カテゴリー「PSU小説【PSU-L・O・V・E】《完結》」の60件の記事

Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-エピローグ】

ユエル    「前回の予告通り!」
ヘイゼル   「また、予告から日にち空けやがったな…」
ユエル    「話しの腰を折らないで欲しいッスよ!ヽ(`Д´)ノ」
ヘイゼル   「ヘイヘイ…」
ユエル    「エピローグがやっとこ完成したので一気に一回で片付けちゃうッスよ! エピローグ引っ張るのもどうかと思うし(゚∀゚)」
ヘイゼル   「終わる終わる詐欺もコレまでか?(゚∀゚)」
ユエル    「詐欺言うなッスよ! 本当はちゃんとした後書きも書きたいッスけど、時間的に無理ッス!」
ヘイゼル   「誰が読むんだよ…(゚∀゚)」
ユエル    「この際だし自己満足でも良いじゃないッスか!(゚Д゚#)」
ヘイゼル   「とか言っても仕事で2、3日掛かりそうなんだよな(゚∀゚)」
ユエル    「こんな時に限ってッス~! ヽ(`Д´)ノ」
ヘイゼル   「m9(^Д^)ザマアwwwwww」
ユエル    「取り合えず最終回を感慨も無く投下放置するッス! 以前、許可を頂き今回、キャラをお貸し頂いた“勇魚”さんに本当に感謝ッスよ! 後でお礼の連絡するッスね~!」

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--------- 再開 ----------

Phantasy Star Universe-L・O・V・E 最終回

【エピローグ】

目の前にいっぱいの緋色(アカイ)光景が広がっていた。
ビル群の陰に沈みかけた真っ赤な夕陽に染められた空。
寂れた未完都市が『緋』を受け、黒い輪郭(シルエット)を幻想的に描き出す。
ヘイゼルは左肘を突き上半身を起こした。耳にはくゎんくゎんと鋼を打つ音が響いている。
ぼんやりとした頭でヘイゼルは前後不覚に陥っていた。
直前の記憶と現在(イマ)その落差が大きすぎて思考が混乱したまま状況が把握できない。
(何だ……俺は一体何を……)
簡易テントの中でヘイゼルが意識を取り戻した事に気付いたキャストの兵士が、数人の部下達との会話を切り上げ、こちらに歩み寄って来ていた。オリーブドラドに塗装された同盟軍正式軍装色装甲に身を固めたキャストである。同盟軍に所属するキャスト兵は等しく同じ武装で、その下の素顔を隠している為、個人の特定は難しいが、その男は下士官以上の身分である事を証明する章角を頭部パーツに装着していた。部隊長クラスの指揮官であるらしい。
「気付いた……ガーディ……ズ……私は……盟軍177遊撃……小隊長 フル……ン・カーツ……だ……」
簡易テントの中に入ってきたキャストの指揮官がこちらに声を掛ける。ヘイゼルはその声をどこか遠くに聞いていた。
「君……身体は……損傷を受けて……ない事から、参考人……して、ここに残って……った」
(損傷……ああ、キャストの定義か、つまりは俺が重傷を負っていないって事だな……)
ビニールかプラスチック、機械部品が焼けた強い臭いが鼻を突く。通常の生活では嗅ぐ事の無い異質な臭気。
(では、何がこの結果を引き起こした原因だ―――)
ヘイゼルはこの臭いを嗅いだ記憶がある。古くは火災の現場で、交通事故の現場で、砲火の痕が残る焼けた戦場で―――。
唐突に全ての解が像を写し、正しき記憶を呼び戻した。
「オイ! ユエルはどうしたッ!」
ヘイゼルは横たえられていた寝台の上から飛び起きると、傍まで来ていたキャストの指揮官の胸倉に掴みかかった。
「落ち着きたまえ、ガーディアンズ」
キャストの士官はヘイゼルを宥めつつ、突然の様子に色めき立ち、駆け寄ろうとしていた部下達を片手で制し引き止めた。
「ふむ……君が言う『ユエル』と言うのが何かは知らないが、我々が破壊した機動兵器の事ならばあそこにある」
ユエルを機動兵器と一緒にするなと、ヘイゼルは内心憤慨するが、その様子に気を留める事無く、キャストの士官は後ろ手に指を指し示した。其処には半分ほど原型を止めた、焼け焦げだらけの巨大な機動兵器が蹲り、薄い白煙を棚引かせている。
「あれが何を目的として造られた機動兵器なのかは解らないが、調査の結果、機体内部にキャストが搭乗……いや、融合と言った方が正しいのか……兎も角、そのキャストが機動兵器を操っていたらしい。しかし解らないのは、あれだけの機動兵器が、そのキャスト個人を動力源として稼動していた形跡がある事だ」
士官が首を捻るが、それはそうだろう。ヘイゼルもハリス博士の供述を聞き、ユエルがAフォトン・リアクターを内臓している事を知ったのだ。まともな発想の人間なら、そんな物を個人が保有しているとは考える筈も無い。
「まったく訳が解らない。君を此処に残したのは、その辺りについて君が何か情報を知っているのではないかと思ったからなのだが―――」
ヘイゼルはキャストの指揮官の言葉を途中から戯れ言と聞き流し、L・O・V・Eの残骸を食い入るように見詰めていた。
先程から耳に届いていた「くゎんくわん」と言う音は、L・O・V・Eの装甲板をハンマー等で叩く音だったのだ。
残骸と化したL・O・V・Eの上部には数人のキャスト兵が何かの作業に当たっている。重機から伸びたチェーンを操作する者、巻き上げの指示をする者の動きが見える。
「丁度今、マシナリーの搭乗者と思われる人物をサルベージしている所だ」
キャストの士官が説明する。作業リーダーらしき兵士が片手を上げると、ハンマーの音が止んだ。次いで出した合図で重機のクレーンがゆっくりと巻き上げられる。

ズルリ―――と。

残骸の中からユエルの小さな身体が引き抜かれるのをヘイゼルは見た。
両腕を固定用のチェーンで巻かれ、虜囚のような扱いをされた小さなユエルの身体。
待て……と。
ヘイゼルは己が目にした物が一瞬理解出来ずにいた。いや、理性が理解を拒んだ。
夕陽を浴びて黒々としたシルエットとなった小さな小さなユエルの身体……。
だが、それはあまりにも小さすぎた。元の身体の半分程しかない。
半狂乱と化した絶叫が紅い街並みに木霊する。
引き上げられたユエルの身体は腹部から下の半身が失われていた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

次に気が付くと、ヘイゼルは見慣れた天井を見上げていた。
短期任務に就いたヘイゼルが、パルムで借り受けたガーディアンズのマイルームの天井だ。
立て続く時間消失の感覚に戸惑いつつ半身を起こすと、首筋に走る鈍痛に顔を顰めた。
戦場の跡で変わり果てたユエルの姿を見て半狂乱になったヘイゼルは、彼女の元に駆け寄ろうと暴れだし、数人のキャスト兵に取り押さえられ、それでも抵抗を続けた事から、キャスト兵が携行する火器の銃床の底で後頭部を打たれ、気を失っている間に部屋に運び込まれたようだ。慌てて枕もとの時計を確認すると、デジタルの表示が22:43分を示していた。日付は変わっていない、8時間ほど気を失っていたようだ。
「クソったれ……舐めやがって……。ユエルは……ビリーはどうなったんだ……?」
ヘイゼルは悪態を吐きながらベッドから立ち上がり、ふら付く足取りで寝室を出ようとすると窓際のデスクに備えられたビジフォンが起動した。
「お気付きになりましたか? 機動警護班所属、ヘイゼル・ディーン」
ビジフォンのモニターに表示されたのは、桃色の髪を持つ女性キャスト、ガーディアンズの頭脳、ルウだった。だが、彼女が以前のディ・ラガン討伐ミッションで世話になった個体かは解らなかった。
「ふざけたまねしやがって……アイツ等はどうしたッ!」
コンソールに駆け寄ったヘイゼルだが、ルウはこちらの問いに答えず一方的に話しを続ける。
「貴方が関わる事となった事件は想像以上の問題を含む事例と判断致しました。寄って我々は協議の結果、情報の漏洩を防ぐ為、関係者の行動を制限する事に決定しました。この決定に従い、起動警護班所属の貴方にもガーディアンズライセンスの契約に基づき、指示に従って頂く事となりますので御了承をお願い致します」
「勝手な事をッ! ……待て、これは……!」
そこでヘイゼルは初めてその映像が録画された物だと気付いた。
(あくまで俺の問いには答えないつもりか……クソがッ!)
録画されたルウはヘイゼルの怒りも知らず、制限の内容を説明し始めた。それによると、ヘイゼルのパートナーマシナリーであるジュノーも、一時的にガーディアンズに接収されたようだ。精一杯の抵抗を試み徒労に終わったヘイゼルは、止む無く軟禁生活を受ける事にした。無理にこの部屋を脱出しても無駄だと悟ったからだ。
翌朝、ヘイゼルはまずグラールチャンネル5のニュースをチェックした。ガーディアンズネットを使用した外部へのアクセスは停止され、情報源の入手がサテライトTVかラジオしか無かったからだ。
「ハ~ァ~イ! グラールチャンネル5、レポーターのハルで~す!」
既に見慣れた放送局の『看板』となっている少女が能天気な笑顔を視聴者に向けている。
「それでは本日のニュースをピ~ィックアップ! まずは昨日のニュースの続報です。昨日、ホルテスシティ標準時刻午後2:00頃、都市機能移転先造成予定地で起きた破壊工作は、マシナリーを使ったテロ活動の見通しが高いとの見解を同盟軍警察とガーディアンズの合同捜査班が発表しました。このテロを実行したと思われる組織からの犯行声明文は出されておりませんが、同盟軍警察はパルムの都市機能を妨害する為に画策された犯行と見ており、実行組織の割り出しに努めていく方針です―――」
キャスターのハルは続けているが、それを聞いたヘイゼルはギリギリと歯噛みしていた。
「テロ……だと?」
あれがテロ等では無い事を自分は良く知っている。一人の女の妬みが巻き起こした逆恨みの犯行ではないか!
だが、その真相を知る者は、今となってはヘイゼルしかいない。もしかしたらモリガンの手からガーディアンズへ、ハリス博士が遺した資料が回っているかもしれないが、それでも事件の真相を知りたいのであれば、まず自分が尋問されるべきなのだ。だが、それは結して実行される事無く悪戯に時間だけが過ぎて行く。その時間の中でヘイゼルは眼に焼きついたユエルの最後の姿がどうしても離れない。
先天的な状態を除き、人間が事故等でその身体を腹部から断たれた状態で長く生きる事は出来ないとされている。人間の身体と精神はそんな事故に耐えられるほど頑丈には出来ていないのだ。ならばキャストはどうなのか?
人間(ヒューマン)とは違い機械で構成された肉体を持つ機械生命体(キャスト)。
だが、ヘイゼルは知った。
目の前で呆気なく逝った紅いキャストの姿が思い出される。
キャストもまた『死』ぬのだ。
ならば、あの状態でユエルは生存できたのだろうか?
(いや、生きている。ユエルはキャストなのだ! 簡単に終わる訳が無い!)
押し寄せる不安を打ち消すようにヘイゼルは信じ続けた。ユエルがキャストであると言う事実を、この時程良かったと思った事は無い。
そして日毎にTVから知る事が出来る事件の情報は少なくなり、数日が経過した頃には世間は事件の存在など忘れたように、再びどうでも良い情報を垂れ流し続けるようになっていた。しかし寝ても覚めてもヘイゼルの頭にあるのはユエルの安否だけだった。その、あまりの焦燥に気が狂いそうになり、ヘイゼルは何度も何度も部屋の壁を拳で殴りつけ自分の無力さを呪った。

