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謝肉祭

ユエル    「時代はエコッスよね(゚∀゚)」
ヘイゼル   「あ? 何だ唐突に(;´Д`)」
ユエル    「家電のエコポイントとかエコカー減税とか、政府が何かけし掛けてるっぽいッスよね?」
ヘイゼル   「まあ、何とか議定書とか、色んなとこで頑張っちゃったからな…」
ユエル    「街の中でもエコが付く文字を良く見かけるようになったッスね。一億総エコ化も近そうッス!」
ヘイゼル   「タバコの値上げも二酸化炭素対策だったりしてな(゚∀゚)」
ユエル    「エコエコアザラク、って何か凄いエコって感じッスよね!」
ヘイゼル   「そうだね、プロテインだね(゚∀゚)」
ユエル    「……ヘイゼル、仕事しろッス! 人が折角ボケてるッスのに!?(゚Д゚#)」
ヘイゼル   「いちいち、お前はメンドクセエんだよ! だから今日は何が言いてえんだ!(#゚Д゚)」
ユエル    「つまり、私もエコに参加したいと言う事ッスよ! このブログを使ってなッス!(゚Д゚#)」
ヘイゼル   「ブログで…エコ…? ( ; ゚Д゚)」
ユエル    「HDを整理してたら出てきた、このオリジナル短編小説を使ってリサイクル更新するッスよ! このブログはエコに協力していますッス!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「ようするに、手抜きじゃねえかッ! Σ(´Д`lll)」

【謝肉祭】

 六帖一間の狭い部屋、通りに面する窓を開けると、目の前に巨大なコンクリートの建物達が天を貫くばかりにそびえている。灰色の無機質なセメントの塊は、何処か墓石を連想させるので、俺はそれが好きではなかった。
 文明の発展を進化と呼ぶならば、その進化を放棄……いや進化の系統樹から見放され、打ち捨てられた局外者の様に、そのアパートは東京と言う都市の中で、壁の中を這い回る鼠の様に、人知れず其処に存在した。
 しかしそれでも、東京という街の中に取り残された様に建っている、賃貸料の安いこのアパートは、まともに仕送りを送って貰えない、俺の様な貧乏学生にとって、すがって生きる事の出来る数少ない場所なのだ。

 ―――六月―――

 今年もまた、嫌な季節がやって来た。
 例年と同じ、鬱陶しい程の湿度と連日の雨が、空と同じ様に俺を暗澹(あんたん)とした気持ちにさせる。
 だが只一つだけ、今年は例年と違うモノがあった。
 陰鬱(いんうつ)な気分に更に追い打ちをかける、この臭気……腐った肉の臭い。
「ごめんなさい。部屋の冷蔵庫が壊れてしまって、お肉を腐らせてしまったの」
 隣の部屋の女は、そう言った。
「お肉は好きなんだけど……一度に食べられる量が少ないから、いつも余ってしまうんです」
 女の年は俺と同じ位だろうか?
 拘りが有るのか、女は何時も白いノースリーブの麻シャツと、白いロングスカートを身に着ていた。最近では珍しく、黒く艶やかな髪を背中の中程まで伸ばし、前髪は眉の下で神経質そうに綺麗に整えてある。顔は欠点が無い。良く言えば整っていると言われる部類なのだろうが、口元に薄っすらと浮かべる、どこか病んだ様な不快な笑み。
 それが―――

