テクニックが撃てないッスよ!?』
『何度目だ! ワンドとテクニックをリンクさせろよッ!』
ヘイゼルは訓練中に幾度か行われたやり取りを思い出して言った。
「いや、あれは素で天然だと思うぞ……」
「近接戦闘の方はどうだ? WTなら前衛にも出なければならんのだろう?」
「通常の攻撃は怪しいが、後は習得している打撃系の『フォトンアーツ』で誤魔化せるだろう」
フォトンアーツはディスクを介して、脳に情報をダウンロードする事で習得する。打撃系のフォトンアーツ・スキルは武器とリンクさせる事で、常人でも達人並の戦闘技術を実現可能としているのだ。
「どのみち、俺達のPT構成だとメインアタッカーは俺で、背中にはビリーも居る。フォローはできるさ……」
「存外、面倒見が良い奴だよな、お前も」
「誰のせいでこんな事になったと思ってやがる!」
しみじみと呟くモリガンにヘイゼルは憤慨した。元はと言えばモリガンがユエルの面倒を押し付けたから、こうなったのではないか!
ヘイゼルは話しを切り上げ、部屋を出て行こうとする。
「まあ怒るな。キャスト嫌いだったお前も、変われば変わる物だと関心してるのさ」
部屋の扉が開く。通路に出る瞬間、ヘイゼルはボソリと吐き捨てた。
「今でも嫌いだよ……」
「―――え?」
言葉を聞き咎め、モリガンがその意味を確かめようとした時には、ヘイゼルは既に部屋を出てしまっていた。
「おい、ヘイゼル!」
慌てて彼を追い、部屋を出たモリガンだが、ヘイゼルは呼びかけを無視しエレベーターに乗ってしまっていた。
「……まったく……」
諦めて部屋に戻ろうとすると、通路の角に半身を隠している人影に気付いた。白い外装パーツに印象的な薄紫色の髪……。
「ユエル!?」
モリガンが思わず上げた声に驚き、ユエルが姿を現す。
「あ、そ、その……そろそろ皆の所へ戻らないとッス!」
ユエルは誰にともなく説明すると、モリガンが止める間もなく、反対側のエレベーターに向かって走り去ってしまった。
「あ、おい! 待……本当に人の言う事を聞かない奴らだね……」
モリガンは溜息をつきながら頭を掻いた。
「聞かれたかな? あれは……」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「待たせたな」
ヘイゼルは支部一階の職員用カウンターに戻って来た。
そこでは、ビリーがカウンターに片肘を付けて、受付嬢のキャストに何やら話し掛けていたが、彼女は明らかに迷惑な苦笑いを浮かべていた。
「いや、こっちもお前が居ない間に楽し……じゃなくて、ミッションを選んでおいたぜ」
ビリーは名残惜しそうに受付のキャスト嬢にウィンクし、片肘を付いたまま此方に向き直る。
何をしていたのかを、深く追求するのも面倒なので流しておこう。
「そうか……ユエルはどうした?」
ヘイゼルが周囲を見渡すが、一緒に来ていた筈のユエルの姿が見えない。
「あれ? ついさっき、お前を迎えに行くって上に行ったんだけどな……会わなかったか?」
「いや、見掛けなかったな……手間を掛けさせてくれる」
首を振るヘイゼルにビリーは意味あり気な笑みを浮かべて言った。
「心配性だな、らしくないんだぜ?」
「誰が心配などッ!」
「怒んなってば……居たんだぜ」
ビリーは宥めるようにヘイゼルを制すると、エレベーターホールの方を指差す。扉の開いたエレベーターの中にユエルの姿が確認できた。
「ただいまッスよ~」
エレベーターから降りたユエルが、パタパタと走りながら二人の所へ戻って来る。
「勝手にうろつくな!」
「す、すみませんッス~」
「まあまあ、落ち着けよヘイゼル……ユエルちゃんも気にスンナって! こいつも心配してただけだから」
ヘイゼルに怒鳴られ、しょんぼりするユエルをビリーは気遣う。
「だから、誰が心配を……ッ!」と言い返し掛けたヘイゼルの口を片手で塞ぎ、ビリーは話しを進めた。
「それでだな……レリクス調査の任務を受けておいたぜ。数年前に一度調査が行われた遺跡なんだが、今回再調査が行われる事になったんで、調査隊が内部調査に入る、その前の露払いをする……ってのがミッションの内容なんだぜ」
口を塞いでいたビリーの片手を払い、ヘイゼルが割り込んだ。
「いきなり『レリクス』か……大丈夫なのか?」
ヘイゼルは傍らのユエルにちらりと視線を向けた。能天気な顔でビリーが告げた作戦内容を彼女は聞いている……が多分。解っていない。
「以前に調査されてる遺跡だって言ったんだぜ? 『遺跡の守護者』は大方片付いてるだろうし、危険視するのはせいぜい、一度駆逐され、ここ数年でレリクス内部に戻った原生生物位の筈なんだぜ」
ヘイゼルはビリーの判断に満足した。
「上等……流石だなビリー」
「ロックだろ、俺?」
両手の人差し指を立て、奇妙な仕草で此方に向ける。決めポーズのつもりだろうが、突っ込むのも疲れるので無視だ。
「それで出発は?」
「早いが、今日の午後の便で『ラフォン草原』の『野営基地』まで飛ぶ。さっき通信で話したんだが、アリアも『フライヤーベース』で合流するぜ」
「アリアも来るのか? 珍しく今回は乗り気だな」
遺跡等の狭い場所での作戦を好まない筈のアリアが、珍しい物だとヘイゼルが考えていると、ビリーは呆れたように両手を広げ、やれやれと溜息をついて見せた。
「朴念仁に理解を求めるのが酷なのかねぇ……」
「……何の話しだ」
ヘイゼルの眉根が不機嫌そうに寄せられる。
「乙女の心を理解できないとモテないぜ。妬いてるのさ、OK?」
ビリーが付きたてた両手の人差し指を、それぞれヘイゼルとユエルに向ける
『?』
クエスチョンマークを浮かべる二人に、ビリーは大袈裟に天を仰ぐ仕草を見せた。
「だめだコリャ……なんだぜ」