そして一週間目の朝、遂に変化が起こった。
不意に来訪したガーディアンズの諜報部員と名乗る男達がヘイゼルを連れ出したのだ。
男達に連行されヘイゼルが辿り着いたのはガーディアンズのパルム支部であった。立ち入った事の無い裏手の入り口からエレベーターに乗せられ、ヘイゼルが導かれた先は豪華な木材……おそらくは人工のオーク材を使い拵えられた框を持つ両開きの扉の前だった。
支部長執務室である。てっきり査問委員会にでも掛けられる物と思っていたヘイゼルは拍子抜けすると共に愕然としていた。支部長執務室を訪れた経験は無い。いや、通常なら近付こうとするだけで警備の者に阻まれるだろう。それ程、此処はガーディアンズで活動する者にとっても縁遠い場所なのだ。
中に通されたヘイゼルは興味がなさそうな様子でチラリと室内を一瞥した。部屋は個人が使用するには広すぎる。ヘイゼルが住むマイルームより大きいだろう。床に敷かれた絨毯や、天井と床に張られた壁紙は質素ながら上質な印象を受ける。室内の最奥には執務に使用する大きな木製の机があり、そこに一人の男性が腰を下ろしていた。一目でヘイゼルはその男性の正体に気付いた。男はそれ程に名の知れた存在だった。
(オーベル・ダルガン……ガーディアンズ総裁だと!?)
驚きの余り敬礼する事すら忘れたヘイゼルを、ダルガンの脇に控え、本来この執務室を使用しているガーディアンズ・パルム支部長が嗜めた。
「いや、良い」
ダルガンは支部長をやんわり制すると、徐に立ち上がった。静かな部屋に皮張りの椅子が軋む音がする。
「さて、ヘイゼル・ディーン。君には長い事不自由な思いをさせてしまいすまないと思っている」
まず始めにダルガンはヘイゼルに軟禁生活を強いた事を詫びた。
「モリガン女医からハリス博士の供述書と資料は受け取った……。事件の当事者である君は既に承知の事だと思うが、今回の騒動は根本に前大戦の因ともなったエンドラム機関の残党が関わっている事から、情報の漏洩を防ぐ為に止む無く君を軟禁する事になった事態を理解して欲しい」
そんな御為倒しはどうでも良かった。
「ユエルは……ユエルはどうなった!」
ヘイゼルにとって知りたいのは唯一つ、それだけだ。
「……同盟軍との協議の結果、事はあくまでテロリストが仕組んだマシナリーによる無差別テロであると発表する事に決定した。市民に無用な混乱を与えないようにする為の配慮からだ」
ダルガンは質問には答えず、ヘイゼルは苛立ちを募らせた。
「そうだ、君にこれを返しておこう」
ダルガンは机の引き出しを開け中から何かを取り出した。ヘイゼルの後方に控えていたSPがダルガンに近付き、それを受け取るとヘイゼルに差し出した。それは顔写真の部分が削り取られたガーディアンズのライセンスカードだった。だが、それに記されていたIDナンバーをヘイゼルは憶えている。
(ユエルの……ライセンスカード……)
ヘイゼルは目の前が一瞬暗くなった様な錯覚を覚えた。
「そのライセンスカードを持つ者は存在しなかった……。過去においても未来においても永久にだ。意味の無い物だが君に返しておこうと思ってね」
「……」
ヘイゼルは何の事か解らず、呆けた様に暫くそのカードを見詰めていた。
塗り替えられた真実と抹消されたラインセンス……ユエルの存在。
「テメエ等……」
何かを理解したヘイゼルが怒りに燃えた双眸をダルガンに向ける。
「テメエ等の体裁の事だけ考えて、ユエルの存在を無かった事にしやがったな!? あいつを切り捨てて、それで終わりにしやがったな!?」
その時、丁度差し掛かった雲が太陽を遮り影が部屋の中を覆った。ダルガンをはじめ室内に居る支部長、SP達の顔を暗い影が覆う。ヘイゼルはガーディアンズの暗部を垣間見た気がした。
前大戦の引き金となったエンドラム機関の存在は同盟軍の恥部だ。その存在が起こした騒動となれば、再び同盟軍は市民から非難を受ける事になるだろう。それを恐れた彼等はガーディアンズと共謀し事実を隠蔽し捻じ曲げたのだ。
一人の少女の存在さえ消し去って!
「ふざけやがってぇぇぇぇえ―――ッ!」
怒りのあまり我を忘れてダルガンに飛び掛ろうとしたヘイゼルをSP達が押さえ付けた。
「離せよ! このクソッたれが―――!」
暴言を吐き暴れるが、どれだけ抵抗しようと数名の屈強な男達に取り押さえられては太刀打ちは出来ない。遂に床に組み敷かれたヘイゼルはそれでも射抜くようにダルガンを睨み付けていた。
「ガーディアンズと同盟軍からの公式発表は直に成されるだろう。君に伝えたかった事はそれだけだ」
ダルガンはヘイゼルを見下ろし冷たく告げる。話はそれで打ち切られた。ヘイゼルの疑問に答える事も、尋問さえされる事無い、一方的な断絶だった。ヘイゼルはSPに強引に連れ出され五階のエレベーターホールに放り出された。此処は作戦室や執務室と言った最重要ブロックへの分岐通路だ。数名のガーディアンズ職員が行き来している。
尋常ならざる様子で放り投げられたヘイゼルは、自分に向けられる奇異の目を受けながらノロノロと身を起こし立ち上がる。その時、庁舎内にアナウンスが流れた。
「臨時速報です。ガーディアンズと同盟軍は先日の破壊行動をテロ事件と断定。テロを実行した組織の割り出しに全力を挙げる声明を発表しました。パルム赴任中のガーディアンズ職員は団結してテロ根絶の為、協力をお願い致します。繰り返し臨時速報をお伝えします―――」
決定打が放たれた。
真なる情報が隠蔽され、公式な声明が発表された今となっては、ヘイゼル一人が異を唱えたところで最早誰も彼の言葉に耳を貸してはくれないだろう。
一連の事件は終結を迎えた。事実は歪められ、白い少女はその存在を消されて……。
(俺は……また守れなかった……)
絶望がヘイゼルの心を支配する。

「ううん、良いッスよ。私は皆と話しをするだけで楽しいッス!」
肉体的なハンデを抱え、それを理解して尚……。

「ありがとうッスよ……ヘイゼルさん」
擦れ違いケンカをしてしまった後でも……。

「私は……貴方を守れたッスよね? ヘイゼルさん……」
自らの命を賭し、ヘイゼルを庇った時も……。

次々と思い出されるユエルの顔が幾重も幾重も過ぎて行く。
どんな時だって、その少女は……笑っていた―――。

「その笑顔を守りたかった……守る筈だった! なのに守るつもりが守られて……結局、俺は……お前を……守れなかった!」
足がもつれ背中から壁にぶつかったヘイゼルは、そのままズルズルとヘタリ込み人目もはばからず泣き出した。
いつまでも、いつまでも……。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