 『理由(ワケ)有りの女』

 俺に、その言葉を連想させた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 梅雨空に五月晴れを期待する俺の気持ちを裏切り、巷には今日も無情の雨が降る。
 起き掛けに、部屋の壁に画鋲で留めてあるカレンダーに目を移し、俺は今日が可燃ゴミの収集が有る事を思い出していた。
 先週は、うっかりと可燃ゴミを出しそびれてしまっていた。流石に、この時期に生ゴミの混ざった可燃ゴミを部屋に置いたままにするのは気が引ける。両手に半透明のゴミ袋をぶら下げ、俺は部屋を出た。
 アパートの各部屋を結ぶ、共同の廊下は老朽化が激しい。薄暗い廊下を床を軋ませながら歩いていると、丁度、隣の部屋の女が階段を登って共同廊下に差し掛かる場面に出くわした。俺が軽く会釈すると、女も挨拶を返す。女が登って来た階段側から、外の光は入ってくるが、廊下は全体的に薄暗い。逆光を受けた女の顔は影となり、何時も通りの病んだ笑みを浮かべる様は、何時も以上に俺を不快にさせた。
 女は足を止め、俺を待っている様子を見せている。流石にそれを無視して擦れ違うのは気が引け、立ち止まった俺は、女と僅かばかりの世間話をする羽目になった。
「あなたもゴミ捨てですか?」
 女が俺が両手に持っているゴミ袋に目を移し尋ねて来る。俺は肯定の返事をすると、先週ゴミを出し忘れた事を苦笑交じりに告げた。
「……そうですよね、この時期は食料品が傷みやすくて困りますよね。だから私も結局、棄てることになっちゃうんです。……お肉が余るから」
 俺の言葉に、女はクスリと声を小さく笑う。口元には病んだ笑みを湛え続けたまま。
 梅雨特有のじっとりと身体に纏わり付く様な空気の中、何時もの白い服を着た女から漂う、甘い体臭に混じる臭気……腐った……肉の臭い。
 低俗な欲も冷める程に気分が悪くなる。
 折角の見て呉れだが、隣室に居られるのは、ハッキリ言って迷惑な類の気味の悪い女だった。
 ……思えば彼女は、何時から俺の隣に住んでいたのだろう?
 俺は女の名前も知らない。女の部屋の入り口には、その存在を示す表札も無かった筈だ。
 いや違う。そもそも、俺はこのアパートに住んでいる住人の事を何も知らない。たまたま廊下で擦れ違うときに挨拶する事もあるが、俺達は他人の存在に極力、係わらない様にして生活している。助ける事も無ければ、助け合う事も無い。冷めた都会の人間関係と言ってしまえば、それまでか……。
 そそくさと女に別れを告げ、アパートの直ぐ脇にある収集所の鉄製の籠にゴミを出し終えると、傘を持たずに部屋を出ていたので、小走りに部屋に駆け戻った。
 部屋のドアを開けようとドアノブに手を掛け、ふとある事に気付き、俺は手を止めていた。
 気のせいか……。
 最近、この廊下で他の住人に擦れ違う事が無いように思える。ほの暗い共同廊下は、ヤケに静かで、まるで住んでる人間等居ないかの様だ……。

(お肉が、余るから……)

 何故か女の病んだ笑みが脳裏を掠める。
 何故、あの女が浮かぶ……俺は頭に浮かんだ女の姿を掻き消すと、部屋に戻った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 何時果てるとも知れない、厚い灰色の雲が広がる梅雨空。
 今日も雨は止まない。
 加えて、俺を不快にさせる、肉の腐る臭いが部屋から離れない。
 部屋の窓から陰気な気分で空を眺めていた俺の耳に、部屋のドアをノックする音が聞こえる。鬱気を振り払いドアを開けると、其処には隣の部屋の女が立っていた。
「良いお肉が手に入りました。でも、一人じゃ食べきれないので……良かったら、一緒に食べませんか?」
 何時もと同じ白い服、艶やかな長い黒髪、誘うような笑みに、病んだ様な妖しさを浮かべて女は言った。女の甘い体臭に、腐った肉の臭いが織り交ざっている。

 六帖一間の狭い部屋、通りに面する窓からは、天を貫くばかりにそびえる巨大なコンクリートの塊が見える。
 当たり前の様に、雨は止まない。
 そして今日も、部屋に肉の腐る臭いがする。

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