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彷徨える雷獣

ユエル   「夢(打算的な)を詰め込んだ、希望の基板!」Psu20081014_210125_000 Psu20081014_210131_001 ユエル   「人の夢と書いて『儚い』と読むッスね!('Д`)」
ヘイゼル  「あるある(゚∀゚)」
ユエル   「本編では記憶喪失って事になってる私ッスけど、一つ思い出した事があるッス」
ヘイゼル  「(゚∀゚)?」
ユエル   「……これが怒りッスか……」
ヘイゼル  「安い怒りだな! そしてゼクロス乙!」
ユエル   「ま、そんなこんなで今日も新たなる希望を求めて雷獣に行くッスよ」Psu20081015_234715_009 ユエル   「いつプレイしても何も無い予感しかしない、このミッションも今日はいつもと違ったッスよ!」Psu20081015_234759_010 ユエル   「変なラッピーキタ━━(゚∀゚)━!! 初めての対面にタイラーさんのテンションも上がりまくりッス」
ヘイゼル  「可愛いのに目がないんだな……って、ちげぇよ!(#゚Д゚)」
ユエル   「SSは撮れてなかったけど、変なロッドもでましたッス! そして今回は大フィーバー!」
Psu20081015_235354_013 ユエル   「レアミもでたッス!」
ヘイゼル  「珍しいな、いつも連れてって貰ってるんだから、たまにはお礼しろよ?」
ユエル   「解ってるッスよ(゚∀゚) これは今回の箱も期待できる予感!?」Psu20081015_235508_014 ユエル   「……」
ヘイゼル  「いつも通りだな……」
ユエル   「ヽ(`Д´)ノ」
ユエル   「くじけてもいられないので、カフェに戻って、皆をレアミに誘って行ってきたッス……でも、大星雲も終わっちゃって、レアも微妙なラインナップ……」Psu20081016_003153_0472 ユエル   「あまりの絶望に身投げする者まで!?」
ヘイゼル  「嘘をつくなっ! Σ(´Д`lll)」
ユエル   「今日も希望を求めて雷獣ハムハムの旅は続くッスよ('Д`)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【09】

ユエル   「ちゃっら―――ん!」
ヘイゼル  「こんぺいかっ! Σ(´Д`lll)」
ユエル   「暫く更新しないから、『飽きたな?( ̄ー ̄)』って思ってた皆さん! ファッ○ーッスよ!凸(゚Д゚#)」
ヘイゼル  「やめいっ! Σ(´Д`lll)」
ユエル   「飽きたなんて思ってたら大間違いッス! PSUも小説も、まだまだ続くッスよ―――!」
ヘイゼル  「テンション高っ! Σ(´Д`lll)」
ユエル   「それじゃ早速行ってみようッス!」