エレベーターホールを通る者は多くは無かったが、偶然、其処を通った者は、往来で泣き出した青年と関わり合いになる事を避けて声を掛ける事はなかった。
だが、そんな中にも僅かに青年を理解してくれる者も居た。彼等もまた失った者の悲しみを知っていたのだ。だからあえて青年の悲しみに土足で踏み込もうとはしなかった。心の傷はゆっくりと時間が癒す物だから……。
しかし、世界には例外もある。青年の悲しみを理解して尚、その心に踏み込んで行こうとする、お節介にも強く優しい者達の存在だ―――。
「ヘイゼル・ディーンってのは……お前だよな?」
野太い男の声に、疲れ果て虚ろな表情のヘイゼルは反応しなかった。
「―――ID照合……。この方で間違いないようですわ」
澄んだ少女の声が続く。
「解るのか? 便利なもんだよなキャストってのはよ。まあ、そんな事よりだ……実はさっき何だかおエライさんから、これをお前に渡すように言われてな」
「お偉いさんって……我々ガーディアンズの最高責任者ですよ?」
野太い声を遮り、咎める様な口調で少女が言う。
「どうでも良いんだよ。んな事はよ」
その陽気さと二人の親密さが今のヘイゼルには疎ましい。今まで一人の時には感じなかった喪失感。心に埋まる事の無い巨大な穴がポッカリと開いてしまった感覚があるばかりだ。
「死んだのか……仲間が?」
野太い声にヘイゼルの身体がぴくりと反応する。その反応を見た男が「そうかい」と呟き溜息を吐いた。
「まあ……何だ、とにかく受け取れよ」
動く気配すらないヘイゼルの傍にしゃがみ込んだ男は、強引に何かを握らせてきた。右手にはプラスティック製カードの固い感触がある。力無い瞳がそのカードの表面に刻まれた文字を追う。
「お前さんが何に苦しんでるのかなんて俺には解らねえし、解るとは言わねえ……。だがな、お前は生き残っちまったんだ。なら、お前がしなきゃならない事は……って、オイ……」
男の言葉に耳を傾けず、ヘイゼルは勢い良く立ち上がると走り去って行った。
「慰めの言葉は……要らなかった様ですわね?」
エラシエルと呼ばれる名称を持つ若草色のパーツで全身を覆い、透き通った銀色の髪を持つ小柄なキャストの少女がクスリと微笑んだ。
「何でえ……人が折角気を回したってえのによ……」
少女とは対照的な筋肉質の巨漢、深緑色の短めな髪型に幼さを残した顔付きの男性ビーストが決まり悪そうに頭を掻いている。
「相変わらず、貴方は優しい人ですわね」
「ああん?」
優しい薄めで微笑む少女の言葉を聞き咎めビーストの男は顔を顰めた。
「強がっても無駄ですわ。私は、そんな優しい貴方だから惹かれたのですからね」
凄む男を気にも留めず少女は澄まして言うと「まったく……お前には敵わねえよ」と、男は諦めた様子で大きく息を吐く。
古来より、惚れた女に男が勝てた例は無いのだ。
そんな物語が其処にあった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ガーディアンズの庁舎内をヘイゼルは走る。
廊下の隅に備えられたゴミ箱を蹴倒し、怒鳴られても構わず走り続けた。
ヘイゼルがやって来たのはガーディアンズの医療ブロックの四階だった。尋常ならざるヘイゼルの様子に声を掛けようとする女性看護士を押し退け、彼が目指したのはモリガン女医の控え室だった。インターホンを押さずにドアロックを解除し、自動ドアが開き終わるのを待たずに強引に身体を中に滑り込ませる。
「お、慌ててやって来たな」
机上のパソコンを前に椅子に座りコーヒーカップを片手に、モリガンが意地の悪い笑みを浮かべていたがヘイゼルは気にも止めなかった。
そして、ヘイゼルは其処で探し求めていたモノを発見した。
「あ……ヘイゼルさん……」
その声を聞いただけでヘイゼルは涙が溢れそうになった。
「フンッ……やっぱり生きていやがったな……」
強がって言うが、その言葉は震えていた。今にも飛び付いて抱きしめたい感情を無理矢理堪える。コイツの前だけではそんな弱みを見せたくは無い。
「あの……その……た、ただいまッスよ……」
モリガンの傍らには、以前と変わらぬ笑顔を浮かべる白い少女が立っていた。

001

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ボディ・パーツやレッグ・パーツが以前と違う物になっていたり、髪型もピッグ・テールから完全なツインテールに変わったりはしているが、ユエルは生きていた。
いや、書類上で言うと以前のユエルは存在しない。此処に居るのは新しいガーディアンズ・ライセンスを発行され、戸籍を変えられた新しいユエル・プロトなのだ。
「今回の件はエンドラムの残党の存在を世間に出したくない同盟軍の思惑もあったが、ユエルの為でもあったのだ」
モリガンはヘイゼルに語った。
エンドラムの残党が一つだけとは思えない。それ故、彼等の目を欺く為には彼等がユエルに与えた偽の戸籍を消去し、正規の戸籍をユエルに与える必要があった。しかも、それを提案したのはダルガン総裁だと言う。
「だったら、最初から俺にそう言えば良かったじゃねえか! 回りくどい芝居打ちやがって!」
話しを聞いたヘイゼルが憤慨する。
「昔、お前に恥をかかされた事があるからなぁ……今回の件で仕返ししたかったんじゃないんだぜ?」
いつの間にか……と言うか最初から室内に居たのだが、ビリーが笑って会話に割り込んでくる。ヘイゼルはギョッとして振り返り、幽霊でも見る様な目でビリーを凝視した。
「居たのかよッ! 生きてたのかよッ! つーか、生きてんなよッ!」
「何だそのユエルちゃんと真逆の反応は! 相棒の俺が生きてちゃ悪いんだぜ!?」
「明らかに死んだ臭い演出だったじゃねえか! フラグクラッシャーですかテメエは!」
「ゴメンネ―――ッ! 意外性のある男ですから―――ッ!」
と、二人の男はぎゃあぎゃあと喚き始めた。
実際、ビリーは一命を取り留めた物の傷の具合は楽観できる物ではなかった。事実、生死の渕を彷徨い、彼が意識を取り戻したのは三日前だったのだ。致命傷の一撃を偶然懐に収めていた短銃が、文字通り『スケープ・ドール』となって防いでくれたお陰で彼は今こうして生きている。
「良かったッス……やっと戻れた気がするッスよ……」
変わらぬ二人のやり取りを見てユエルが安心した笑みを浮かべた。

002
全てが平穏な日常に戻ったかのように思える。
だが、現実のところユエル帰還までの道程は簡単ではなかった……と真剣な表情でモリガンは言う。
事前に開かれた査問会ではユエルを禁止された自我を持つマシナリーとして認識し、従来法通り廃棄処分に処すべきと言う意見を述べる査問委員も少なくなかったのだ。
「参考人として聴取された中で、私はユエルはマシナリーとして製造されたが、厳密に判断すると彼女の正体は『始祖キャスト』に近い事を説明した」
始祖キャスト……。モリガンが語る聞き慣れない単語にヘイゼルは眉根に皺を寄せた。
「独立闘争運動を起こす切っ掛けとなった、意志を持った最初のキャストの事さ。彼等は他者に隷属しない自我を持ち、意志を……『心』を得たのだ。ハリス博士の資料を基に判断すると、ユエルの自我の目覚めはそれに近い。細かい経緯は省くが、グレーゾーンにギリギリ近いところでユエルは処分を免れたと言う訳さ。弁護に尽力したダルガン総裁と同盟軍のカーツ大尉に礼を言う事だな。……それからルウにもな」
「ルウに?」
「ああ、そうだ……」
会議の席上でユエルを廃棄処分とする者達に彼女は言った。

「心がある者は、ヒトです……。ならばヒトの尊厳を無視し、それを処分すると言う事は、何人にも許される行為では有りません」

ルウはそう言い切り処分を押す者達を説き伏せたと言う。
「ルウがそんな事を……」
「少し前に似たような前例があったらしくてな……。最も、そっちはコピーキャストだったと言う話しだが……。まあ、ルウにも感謝する事だ」
モリガンは立ち上がってコーヒーを淹れ始めた。安堵の空気が流れたが、それで全ての問題が解決し大団円……と言う訳では無かった。
通常のキャストとは異なる出自のユエルの身体は、既製部品との互換が利かず、修復作業は難航を極めた。加えて内蔵されたA・フォトンリアクターと頭脳体にプログラムされた戦闘用副人格も取り除く事は出来ず、ユエルの身体はエンドラムの負の遺産を抱えたまま、モリガンの神の手によって何とかレストアされたにすぎない。
ユエルが負傷した時どうするのか……また、戦闘用の人格が何らかの理由で再び起動したらどうするのか……そして、ユエルが召喚したあの次世代SUV『L・O・V・E』の存在。同盟軍のマシナリーによって破壊されはしたが、あれは一機のみしか存在しないのか……。
様々な不安の要素は残っているとモリガンは付け加える。深刻な問題に静まる一同を前に、だが、と彼女は断言した。
「私は必ずユエルを『人』にしてみせる。食べる事の喜びを、愛する事の喜びを……お前が今まで持っていなかった人としての幸福を与えてみせる。私の腕に賭けて必ずな」
出来るのか? と問うヘイゼルの言葉にモリガンは侮るなと不敵に笑って答えた。
「やってみせるさ……私はキャストの専門医……その道では天才と呼ばれる技師なのだからな」
だから今はモリガンを信じよう、ユエルの未来は今日、此処から始まるのだ。
その幸福な一歩に水を注す事はないだろう……。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

数日後―――。

退院を果たしたビリーとヘイゼルは、パルム西地区にある歩道に立っていた。リニアライナー改札口を見下ろす歩道に繋がる階段は人気もまばらである。
「……アリアは……ニューデイズに戻ったぜ……。お前達に謝っておいてくれと言われてるぜ」
手摺に両腕を掛け遠くを眺めながらポツリとビリーが呟いた。
「……そうか……すまん……」
ヘイゼルはその傍で瞳を閉じると一瞬空を見上げて言葉少なく詫びた。
一人の女の妄執の為に犠牲になった少女。
彼女は何一つ悪くは無かったと言うのに苦を負わせてしまった。責められるべきは、彼女の気持ちに気付きながらも曖昧な態度を取り続けた自分だと言うのに……。
苦い表情を浮かべるヘイゼルの横顔を一瞬見詰めビリーは小さく溜息を吐いた。
「オレに謝ってどうするんだぜ……。人生は結果の積み重ねだ。自分が出した結果を悔いる必要はない……選んだ結果なら恥じるな、胸を張ってるんだぜ」
結末は後味が悪い物になってしまった。
だが、自分達がもう少し大人になって再び出会った時には、昔こんな事があったな、と笑い合って水に流せるようになりたいとヘイゼルは思う。
それまでは少し時間が必要だ。誰もが自分の罪を許せるようになる時間が……。
「……ナニワブシ(ハードボイルド)を気取るなよ……テメエは」
「ロックと言って欲しいんだぜ」
鼻で笑うヘイゼルに心外と言った様子でビリーはニヤリと不敵に笑い返した。
「じゃあ、俺はそろそろ失礼するんだぜ……」
暫しの無言の後、おもむろにビリーが手摺から身を離す。
「行くのか? ユエルももうじき戻ってくる。別に用事が無いんだったら一緒にどうだ……これから―――」
ヘイゼルの言葉をビリーは片手で遮った。
「止めとくぜ、二人の時間を邪魔したって恨みを買いたくはないんだぜ」
ビリーの言葉に拗ねるユエルの顔を連想し、ヘイゼルは苦笑を浮かべた。
「アイツのか?」
「違うな、お前のだよ」
「……ふざけろよッ!」
意味を理解したヘイゼルが顔を真っ赤にし肩を怒らせると、その様子を面白そうに眺めてビリーが笑った。
一通り会話のキャッチボールを楽しむとビリーは告げた。唯一言……。
「じゃあな」
「ああ、またな相棒……」
ヘイゼルもまた短く返すと、ビリーは振り返り背中を見せたまま右腕を上げ左右に振り、中央区の方角へ向けて歩き去っていく。
彼もまた、ヘイゼルと同じ様に、あの白い少女を守りたい者だった。
しかし、少女が選んだのは一人の男。
誰しもが人生と言う名の主人公であるが、他人の中で主人公となる事は容易ではない。
ビリーはユエルにとっての主人公にはなれなかった。
選ばれなかった脇役は姿を消すしかない。
選ばれた者に笑顔を向けるヒロインの嬉しそうな顔を見続ける事は出来ないから……。
だが、ヘイゼルは解っている。
何時か必ず、男が帰ってくる事を。
俺達もまた相棒(パートナー)なのだから。

ビリーがヘイゼルの元を去ってから暫くし、通りにある店舗の自動ドアが開き、中に入っていたユエルが戻ってくる。

004
「お待たせしましたッスよ~! あれ、ビリーさんは?」
ヘイゼルの元へ駆け戻って来たユエルは、其処にビリーの姿が無い事に気付き、彼の姿を探して辺りをキョロキョロと見渡していた。ヘイゼルがビリーが帰った事を伝えるとユエルは心底がっかりした表情を浮かべる。
ヘイゼルはそんなユエルの様子を見下ろしていた。彼女の頭の頂きにはフリルをあしらった白いカチューシャが飾られている。先程、立ち寄ったブティックでユエルが気に入り、ヘイゼルが買い与えた物だ。どこぞのメイドを思わせる物だが、白いパーツで構成されたユエルに似合っていた。
「あ、これ……どう……ッスかね?」
「あー……うん……似合う……んじゃねえか」
上目遣いで尋ねるユエルの視線にドキリとし、ヘイゼルはそっぽを向いて鼻の頭を掻いている。
永久不変のツンデレ・スタイルにユエルは微笑を向け、ヘイゼルの手を取りながら言った。

003
「さあ、じゃあ行くッスよ! 今日はキャス子カフェに付き合ってくれるッスよね?」
「……ああ、約束だから仕方ないな。付き合ってやるよ」
思ったよりも小さなユエルの手をそっと握り返しながらヘイゼルはぶっきら棒に呟く。
そんなヘイゼルを引っ張ってユエルが走り出す。笑顔と光溢れる街の中、人波を掻き分けて二人の姿が遠ざかって行く。

娘の幸福を願った父の願いは、今此処に成就したのだ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

ユエルは今後もガーディアンズを続けると言っている。
それが殺めてしまった者達の為に、彼女ができる精一杯の贖罪だ。
無垢な笑顔の裏に重い罪垢(ざいく)を隠し、それでもユエルは人の為に生きる事を……安易な終りではなく苦しみと罪の十字架を背負って生きる事を選択したのだ。
だからヘイゼルも誓う。
お前が人を護る為に戦うと言うのなら、今度こそ俺はお前を護って戦ってみせると。
そして共に生きていこう。

       せ     か    い
この……"Phantasy Star Universe"で―――。

《終わり》

ユエル    「最終回なのに余裕なさすぎッス!Σ(´Д`lll)」
ヘイゼル   「仕事辞めて、またニートに戻るか? (゚∀゚)」
ユエル    「そ、それも勘弁したいッス…(;´Д`) と、取り合えず夏休暇前でバタバタしちゃったので、後書きとかは休暇中に書くッスね、その後は例のオリジナル始動させるッスよ!」
ヘイゼル   「今度の完成は何年後かね?(゚∀゚)」
ユエル    「縁起の悪い事言うなッスよ! Σ(´Д`lll)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-40】

ユエル    「祝! デモンズソウル【欧州版】発売決定ッスよ~!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「まだデモンズやってたのかよ! Σ(´Д`lll) つーか、一年以上してから発売なのか!?」
ユエル    「SCEも、まさかあんなに売れると思ってなかったから、いろいろゴタゴタがあったみたいッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「どんなよ?」
ユエル    「要約したの拾ってきたッスけど、大体こんな感じッスね(゚∀゚)」

・デモンズソウルは初回出荷分が1万5000本程度のニッチなタイトルだと思っていた
・しかし、それは25万本売れるタイトルだった(正しくは国内15万+北米28万のハーフミリオン)
・ SCEAやSCEEは、その伝統的ではないデザインと厳しい難易度のゲームが日本以外で売れるとは思わなかったため、SCEJの抵抗にも関わらず海外での販売をアトラスに任せた
・それは間違いで、ファーストパーティーのタイトルとして発売するべきだった

ユエル    「と、SCEAのエライ人が反省してたのに、何故か欧州版はバンナムがローカライズするみたいッスけどね(゚∀゚)」
ヘイゼル   「SCEJの戦略めいた何かを感じるぞ・・・(;´Д`)」
ユエル    「デモンズのローカライズ権利をやるからペルソナシリーズとテイルズシリーズの続編をPS3でヨロシク!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「オイ! バカ! 止めろ! と言うか何が言いたいんだ今回!(゚Д゚#)」
ユエル    「まあ、私が言いたいのはッスね・・・欧州版ブラックファントム・エディション、カッコイ―――! 何でこれを国内で出さないッスか! 釣られて買っちゃいそうッスよ!ヽ(`Д´)ノ」
ヘイゼル   「国内版、北米版(限定)×2も買ったのに、まだ買うんかい!(゚Д゚#)」
ユエル    「私のスパイクシールド二盾流を世界に知らしめるッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「浪漫武器じゃねえかッ! つーか、ACでもロケラン使ったり、モンハンではガンランス使ってたな、お前は!」
ユエル    「勝つ事よりも、別の何かを追求してるッスね。求道者として!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「対人で勝てないから、そっちに逃げたんじゃねえのか!(゚Д゚#)」
ユエル    「・・・と、まあ前置きはさて置いてッスね・・・」
ヘイゼル   「前置き長げえだろッ! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「今回の小説は、アニメ『コードギアス』の劇中挿入歌『Stories』を脳内再生しながら読んで見るのをオススメするッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「うわ・・・イテエ・・・(;´Д`)」
ユエル    「痛い言うなッスよ!(#゚Д゚) それじゃ、どうぞッスね!」