---------- 再開 -----------

【ガーディアンズ パルム支部 一階 エントランスホール 喫茶コーナー】

総裁とのやり取りのせいもあってか、ヘイゼルはこれ以上、支部に留まる事を渋っていたが、ユエルの今後を話しておいた方が良いとのビリーの提案もあり、四人で喫茶コーナーに立ち寄る流れになった。
(―――後でそこのカフェでお茶でもどうだい?)
と言葉にしたビリーの面目が保たれた結果になるのだが、喫茶コーナーで席に着く彼は今、ユエルに平謝りしている状況だ。
「いやぁ、ユエルちゃん、本当に申し訳ないんだぜ」
「ううん、良いッスよ。私は皆と話しをするだけで楽しいッス!」
「くうぅぅ……ユエルちゃんは優しいんだぜ……って、うぉい! コルアァ!」
わざとらしく目元を拭う素振りを見せた後、ビリーはヘイゼルの首を極めて引き寄せ絞めつけた。
「な、何しやがる!」
「黙れ、この薄情者! どうしてユエルちゃんが食事できない事を黙ってやがった! 俺が無神経な奴だと思われたら、どうしてくれるんだぜ!?」
そう、ユエルをお茶に誘ったは良いが、彼女は飲食物の摂取をする事ができなかったのだ。
元来、機械生命体であるキャストは食事を必要としない。
しかし、合理主義を旨とする筈のキャストの中には嗜好として、あるいは自らが生体で無い事へのコンプレックスからか、飲食を可能とした人工内臓部品、味覚を知覚できるセンサー機能を追加搭載する者も多い。
ユエルには、この機能がオミットされているのだ。
首を極められながら、ヘイゼルはユエルに目を移す。彼女は楽しそうな笑顔で、じゃれ合う二人を見つめていた。
(見たところ、そう言った嗜好が有りそうな感じに思えるが、意外な物だな……)
「何馬鹿やってんのよ。ウェイトレスが注文待ってるわよ?」
アリアの言葉に我に返ると、メイディスタイルで身を固めたウェイトレスの困った顔と目が合った。

三人がそれぞれ注文した数分後、四人が座るテーブルへ注文の品が運ばれて来た。
ヘイゼルの前にコーヒー、ビリーの前にカフェオレ、アリアの前へはセレブケーキとハーブティーのセットが置かれる。
ユエルの今後を話し合う……とビリーは言った筈だったが、話しは本来の趣旨とは外れ、何故か世間話しに花が咲いていた。
「―――ダルガン総裁もガーディアンだったッスか?」
「ああ、腕利きのガーディアンだったらしいぜ。現役時代の伝説は数知れず。何でも武器を使うより無手の方が強かったとか、列車を占拠したテロリストを単独で壊滅したとか……彼が係わったミッションは『オペレーション・サイレンス』、通称『沈黙シリーズ』として新人ガーディアンズの教導手本になっているとかいないとか…」
「え、あれ本当の話しだったの? てっきり嘘だと思ってたけど……」
「……悪いが、ちょっと失礼する」
殆ど会話に加わっていなかった、ヘイゼルが突然席を立つ。
「ヘイゼルさん、何処に行くッスか?」
ユエルの声に振り返ると、ユエルが若干不安そうな表情をしていた。
―――そんな顔を見せるな!
「ト……すぐ戻ってくる……」
一瞬答えようとしたヘイゼルは、何故か言葉を濁し去って行く。
「トイレならトイレって言えば良いのに、何を恥ずかしがってんだか……お前はアイドルかっつーの」
ヘイゼルの後姿を見送りながら、ビリーが下品な笑いを浮かべた。
「……ねえ、総裁とヘイゼルって知り合いだったの?」
ヘイゼルが見えなくなった事を確認すると、アリアはビリーに小声で訊ねた。好奇心に満ちた目が猫のように輝いている。
「知り合いって程じゃないが……昔ちょっとな……」
ビリーが歯切れの悪い返答を返すと、アリアが身を乗り出してきた。
「何があったのか聞かせてよ!」
「駄目だぜ。親友の黒歴史を簡単に教える訳にはいかないんだぜ」
腕をクロスさせ×の字を作りつつ、ビリーはアリアの願いを断った。
「ちぇ、ケチ!」
「私も、聞きたかったッスね~」
「……ユエルちゃんの頼みとあっては、聞かない訳にはいかないんだぜ」
むくれて見せるアリアに合わせ、ユエルが何気なく言うと、あっさりとビリーは信念をひるがえした。
「何なのよ、その差は!」
憤慨するアリアを宥めつつ、ビリーが話し始める。
「―――あれは俺達がガーディアンズ訓練生として養成校へ入校した日の事だ……」
訓練生として養成校に入校した当日、入校式典に出席する為、ビリー達訓練生は大講堂に招集された。
入校式にはガーディアンズ総裁のダルガンも招かれていた。式典恒例の総裁訓辞で、居並ぶ新米ガーディアンズに対しスピーチが行われ、その中でダルガンが問うた。
「……君達の守りたい物は何だ?」と……。
「訓練生としてガーディアンズに入隊を希望する人間ってのはな、最初は少なかれ理想ってやつを持ってるもんだ」
遠い目をしてビリーは語る。
ダルガンから指名を受け、ある若者は「等しく平等な正義の為」と答えた。
また別の者は「グラール太陽系の平和を守る為」と……。
若さと熱意に満ちた答えが返り、ダルガンは満足気に頷いた。
「だが、総裁が最後に指名した男は違ったんだ……」
場にそぐわぬ斜に構えた態度、全てに抗い、射抜くようなヘイゼル・アイ……まだ成年前と思われる少年は言った。