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-11 『Stories』②

遠くから白い少女の名を叫ぶ相棒の声が聞こえる。
コンクリート塀に背を預け、座り込んだビリーは、その声に釣られうっすらと瞳を開けた。
「そうだ、叫び続けるんだぜ……たとえ無駄に思えたとしてもだ。耳を塞いで聞こえない振りをしててもな、良い言葉ってのは……」
ビリーの腹部から流れ続ける紅い血潮。彼自身の生命の証。心臓が鼓動を刻む度、身体からそれが失われて行く。視界も霞んできていた。それでもビリーは不敵に素敵に大胆に笑って見せる。何時だって彼の人生はロックなのだから。
「心には……届いているもんだ……ぜ」
小さく呟き、ビリーの頭が力なく落ちた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

舗装道路を全速力で後退する一体のガードマシナリーを追って、区画を仕切る隔壁をぶち破り、追跡者となったL・O・V・Eの巨体が飛び散るコンクリートの瓦礫の中から猛然と姿を現す。
ガードマシナリーが保有するロケット弾も、フォトンビームもL・O・V・Eには効果が無い。応援要請のシグナルは既に発信済みだ。今、その身に出来るのはL・O・V・Eから逃げ切り、派遣されてくるであろう増援部隊と合流する事だが、L・O・V・Eはそんな都合を許しはしなかった。
L・O・V・Eの巨大な右拳を、腕部からせり上がって来たガードパーツが覆う。破砕(ハード・ターゲット)用大型鋼拳"デストロイ・ハンマー"が振り上げられた。効果は無いと知りつつもガードマシナリーがフォトンビーム弾を発射する。その射撃を無視して巨大な鉄塊が振り下ろされ、ガードマシナリーの胴体部がアスファルトの間でひしゃげる。四脚が地面に突っ伏する様に地面に×字を描く。L・O・V・Eが右手を持ち上げると、ガードマシナリーの胴体部は鋼拳の痕を残し綺麗に陥没していた。それでも職務に忠実な忠機は指示を全うするべく、壊れた四肢を動かそうとする。そこへL・O・V・Eの止めの一撃が放たれた。轟音と共に炸薬が炸裂し、巨大な薬莢が薬室より排出、同時に左腕部外側に装備された突貫杭(ストライカー・パイル)が射出され、ガードマシナリーの胴体部を貫く。×字型に伸びた脚部が痙攣したように一度大きく跳ね上がり、胴体部が爆発を起こした。燃え上がる炎の中でガードマシナリーの残骸が力無く崩れていく。

(燃える……燃えて往く……また……)

白い少女はぼんやりとその光景を見詰めていた。
だが、彼女に視えているのは違う光景、重なった幻影(マボロシ)、過去の記憶。
黒煙に覆われた夜空、崩れ落ちた瓦礫の山、おびただしい血の跡、沢山の死体、それを覆うアカイ炎―――。

(ああ、私はまた夢を見ているッスね……)

少女はその悪夢に絶望し嘆く。
そこから一刻も早く離れたいのだが、急いでいるのに己が脚は一向に願いを聞き入れず、その歩みはタールの海を渡る様にもどかしい。まるで意識の有る夢の中を彷徨い歩いているかの様だ。やがて夢現の中で自分の名を呼ぶ声が聞こえて来た。それは懐かしくも慕わしい人の声。
だけど、私はそれからも逃げようとしている。
(逃げる……? そうか私は逃げているッスね……)
不意に、白い少女は気付いた。その瞬間、今まで身体を動かしていた、もう一人の自分が小さくなって行く。この状況に自分自身を置き去りにして消えて行く。無責任な……と、少女は崩れそうな苦笑いを浮かべ観念した。
どの道、逃げられない。緋色の光景が、この罪から逃がしてくれないのだ。
ならば私は裁かれなければならない……咎の報いを受ける為に―――。

Judex ergo cum sedebit,
(かくて裁き手の座したもう時)

quidquid latet, apparebit:
(隠れたる事全て現れ)

Nil inultum remanebit.
(報いられざる事、一つとしてなからん)

Quid sum miser tunc dicturus?
(……その時、私は何を弁明すれば良いのでしょう?)

Quem patronum rogaturus?
(誰に弁解の賛同を得れば良いのでしょう?)

Cum vix justus sit securus.
(正しき者ですら畏れ脅える、その瞬間に……)

何時の間にかL・O・V・Eの脚は止まっていた。だが結果として、そのお陰でヘイゼルは追いつく事が出来た。
ヘイゼルは立ち止まり肩で息を切らす。自分とL・O・V・Eでは身体の縮尺(スケール)と機動力が違うのだ。これ以上の追跡(チェイス)は正直骨が折れる。
「ハァ……ハァ……ユ……ユエ……ルッ!」
ヘイゼルは荒い息の間から少女の名を呼び掛ける。返事が返って来る事を期待していた訳ではない……が、妙に拍子抜ける程、あっさりとユエルの声が反応した。
「来ないで……下さいッス……ヘイゼルさん……わた……しは……私が……」
声は届いた……。正気を取り戻したか! 安堵するヘイゼルの耳に、深い絶望を纏った声が弱弱しく響く。
「私が……皆を殺してしまったッスよ……」
その言葉の意味を悟り、ヘイゼルは絶句する。背筋を電撃にも似た痺れが走り、顔から血の気が引いた。
(戻っているのか……記憶が!?)
ヘイゼルは動揺していた。ハリス博士とヴィエラは言っていた。結果として生みの親を殺してしまったユエルの記憶を封じたと。それは彼女の罪と咎と悲嘆にくれた絶望の記憶だ……。それを思い出していると言うのか!?

『そう、殺したのよ―――』

と、ユエルの封じられた記憶が冷酷に告げている。
優しかった研究者達を……そして今、ヴィエラを……憐れな自分の妹を……私が、この手で!
緋色の視界の中に散乱する研究員達の屍が、ズタズタに引き裂かれたヴィエラの姿が、消えない罪の現実が、思い出した記憶と共に焼き付いている。
ユエルが視線を落とし、変わり果てた自分の右手を見詰めた。
金属が軋み、ジョイントが可動する、音。
複合合金で構成された無骨な4本のマニュピレーター……今の自分の拳は凶暴な鉄塊だ。
思い出す。忘れようとしていた光景を……。記憶が重なる。ラフォン草原で斬殺されたディ・ラガンを前に、真っ赤な血に濡れたこの手を、ユエルは確かに見ていた。あれは悪い夢の続きだと思っていた。だが……これが現実。

『SEED殲滅戦用次世代SUV』

そうだ、それが自分の本当の姿だ。獰猛な殺戮マシーンなのだ。その本性が―――。
「殺してしまったッスよ……」
もう一度、絶望にくれた少女が泣きそうな声で呟く。
「それは、お前のせいなんかじゃないだろう!」
巨大なL・O・V・Eの足元に駆け寄ったヘイゼルが優しく、だが力強く諭す。
ヴィエラは言っていた。デュアルブート・システム……。一つの頭脳体の中にある二つの心(ペルソナ)。ユエルの頭の中には、もう一つの戦闘用副人格が在る事を。
「全てはお前の中のにある、戦闘用人格(そいつ)の仕業じゃねえか!」
と、ヘイゼルは言う。……が。

でも……でも……!

「でも、私は覚えているッスよ! あの炎の熱さを……血と肉の焦げる臭いを!」
L・O・V・Eが巨大な拳で頭部を抱え身を捩らせる。ヘイゼルが与えた希望の答えをユエルは否定した。
忘れられなかった……忘れたままでいたかった……忘れさせて欲しかった……憶えている光景がある。
黒煙を上げる研究所、崩れ落ちた瓦礫の山、おびただしい血の跡、沢山の死体、それを覆うアカイ炎。
目を閉じても消えない緋色……それはヴィエラと同じ色。
その色が、炎と血と深い闇の色が、あの夜の光景が今も脳裏から離れない。
だから、犯した罪からは逃げられない……逃げて良い筈が無い。

だが、それでも―――!

「お前は、生きていて欲しいと願われて生き延びたんだ!」
聞き分けの無い駄々っ子に言い聞かせるようにヘイゼルは力の限り叫んだ。
すまない、すまないと男は詫びた。何度も何度も繰り返し詫び続けた。残酷な結末に放心するユエルを研究所から連れ出した男は、戦う為の目的で彼女を生み出した事を詫び続けた。
ユエルの生みの親、ハリス・ラブワード博士。
彼はユエルの忌まわしい記憶を封じ、自分の死期を無視しても尚、彼女を逃がしたのだ。
血生臭い戦場から、平和な日常へと―――。

『お前は娘の代わりじゃない……もう一人の大事な、大事な私の娘……。願わくば次に君が目覚めた時には……幸福な未来が待っているように……』

記憶を操作される直前、落ち掛けた(シャットダウン)意識の中、ユエルの耳に聞こえた博士の最後の言葉。
恨む事も、責める事も無く、博士はユエルの未来を望んだ。戦機として生まれた機械に、人として生きるよう望んだのだ。
人知れぬ暗闇の中で温かい何かが……涙がユエルの頬を伝っていた。
だけど私は答えが欲しい……儚い声が問う。
「私は……私は……生きていて……良いッスか? 皆を殺してしまった私が……人殺しの機械(マシーン)が……生きていても良いッスか?」
恐る恐ると小さな声が問い掛ける。
それは懇願であり、縋りたい希望。肉親殺しの大罪を背負う、許されざる者の身でも、叶うなら望みたい、唯一つの小さな願い。
「生きろよ! その願いを誰に止められる!? 誰が否定しようと関係ない。自分が思うように、したいように生きれば良いじゃねえか! たとえ誰が何を言おうと、俺がお前を守―――!」
言い掛けて、漸くヘイゼルは気付いた。唐突に以前聞いたダルガンの言葉が頭を過ぎる。

『ヘイゼル、君の"守るべきもの"は……見つかったのか?』

守るものは無いと、ヘイゼルは答えた。
大義無き、落ちこぼれのガーディアンズである俺には、世界を護るとか、そんな大それた英雄じみた事は出来ない。
そう思っていた。
力の無い自分には、自分の為に守りたいもの位しか守れない。
それが自分の実力だから……。
だが、それでも良い。
そうだ、俺は唯一人、お前を護る為の守護者(ガーディアン)だ。
それだけで良い。
「なんだ、俺にも守りたいものはあったじゃねえか……」
小声で呟いたヘイゼルの口元に笑みが浮かんでいた。遅すぎた理解に対する自嘲めいた苦笑。
「お前を襲う不幸から、お前を責める悪夢から、お前を認めない世界から、何時だって、どんな時だって、必ず守ってやる。俺はお前と生きていきたい。明るい明日をお前と二人で見て生きたいんだ。だから、一緒に生きようユエル……」
それが『守るべきもの』を得た、ヘイゼルの素直な心からの言葉だった。
「あぁ……ヘイゼルさん……」
感極まり、涙声のユエルの言葉がL・O・V・Eの外部スピーカーを介して聞こえる。
傍から見ると些かシュールな光景だが、ヘイゼルと巨大な戦機は見詰め合っていた。
だが、唐突に聞こえた無粋なスキール音が二人の時間(とき)を現実に引き戻す。
振り返ったヘイゼルの視界に、砲台を備えた多脚マシナリーの姿が飛び込む。先程までの都市警備のマシナリーでは無い。軍用の戦闘マシナリーだ。それも一機や二機ではない。小隊規模の数だ。
(同盟軍のマシナリーだと!? 増援を呼んでやがったのかよ! 空気読めよ、クソッたれが!)
舌打ちするヘイゼルを差し置き、集まったガードマシナリーは交互三列になって、L・O・V・Eに対しを陣形を整えた。双方の距離は約30m、フォトン・メーサー砲を有する胴体部の両側には、おそらく4連装のランチ・ポッドを収めている2つのコンテナが―――。
(不味い!)
ヘイゼルの顔から血の気が引く。
先程まで交戦していた都市警備用ガードマシナリーが所有していたロケット弾とは質が違う。軍用マシナリーが持つ、軍事作戦用の強力なロケット砲だ。そんな物を連射されたら、如何に優れたシールドラインでも防げない。その負荷許容量を超えるダメージを軽減する事は出来ないのだ。単体の攻撃力ではL・O・V・Eのシールドを破れない事を知ったガードマシナリーは、物量を持ってしてL・O・V・Eを完全破壊するつもりなのだ!

『圧倒的なスペックの差を物量で押し切られたその時、姉さんはホルテスシティを震撼させた悪魔の兵器として破壊されるのよ!』

破滅を望んだヴィエラの言葉が頭を過ぎる。彼女が死を賭して結んだ呪い。その呪詛が成就されると言うのか。
コンテナの正面を覆う保護装甲が展開し、ランチャーの発射管が覗く。
そんな事を……させてたまるかッ!
「止めろ―――ッ!」
ヘイゼルは両腕を広げ、L・O・V・Eの前に立ちはだかった。
『守る』という誓い、それを果たさなければならない。あの時……八年前の自分にはそれが出来なかった。父も母も守れなかった……力の無い自分が許せなかった。だから代わりに世界を呪い、キャストを憎んだのだ。
だが、今は違う! 壊れて逝く父を、疲れて逝く母を救えなかった、あの頃の自分とは違う!
『守る! その力が今の俺には有る!』
ガーディアンズとして過ごした時間、それは無駄ではなかった。身に付けた技術と技能、それは今この時の為に……守るべき者の為に培って来たのだから!
「全弾撃ち落してやる!」
ヘイゼルは広げた両手にナノトランサーから、フォトンの刃を射出する飛刃剣(スライサー)ヨウメイ社製のヒケンと、片手銃(ハンドガン)GRM社製のパイソンを転送した。マシナリーがロケット砲を一斉発射する。ヘイゼルは発射されたロケット弾目掛けて飛刃剣からチッキキョレンジンを射出、パイソンを掃射し弾幕を張る。チッキキョレンジンは飛刃剣のリアクター出力を最大値に引き上げ、フォトン刃を撃ち出すフォトンアーツだ。射出されたフォトン刃は広角で貫通性が高く、横軸への攻撃性能が高い。フォトン刃と光弾に貫かれたロケット弾が爆発し、その爆発に巻き込まれ隣接して発射されていたロケット弾を誘爆する。だが、その一度で攻撃が終わった訳ではなかった。先制を放ったマシナリーが後退し、後列のマシナリーが前進する。並列を変えたマシナリーが再びロケット砲の射撃体勢に入った。
「チィッ!」
ヘイゼルは舌打ちしながら武器を振るい弾丸を放ち攻撃を続ける。今、この手を休める訳には往かないのだ! だが、マシナリーの攻撃も止む事はない。ロケット弾全てを迎撃する事は物理的に不可能なのが現実だ。遂に弾幕をすり抜けて、ロケット弾が迫る。攻撃の手が多すぎる。防ぎきれない!
(守れないのか、俺には……? 俺の力じゃ、たった一つの大事なものさえ守れないって言うのか!?)
「クソッたれがあああああああ―――ッ!」
口汚く罵ったヘイゼルの頭上を不意に黒い影が過ぎた。次の瞬間、地響きと共に巨大な影がヘイゼルの前に立ちはだかる。その巨大な影はL・O・V・E……ユエルがヘイゼルを庇うように立ちはだかった。
「ユエル!?」
一瞬、攻撃の手を止めたヘイゼルが驚いてL・O・V・Eを見上げる。迷い無く、優しい小さなユエルの声がヘイゼルの耳に届いた。
「有り難う、ヘイゼルさん……私にはその気持ちだけで充分ッスよ……」
罪深き私に、それでも生きて良いと言ってくれた。
その瞬間、彼女の小さな願いは叶えられたのだ。
それだけで満足だった。
自分は誰かに……他でもない貴方に必要とされたのだ。
「おいッ! 止め―――ッ!」
悲鳴の様なヘイゼルの叫びがユエルの耳に届く。
その悲痛な声に心は痛むが、それでも清清しい気持ちでユエルは迫るロケット弾の群れを見つめていた。
「多くの命を殺めてしまった私ッスけど……けれども、最後にガーディアンズとして……人として……」
着弾し爆発を起こすロケット弾の破壊力は、シールドラインの許容量を超え、遂にシールドエフェクトが破片となって飛び散る。それを待っていたかの様に、獰猛な砲弾の群れがL・O・V・Eの身体に牙を突き立てた。装甲がひしゃげ、フレームは歪み、爆散したパーツが乱れ飛ぶ。
激しい爆音の中、それでもユエルの小さな呟きがヘイゼルにはハッキリと聞こえていた。
「私は……貴方を守れたッスよね? ヘイゼルさん……」
夢見るような口調でユエルは呟く。
この行動が贖罪になるとは思っていない。共に生きようと言った貴方の言葉にも従えない。しかし、それでもユエルは満足だった。

貴方が生きている事、それが私が生きた証―――。

誇らしそうに、嬉しそうに問うたユエルの言葉に、応えんとしたヘイゼルの怒声は爆音に掻き消された。
衝撃が『ユエル』であった物を壊していく。
だが、もう音も聞こえない。色調も解らない。
灰色のノイズに覆われた視界が、ゆっくりと閉じられようと(フェードアウト)している。
それが終焉(さいご)の筈なのに怖くは無かった。
むしろ少女の口元には柔らかな微笑が浮かんでいる。

(だってほら、私の心はこんなにも満ち足りているのだから……)

満ち足りて逝ける者は少ない。だからこそ思う。自分は幸福だったのだろうと。
その幸福に包まれたまま、爆発が無慈悲に世界を壊し、全てを収束する暗闇の中に落としていった。

…………。

……。

《続く》

ユエル    「挿SSも無しって、今回は手抜きッスか? (゚∀゚)」
ヘイゼル   「そう言う事を言っちゃ駄目! Σ(´Д`lll)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-39】

今年は本気で本気出します!