『俺に守るものなんて無い』と……。

「そいつの空気読めない発言で、当たり前だけど式典会場は水を打ったように静まり返ったわけよ。総裁は上手く、その場を乗り切ってたけどな……ま、その男がヘイゼルだったって訳だ。お陰で奴は俺を差し置いて、初日から目立ちまくってくれたんだぜ……」
「今もあんまり変わらないけど、昔から中二病全開だったのね……」
目立ちたがりのビリーは当時の事を思い出し、悔しそうな表情を見せた。アリアは変わっていないヘイゼルに呆れた苦笑いを浮かべる。

『―――ヘイゼル、君の『守るべきもの』は……見つかったのか?―――』

(ダルガン総裁は、その時の事を憶えてて言ったッスね……)
だが、ヘイゼルは総裁に『守るものは無い』と答えている。あの時と同じように……。ヘイゼルには未だ守るものは無いのだろうか?
「なんの話しをしてる?」
そこへ、ヘイゼルが戻って来る。
(やばい!)
と顔色を変えたアリアだが、ビリーは顔色も変えずにヘイゼルに答えた。
「お前の噂話しさ」
ウィンクすらして答えたビリーの態度に、気色の悪さを感じ、ヘイゼルは顔をしかめる。
「気持ちの悪い嘘をつくな!」
文句を言いつつヘイゼルが再び席に着くが、ユエルについての答えは出ない。
結局、暫くはヘイゼルが彼女の身を預かる事となった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

マイルームのある宿舎へ戻る頃には日が暮れていた。
部屋に入り一息つくと、二人を待っていたジュノーに、ヘイゼルは改めて事の経緯を説明する。
「記憶は戻りませんでしたけど、自分の事が少しでも解って良かったですね、ユエルさん」
「ありがとうッスよ、ジョノーちゃん!」
「これからはヘイゼル様と同じガーディアンズとして、ミッションにもご一緒できるですね」
「えへへ、その時は宜しく頼むッスよ~!」
身の丈の小さいジュノーの視線に合わせ、床にぺたんと腰を下ろし和気藹藹と会話を続けるユエルを横目に、ヘイゼルはベッドに腰を掛けた。
「嬉しそうだな、お前は……」
「だって、私はグラールの平和を守るガーディアンズの隊員だったッスよ。皆の幸せを守ってる重大な仕事をしてたッス!」
純真なユエルの笑顔に、何故かイライラした感情が湧き上がる。
「ガーディアンズがそんなに良いものかよ」
ヘイゼルは不機嫌な顔で、履いていた靴を乱暴に脱ぎ捨てた。
そんな態度に慣れているのか、『いつもの事ですから、あまり気にしないで下さいね』とばかりにユエルに向けてジュノーは苦笑を浮かべる。
ユエルは支部で、ビリーが語った昔話を思い出した。
「……ヘイゼルさんは前にも総裁に、『守るものなんて無い』って言ったそうッスね」
「……ビリーに聞いたのか……あのお喋りめ」
「教えて下さいッス。それじゃあ何故、ヘイゼルさんはガーディアンズになったッスか?」
ヘイゼルはちらりとユエルに目を向けた。真剣な表情をしている。
「……俺がガーディアンズになったのは、自分が生きる糧を得る為だ。誰かを、何かを守る為にガーディアンズに入隊した訳じゃない。グラールの平和と人々の安全を守る……良い志だよ。だがそんなのは守りたい奴等だけで守ってくれ。俺は人を助ける為に戦う気は無い」
射抜くような瞳で、ヘイゼルは守りたいものは無いと言い切った。
その言葉の裏に隠れた感情に、聡い者なら気付いただろう。だがこの時、ユエルは気付けなかった。
「でもヘイゼルさんは、あの時……私を助けてくれたッスよね」
―――三日前、雨の降るパルムで……あなたは私を助けてくれた―――。
「あの日、目覚めて気付いたら記憶が無くて、もの凄く怖くて心細かったッスよ……。でも目の前には、ヘイゼルさんが立っていて……。誰かに助けて欲しかったから、私は必死で縋ったッスよ」
あの時、ユエルが必死だったのは、そういう理由があったからか……。
だがヘイゼルは気付いた。
「……俺じゃなくても良かったんだな?」
目の前に居たのが偶然、俺だっただけだ。俺でなくても彼女は救いを求めたのだろう。ユエルの言葉をヘイゼルは鼻で笑う。ユエルは慌てて首を振った。
「ち、違うッスよ! 確かに目の前に居たのは偶然だったかもしれないッスけど……『ヘイゼルさんが』私を助けてくれたッス! あの時、私が縋ったのがヘイゼルさんで良かったって……それが間違いじゃなかったって、今はそう思ってるッスよ……」
ユエルの真っ直ぐな緑色の瞳に見つめられ、ヘイゼルは思わず目を逸らした。
「俺は……お前が思っているような男じゃない」
「それでも……言わせて欲しいッス。私を助けてくれて、ありがとうッスよ……」
ヘイゼルはベッドに身を投げ出すと、ユエルに背くように背を向け横になった。
「俺は……誰も守れない……救えないんだ……」
力なく呟くヘイゼル。ユエルからの応答は無かったが、他人を拒絶するような背中に、彼女の視線を感じていた。―――いつまでも。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ブラインドから差し込む光の眩しさに目を覚ます。昨夜はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
ベッドに身を起こし、思考がハッキリするのを待つ。昨夜はシャワーも浴びていなかった。
「……とりあえず、身体を洗うか……」
ベッドから降り、シャワーを浴びる為に部屋を出ると、そこにユエルが立っていた。何かを決心し、決意を固めた表情のユエルが宣言する。
「私、ガーディアンズになるッス!」
「……もう、なってるだろ……」
ヘイゼルは頭を掻きながら、面倒臭そうに言ってユエルの身体を脇に避け、シャワー室へと向かった。
ユエルがガーディアンズである事は昨日証明されている。
「いや……いやいやいやいや! そうじゃなくてッスよ!」
ユエルは慌ててヘイゼルの後を追い、彼の前に回りこむ。
「ガーディアンズとして、仕事に復帰したいッスよ!」
「……はぁ?」
寝ぼけた頭がユエルの台詞を理解するのに、暫しの時間が必要だった。