ヘイゼル   「……って言ってから、もう4月だよな(゚∀゚)」
ユエル    「……ッスよねぇ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「1月中に、この小説も終わらせるって言ってたような気もするがな(゚∀゚)」
ユエル    「まあ半ば予感も的中した形ッスよね。元々それが出来るなら、今まで延々と燻ってないワケッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「とりあえず煽っておこうぜwwwwwww」
ユエル    「m9(^Д^)ぷぎゃ―――! ッス!」

うっ……お正月に誓った宣告を光の速さで破ってしまいました('Д`)
なので今年もスローペースで行く方針に転換ですよ(゚∀゚)

ヘイゼル   「コイツ、居直りやがったぞ!(#゚Д゚)」
ユエル    「いや、いろいろと解ってた事ッスよ(゚∀゚)」

あんあり長い事更新していなかったので、小説の中身を忘れられてるかもしれませんが
とりあえず、本編はクライマックスに突入です!
残りもう少しお付き合い下さい。

ユエル    「長いもう少しになるッスけどね。絶対(゚∀゚)」

 Σ(´Д`lll)

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-10 『Stories』①

微睡(まどろみ)の中で見ていた物は、夢の続きだと理解していた。
その中で私の大切な人は戦っている。
明らかに自分より強い緋色の女性に何度も、何度も、挑み続けていた。
しかし、力量の差は明確だ。
油断を突いたのだろうが、力及ばず一転して危機に追い込まれている。
(助けないと―――)
そう思うが、彼との距離は遠すぎる……。
危機に晒された彼の姿が認識できる(見える)のに、私のこの手はあの人の元まで届かないのだ。

『いいえ……届くわよ?』

頭の中で声がした。
それは紛う事無く私の声……。
そう……そうだ……私のこの手は、彼の元へ……その戦場まで届く筈なのだから―――。
私は思い切って右手を伸ばす……この想いが彼に届くようにと祈りながら……。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

(殺られる―――!?)
弾かれた剣に詰められた間合い。半狂乱のヴィエラが振るう剣をヘイゼルは避けきれないと悟っていた。
だが、勝敗が付く寸前の二人を突然の衝撃が襲う。ヘイゼルの目の前でヴィエラの身体が爆ぜ、玩具の人形のように中を舞い、自身の身体も衝撃波で吹き飛ぶ。薙ぎ飛ばされたヘイゼルの耳に、僅かに遅れて轟音と化した何かの掃射音が届いた。
地面に背中を強かに打ちつけられ、一瞬何が起こったのかヘイゼルは理解する事が出来なかった。
「く……な……何が……?」
衝撃で巻き起こった砂塵が辺りを覆っている。投げ出された身体を起こしながら、ヘイゼルが辺りを見回と、かなり離れた区画でL・O・V・Eが右肩の重機関砲、ヘーゲル・パニッシャーの砲口をこちらに向けていた。L・O・V・Eはマシナリー群との戦闘を続けている筈だ。
(誤射……? いや……)
茫然自失としているように見えるL・O・V・Eを連装フォトン・ビームが襲う。しかし、それらは全て、L・O・V・Eの堅固なシールドラインに阻まれ、その装甲に傷一つ付ける事は出来ていない。
L・O・V・Eと都市警備マシナリーの戦闘は今だ継続中だ。ヘーゲル・パニッシャーの砲身を折り畳み格納したL・O・V・Eは、平地高速移動用脚部ホイールで機体を旋回させ、マシナリーを追って再び殲滅行動を開始する。
「ユ……ユエ―――」
その後を追おうとしたヘイゼルだが、思い直し足を止める。愁いの種はまだ残されたまま、それを放置して追う訳には行かないのだ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

束の間、途絶していた意識が回復すると、すぐにヴィエラ自身を見舞った損害の報告が頭脳体を駆け巡った。だが、データにノイズが多く処理は思うように進まない。ダメージは相当深刻なようであった。
ナノトランサー内に収納されたA・フォトンリアクターから、エネルギーを汲み出す次元転移回路(AFエネルギー・バイパス)が断絶、通常のフォトンリアクターも損傷し、エネルギーの供給が不可能となっている。フォトンエネルギーはキャストが稼動するのに必要な、人間で言えば血液のような物だ。供給が停止すれば、頭脳体や身体の各部にエネルギーが行き届かなくなり、キャストは生命活動を維持できなくなる。

それは詰まる所、生物学上の『死』と同義だ。

第三者の介入によって齎された結末に困惑しつつも、ヘイゼルは地面に横たわったままのヴィエラを見下ろしていた。

001

L・O・V・Eが放ったヘーゲル・パニッシャーの砲弾は、いとも容易くヴィエラのシールドラインを撃ち貫き、彼女の身体をボロ雑巾のように弄んでいた。直撃を受けたヴィエラのダメージは深刻である。砲弾の一発は胸部を貫通し、拳大の風穴を開けていた。左脚は太ももの部分から千切れ、右腕は肘を砕かれ人工皮膚一枚で繋がっている状態だ。そして、何より致命的なのは頭部の削痕だ。砕けた側頭部から内部が露出し、損傷した頭脳体が覗いている。人ならば即死であったろう。だが如何にキャストが"人"とは違うと言っても、ヴィエラが戦闘を継続出来るか否かは明白。
ヘイゼルは、ヴィエラは、理解した。

雌雄は決したのだと。

データが、状況が、何よりも動かぬ己の身体が敗北を告げている。
心の隙を突かれ自分を見失っていたヴィエラは、奇しくも自らを襲った凶弾により本来の冷静さを取り戻していた。
(負けたの……私は……)
ヴィエラは妙に落ち着いた気持ちで導き出した結論を受け入れていた。
いとも容易く、呆気なく、塵積もった妄執が、憎悪が、全てが潰えようとしている。
(だけど、それも良いわ……所詮は誰からも必要とされなかった命……。いえ、生命(イノチ)ですらなかったわね……私達は……。だから、もうどうでも良い……終焉こそ、私が望んだ結末なのだから……)
裂けたヴィエラの口元に自嘲めいた笑みが浮かんでいる。
勝ち負け等どうでも良かった。妬ましかった……羨ましかった……。調整用寝台に括られ見続けた、姉さんのあの笑顔を滅茶苦茶にしてやりたかった。そして、その果てに自分自身も壊してしまいたかったのだ。
姉さんの最後を見届ける事と、彼女が恋する男を道連れに出来なかった事は心残りだが、それもどうでも良い。
ユエルの破滅と自らの破滅……。嫉妬と憤怒と憎悪の果てに辿り着いた絶望だ。終われるのならばそれで良い。悔いはなど無い筈なのだ。
僅かに動かした頭部からはらりと何かが落ちた。ヴィエラの視線が力無くそれを追う。バラバラになった白い花の髪飾り。それは自分の動揺を誘い、勝敗を決する一因となった物であった。

002

『愛されていたんじゃないのか……お前も!?』

今一度、ヘイゼルの言葉が頭の中で再生される。同時に脳裏にある記憶が甦った。
漆黒の夜の闇に広がる黒い煙、そして紅い炎……それはユエルが、そしてヴィエラが忘れる事の出来無い、あの夜の光景だ。
ヴィエラを庇いSEED生命体の攻撃を受け若い研究員は倒れた。それを見て頭脳体が沸騰しそうな感覚を覚えたヴィエラは、気が付くと研究員を襲ったSEEDを八つ裂きにしていた。
そう、彼女に有るのは、自らの敵を憎み破壊する事に特化した感情だけ……だが、その時憎しみと怒りを生んだ感覚は何時もと何かが違っていた。
自らの作った血溜まりに横たわる青年の元に跪き、土気色になって行く顔を覗き込むと、彼は血に濡れた右手を伸ばし、ヴィエラの頬にそっと手を触れた。ひびの入った眼鏡の奥で優しい瞳が力無く揺れている。

『―――ああ、その花飾り……やっぱり君に良く似合っているね……』

研究員の口元に浮かんだ優しい笑顔。そこには未練も執着も無かった。有ったのは、遣り遂げた者だけが持つ、満足さと安堵だった。
ヴィエラの頬から彼の右手が、するりと力なく滑り落ちる。今際の際……ああ、そうだった……。あの時、自分を守った研究員は確かにそう言い残した。
似合う、と……。
折角、彼がそう言ってくれたのに……壊してしまった髪飾り。何時も傍に居た……傍に居てくれた……彼からの贈り物だったのに……。
(私は……)
どうして今更……何故、あの時気付けなかったのだろう……。
身体に経験した事の無い『痛み』が走る。
人の思考は脳がする物だ。人であろうとキャストであろうとそれは変わらない。なのに何故だろう? 今痛んでいるのは、この胸の中だ。こんなにも切なく、苦しい痛みなのに、その理由がヴィエラには解らない。何時の間にかヴィエラの瞳から涙がこぼれていた。
(私も……)
「―――」
ヴィエラの唇が僅かに震えたが、彼女の最後の言葉は聞こえなかった。故に彼女が最後に何を言おうとしたのか……それは誰にも解る事は無い。ヘイゼルは活動を停止した彼女の姿を複雑な気持ちで見下ろしていた。
「愛を理解しない者が、愛された者に嫉妬なんかするもんか……。解ってたんだよ。お前だって愛ってのが何なのか……」
自らが執心したように、只の機械ならば、初めからそんな感情など抱かなかった筈だ。
感情が、人としての心があったからこそ、彼女はユエルに嫉妬したのではないのか。例えそれが理不尽な物だったとしても―――。
「皆不器用だったんだ……」
ヘイゼルの脳裏に人影が浮かび過ぎていく。

不器用に娘を愛した、ハリス・ラブワード博士。

ヴィエラに自らの愛を伝える事が出来ず、髪飾りを贈った不器用な若い研究員。

愛されなかったと思い込み、不器用な愛に飢えたヴィエラ。

「そして……俺も……か」
心根にある物に従えず、素直に生きる事が出来ない、不器用な自分。
ヘイゼルは瞳を閉じ、呟いた唇を噛み締める。
ヴィエラの活動停止により、ヘイゼルは初めてキャストの死と言う物を見た。
有機体である人とは違い、死に難い身体を持つ筈のキャストの死……。彼等も不死ではないのだ。それはユエルも例外では無い。ユエルの死と言う事実に対し湧き上がる胸の中の焦燥。
「お前を失うという事に対する、この落ち着かない気分……ああ、解ってる。お前は俺にとって特別な何かなんだろう……」

だから―――!