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【08】

「くそっ……面倒な事を押し付けやがって……」
「役得だろう、嫌なら変われ!」
「役得じゃないわよ! 厄得って言うのよ!」
「誰が上手い事を言えと言った!」
三人の喧喧囂囂のやり取りを、ユエルはオロオロと見つめていた。
する内、エレベーターは一階へと辿り着き、扉が開く。外でエレベーターの到着待ちをしていた、職員達のいぶかしむ視線と目が合う。
「……ひとまず、落ち着ける所に行くか」
ヘイゼルの意見に異を唱える者は無い。
四人はエレベーターを下り、カウンターの受付嬢にフリーパスを返却し、エントランスへ向かうと、何やらエントランスホール全体が騒がしくなっていた。
「何だ、ありゃあ?」
その喧騒の中にビリーが目を凝らすと、人だかりの中心にSPに護られた男性が居るのが見て取れる。
威厳を感じる丈の長い上着をまとい、メッシュの入った髪を後方に撫で付け、歴戦の戦士を連想させる面構えの男性である。
「オーベル・ダルガン総裁なんだぜ!?」
思わぬ人物との鉢合わせにビリーが声を上げる。
男性は全ガーディアンズを統べる、ガーディアンズ総裁『オーベル・ダルガン』その人であった。
「そっか、シティで同盟評議会を開催してるのよね」
アリアが言うように、今ホルテス・シティでは同盟の議会が開催中である。ガーディアンズ・コロニーの代表として会議に出席する為、総裁であるダルガンもパルムを訪れているのだ。
ダルガンは最上階の総裁執務室に向かう為、エレベーターのある此方の方向に歩いて来る。ビリー達はダルガンの到着を待つ事にした。
「ヘイゼルさん、あの人が、ガーディアンズで一番偉い人ッスか?」
「ああ、そうだ……だが……」
興味津々の表情で訊ねるユエルに、ヘイゼルは答えつつ、隣に並び立つビリーを横目で睨みつけた。
「必要か? こんなマネが……」
「時にはな、アピールもしないと出世はできないんだぜ」
「チ……ッ」
イライラしているヘイゼルとは対照的に、ビリーは鼻歌交じりにジャケットの胸ポケットからコームを取り出すと、自慢のリーゼントをセットし始める。程なく、ダルガンは四人の間近まで迫って来た。
「総裁、お疲れ様です。機動警護班所属のビリー・G・フォームであります」
敬礼をしつつ、ビリーが握手を求めると、ダルガンはそれに気さくに応じた。
「同じく、アリア・イサリビです」
心持ち緊張した表情のアリアが続く。
「ユ……ユエル・プロト? ……ッス……総裁、お疲れ様ッスよ~」
アリアに続いたユエルは、事もあろうに知人にでもするように、片手を突き上げるフレンドリーな挨拶をダルガンにして見せた。これにはさすがのダルガンも目を丸くし、アリアは血の気の引いた顔色で、ユエルの後頭部に手刀を叩き込んだ。
「痛っ! って、いきなり何するッスか!?」
「馬鹿なの、て言うか馬鹿でしょ!? あんた、総裁に何て挨拶してんのよ! 私の査定まで下がったらどうするつもり!?」
そんな二人のやり取りを微笑ましく見ていたダルガンは、不貞腐れた顔のヘイゼルに気付き「おや?」と言う表情を見せた。
「君は……ヘイゼル・ディーンか?」
「!? 俺を……憶えていたのですか?」
ヘイゼルは少し驚いた表情を覗かせたが、その顔は、すぐに元の仏頂面に戻っていた。
「ああ、強い意思を感じる、君のその榛色(はしばみ)の瞳、印象に残っていて憶えていたよ」
ダルガンが言う様に、ヘイゼルの瞳は薄茶色の榛色をしている。
『ヘイゼル・アイ』
おそらくそれが、彼の名前の由来でもあるのだろう。
「それだけじゃない、君と初めて話した日の事も……」
「そうですか、生憎思い出話しに付き合う程、暇じゃないんで俺達は失礼します」
「ちょっと、ヘイゼル!? 総裁に失礼よ!」
ダルガンとの話しを強引に打ち切り、無愛想に立ち去ろうとするヘイゼルをアリアは咎める。歩み去るその背中にダルガンの声が掛かった。
「ヘイゼル、君の『守るべきもの』は……見つかったのか?」
ヘイゼルは一瞬立ち止まり、暫しの沈黙の後、振り返らずにダルガンに告げた。
「俺に守るべきものは有りません……」
「ヘイゼルさん?」
「ヘイゼル! 何なのよ、もう! 待ちなさいってば!」
そのまま立ち去るヘイゼルの後をユエルとアリアは追った。
「ああもう……っとに! 総裁、ご無礼をお許し下さい。あいつ、根は良い奴なんですが、人付き合いが苦手でして……。では自分も失礼致します。ご公務のご健闘を……では」
ビリーはヘイゼルの非礼をダルガンに詫び、再度敬礼すると、三人の後を追って小走りに駆けて行く。ダルガンは拒絶する様なヘイゼルの後姿を、複雑な表情で見えなくなるまで見送っていた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ヘイゼル   「風邪ひいてたんじゃなかったのか!? Σ(´Д`lll)」
ユエル    「♪~(゚ε゚) 」

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罪と罰

気をつけよう!

寝オチも過ぎれば風邪をひく!

めっきり秋の気配です

皆さんも体調には気をつけて下さいッスよ ('Д`)……

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【07】

※テストでサイズを大きくしております(゚∀゚)<ゴリカイトゴキョウリョクヲ!

【機動警護班所属 ユエル・プロト】

「……目立った活躍はしてないみたいだが、炎侵食浄化ミッション、戦闘シミュレーション実験……大規模に行われた作戦に参加した履歴があるな」
ヘイゼルは少女……ユエルのライセンスIDから戦闘履歴を調べた結果、彼女が間違いなく、ガーディアンズ隊員として働いているのを確認した。
「職種タイプは……げっ! WT(ウォーテクター)!? 上級職じゃない。と言う事は経験は私より上なの!?」
端末を弄るハイゼルの脇から画面を覗き込み、アリアが驚きの声を上げる。
機動警護班所属のガーディアンズは、基本的に三種類の戦闘タイプに分けられる。
近接戦闘タイプの『ハンター』
射撃戦闘タイプの『レンジャー』
法撃戦闘タイプの『フォース』
これらを経験し、ある程度の実力を持った者が、更に上級の戦闘タイプに職種変更が可能になっている。
データにあるユエルの職種は、ハンターとフォースを経験した者が就く事ができる、近接・法撃の複合職、ウォーテクターと呼ばれる職種だった。
「ユエル・プロト……これが私の名前ッスね」
安堵した表情でユエルは、判明した自分の名前を噛み締める。自分の事が少しだけ解ったとは言え、記憶は戻っていない、それでも彼女は安堵していた。
「ああ、そうなんだが……」
だが、モリガンは眉をひそめた。納得のいかない点がある。
「なんだこれは? 現住所の欄が未記入だぞ」
ユエルのライセンスIDに記されたデータに、住居を示す記入が抜けていたのだ。と言う事は、彼女はホームレスだと言う事か? そんな筈は無い。
「宿舎(マイルーム)の登録は?」
ヘイゼルはビリーに目配せすると、彼は無言で頷き、携帯ビジフォンを操作し始めた。
通常、ガーディアンズ隊員が希望すれば、住居となる宿舎(マイルーム)が賃貸可能なのだ。
ビジフォン検索が終了し、ビリーは首を振った。
「……駄目だ、彼女名義のマイルームは該当無しだぜ」
「て事は、個人の邸宅を持ってるんじゃないの?」
「だったら、現住所欄に記入されている筈だろう」
アリアの言葉にヘイゼルは溜息をついて答えた。だからこそ不思議なのだ。
「……待て、この子、製造(生まれて)すぐ、身元引受人に引き取られているぞ」
データを注意深く読んでいたモリガンが、彼女の経歴から、その事実に気付いた。
キャストは製造された瞬間から、人で言う成人と同じ扱いをされるのだが、製造されたばかりのキャストは、総じて社会経験が不足している。それを埋める為に、身元引受人の下、社会知識を学ぶケースもあるのだ。
「ハリス・ラブワード……ん? この男、既に鬼籍に入っているな……」
鬼籍とは、既に死亡している事を示していた。
「駄目か……」
ヘイゼルは舌打ちする。ユエルの身元確認は手詰まりとなってしまった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

身元確認が不首尾に終わり、落胆するヘイゼル達。そんな彼等にモリガンはコーヒーを淹れて労うと、自身はユエルを連れ、隣にある診察室へ入って行った。
「……それで、あの子どうするの。やっぱり軍警察に預かって貰う?」
コーヒーを飲み、一息つくとアリアが切り出した。
「警察は記憶喪失者の身元捜索はしてくれるが、身の預かりまではしてくれないぜ? ましてや彼女は身元は既に判明してる……おそらく無駄だぜ?」
一般的な記憶喪失者への警察の対応は、ビリーの言葉通りなのだ。
「それじゃあ、此処(病院)で預かって貰うしか……」
「悪いが……」
診察室からユエルを伴って戻って来たモリガンが言った。
「此処も忙しくてな。怪我もしてない人間を置いてやる余裕は無いのだよ」
「で、何か解ったのか?」
「彼女の頭部には外傷の痕は無かった。外傷性の記憶喪失で無い事は解ったよ」
椅子に座りなおすモリガンに、ヘイゼルが診察の様子を訊ねると、彼女は手短に答えた。
「じゃあ、どうすれば良いってのよ」
二人の否定的な意見にアリアはむくれて見せる。
「ふむ……乗り掛かった船だ。ヘイゼル、お前が面倒みてやれ」
「はあっ!?」
いきなりモリガンから話しを振られ、ヘイゼルは素っ頓狂な声を上げた。
「パルムで借りてる宿舎は、一人で住むには広いだろ? 住人が一人位増えたって問題無い」
「ちょ……っ!」
反論の声を上げようとしたヘイゼルだったが、それ以上に大きな声でアリアから猛反対の意見が飛ぶ。
「ヘイゼルと一緒の部屋に!? そんなの絶対ダメよ!」
「じゃあ、お前が面倒みるかい?」
「うっ……」
モリガンの矛先が自らに向くと、アリアはさすがに口篭ってしまった。
「自ら、この子を受け入れようとする者が居ないのでは、仕方が無いではないか」
渾身の笑みを浮かべて大きく両腕を広げ、何かを期待しているビリーに、モリガンは一瞬目を向けたが、彼女はそれを見なかった事にした。
「無視かよっ!」
「でも、キャストとは言え、この子は女性なのよ! 男と女が一つの部屋になんて……!」
「ああ、その心配は無い」
アリアの言葉をモリガンが遮る。
「この子には、『そう言った』機能は備わってなかった。安心しな……まあ、お前には残念かもしれないけどな」
モリガンは意味有り気な表情をヘイゼルに見せた。
「ぐっ……!」
からかう様なモリガンの視線に、ヘイゼルが言葉を詰まらせていると、ユエルが不思議そうに目を瞬かせていた。
「『そう言った』機能って……何ッスかね?」
「お前は知らなくて言いっ!」
何故か顔を赤くして怒るヘイゼルに、ユエルは怪訝そうな顔を見せる。
「まあ何だ、ここは一つ男の甲斐性見せて世話してあげな!」
『勝手な!』
ヘイゼルとアリアの非難の声をモリガンは受け流し、強引に話しをまとめると、診察を理由に四人を部屋から追い出した。

「さて……と……」
四人が去った部屋の中、モリガンは電話の受話器を取った。
「強引に話しをまとめてしまった手前、大人としての責任は取ってやらないとな」
モリガンは呟きながら、ユエルのデータに有った、彼女の身元引受人、ハリス氏の自宅へ電話を掛けた。
本人は故人となっていても、誰か遺族が居ればユエルの事が解るかも知れない……。
数度の呼び出し音の後、電話が取られ、ハッキリした口調の若い女性の声が応じる。
「ハイ、こちらはGRM本社でございます」
(GRM……だと?)
電話に出たのはGRM本社のオペレーターであった。電話を掛け間違えたのだろうか?
「すまない、どうやら電話を掛け間違ってしまったようだ。悪いが今から番号を読み上げるから、確認してくれないか」
「かしこまりした、宜しいですよ。それではどうぞ……」
丁寧なオペレーターの応対に感謝し、モリガンはデータに表示された番号を読み上げる。
「……どうだろうか?」
「……いえ、当社の番号が、その電話番号で間違いないのですが……」
電話の向こうで戸惑ったオペレーターの声がする。
電話番号は間違っていなかったのだ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ユエル    「次回! 遂にユエルに貞操の危機が!?」
ヘイゼル   「嘘をつくなっ! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「今度のお話しは【R-18】だから、良い子の皆は気をつけてねッス(゚∀゚)」
ヘイゼル   「嘘をつくなぁぁあぁっ! て言うか、期待されたらどうする! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「その時は、ヘイゼルさんが一肌脱ぐしか……」
ヘイゼル   「なん……だと……」
ジャック   「ご苦労だったな……」
ジョシュア  「遅かったな……」
古王     「来たか首輪付……」
ヘイゼル   「ちょ! ゲイブン!? アーッ!」
ユエル    「変態どもがっ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「だから、ピンポイントでしか通じないネタは止めろって! Σ(´Д`lll)」

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