ヘイゼルはヴィエラの遺体に背を向け歩き出した……ユエルを救いに行く為に。
硝煙と炎の匂いが漂う戦場に一陣の風が通り過ぎた。
(命を掛けて機械を守ってどうなるの? 価値の無い物を守る事に意味はあるの?)
ふと、その中にヴィエラの声を聞いた気がした。振り返るがヴィエラは完全に機能を停止している。幻聴だったか……だがヘイゼルは幻に答えていた。
「守れる……。価値があるから、無いとか、そんな事は関係ない」
共に暮らした、この惑星(パルム)で……。
共に歩いた街の通りで……。
共に過ごした部屋の中で……。
記憶の中に有る彼女の顔は、いつも笑っている。
俺達が出会って過ごしたのは僅かな時間でしかないかもしれない。それでも間違い無く、これだけは断言出来る!
「あの笑顔を……失ってたまるかよッ!」
ヘイゼルは駆け出し叫んでいた。
「ユエル! テメエ、いい加減に目を覚ましやがれッ!」
解っている……確信に近い自信があった。ユエルは自分の意識を取り戻し始めている。あれ程、ドンピシャリのタイミングで流れ弾が飛んで来る筈が無い。だとすればそうだ! あの瞬間、お前は俺を守ろうとしたんだろう、ユエル!?

《続く》

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-38】

ヘイゼル   「皆さん」
ユエル    「明けましておめでとうッスよ~!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「何だかんだやってる内に2009年も終わって、2010年になっちまったなあ…」
ユエル    「更新が一ヶ月に一回ってどう言う事ッスかね(゚∀゚)」
ヘイゼル   「2010年から本気出すって言ってたぞ…(;´Д`)」
ユエル    「悪い奴は皆、そう言うッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「ま、まあ作者は頑張るって言ってるし、長い目で見てやろうぜ!」
ユエル    「ながーく、見てる内に、また一年が過ぎると思うッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「いちいち茶化すなよ!(゚Д゚#)」

そんな訳で、今年こそ頑張ろうと思います(;´Д`)
目指すは、一月中に【PSU-L・O・V・E】の完結、そしてオリジナルの新作の連載です!(゚∀゚)
今年は本気で本気出します!

ユエル    「あー、ハイハイッスよ(゚∀゚)」

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-09 『Red Ring of Death』

左肩部メイン・フォトンブースター大破……激突時、シールドライン相殺ダメージ、キャパシティ(許容量)オーバー……透過ダメージによる本体損傷、稼働率93%に低下……。
「何て事……たかだかヒューマン二人を相手に、この無様……」
積み重ねられた擁壁用コンクリートブロックに派手に破壊し、その破片にまみれ横たわりながら、頭脳体を駆け巡る損害のメッセージにヴィエラは思わず呟いていた。
「フン……頼りのブースターを失って大幅な戦力低下って事か?」
ヘイゼルが嘲笑の笑みを浮かべながら、区画を繋ぐ階段をゆっくりと降りて来ている。
「減らず口を……貴方には丁度良いハンデになったでしょう?」
ヴィエラは鼻で笑うと身を起こした。身体から落ちる砂塵とコンクリートの破片に眉根を寄せ、忌まわしげに払う。
ビリーにフォトン・ブースターを破壊され、地面に叩きつけられた衝撃でヴィエラはクレア・セイバーを紛失していた。得物を失った彼女は代わりにナノトランサーから新たな武器を取り出す。
ヴィエラが取り出した武器を見てヘイゼルは眉根を寄せた。それはヘイゼルが見掛けた事の無い武装だった。形状的にGRM社製のデザインをしているが、片手剣のようにも、ラピッドストリーム系のように大きなフォトンエッジを持つ小剣のようにも、飛刃剣(スライサー)のようにも見える形をしている。
「切り札……って訳か?」
ヘイゼルが階段を下りきった。
ヴィエラの手にする武器は市場に出回っている武装とは明らかに異なったフォルムをしている。おそらく、独自に開発された非正規品(クバラ製)なのだろう。
「出し惜しみか……なら、最初から使っとけよッ!」
「意気がるな、人間(ヒューマン)如きが―――っ!」
デスダンサーを振り上げヘイゼルがヴィエラに襲い掛かり、彼女がそれを迎え撃つ。
ヴィエラが手にする正体不明の武装は直剣サイズの紅いフォトン・ブレードを形成した。
(片手剣のフォトン・ウエポンだったか……なら!)
フォトン・ブースターは破壊され、ヴィエラは高速戦闘を封じられている。
だが、まともに挑んでは、力負けするのを先程の戦いから学んでいたヘイゼルは、片手剣を両手持ちに切り替えた。
ヴィエラが片手剣を振り上げると、突然、フォトンの刃が分解変形した。
六角形状の無数のプレートが紐状のフォトンで繋がれた見た事も無い形状だ。
(形が変わった!? フォトン・ウィップ……いや違う、これは―――ッ!?)
それは、例えて言うなら蛇腹剣と呼ばれる物だ。
剣の形態と、刀身を分割した物がワイヤー状の物で結ばれた、鞭の様な形態を持つ武器である。
しかし、それはフィクションでのみ存在する物であって、現実に存在する武器ではない。
当たり前である。振り上げた途端に自傷してしまいそうなリスキーな武器などある筈がないのだ。
それを使うと言うのか、彼女は!?
ヴィエラが右手をくるりと回すと、フォトン・ワイヤーが見事な螺旋を描く。ヴィエラはその螺旋の渦を操るとヘイゼルへ向かって放った。紅いフォトンの輪がヘイゼルの身体を包むように迫る。本能的な身の危険を感じたヘイゼルが慌てて身をかわすと、フォトンの螺旋は急速に収縮し、擦れ合ったプレート同士が激しい音を立て、飛沫となったフォトン粒子を飛び散らせる。
「良く避けたわね、私の"死の赤輪(レッドリング・オブ・デス)"……褒めて挙げるわ」
ヘイゼルの背中を冷たい汗が走る。
螺旋の渦の中に取り込まれていたら、どうなっていたかは想像に難くない。
「大人しくミンチになりなさい!」
「冗談じゃねえ! なら一気にその懐に踏み込ませてもらう!」
ヘイゼルは気を取り直すと、再び死の螺旋を掻い潜り、ヴィエラに切り掛かった。
だが、直接的な戦闘力はヴィエラの方が上である。
負傷し本体稼働率が低下した今の状態でも、それは変わっていない。
(まともに付き合っても勝てる相手じゃない……だがな、俺も負けてやる気は更々無いんだよ!)
近接の間合いに持ち込まれたヴィエラは、蛇腹剣を素早く片手剣の形態に変化させた。
中・近距離の間合いを制する彼女に危な気は無い。
ヘイゼルは剣を高く振り上げると一気に振り下ろす。鋭くも無ければ、重さも無い一閃。
(まったく……退屈すぎるのよ、貴方は!)
単調なヘイゼルの攻撃に、いい加減飽き気味のヴィエラが攻撃に転じようとした時、剣を振り下ろした勢いのまま、身体を一回転させたヘイゼルの蹴り足が、ヴィエラの胸元へ叩き込まれた。
「うっ!?」
突然の奇襲にバランスを崩したヴィエラへ、ヘイゼルの追撃が延びる。
フォトンの刃は緩やかな曲線を描くヴィエラの胸元を掠めた……だが、浅すぎる。シールドラインは貫けない。
体術を交えた戦技。
訓練生時代、肉体的なポテンシャルが他者には劣ると判断したヘイゼルが、勝つ為に身に付けた技だ。
戦技教練と違うと訓練生仲間や指導教官からは不評だったが、命を掛けた戦いで型に拘り屍を晒す事の方が馬鹿げているとヘイゼルは思っている。それは正しい筈だ。
剣閃と思えば裏拳や蹴り脚を交えたフェイント、かと思い警戒すれば捻りの無い正直な攻撃と、トリッキーな責めに翻弄され、傍から見れば優勢なのはヘイゼルのように見える。だが、彼は内心焦り始めていた。
ヘイゼルの戦技はあくまでも奇をてらった奇襲用の物でしかない。
幾度かは相手の意表を付けるかもしれないが、それが恒久的な物で無い事を知っていた。
ヘイゼルが身体を横に一回転させ剣を横薙ぎに振るう。彼の身体の影に隠れ、見えない状態から繰り出された剣を、ヴィエラは腰を引いて避けたが、それはヘイゼルの計算の内だった。
ヴィエラを正面に捉えたヘイゼルは、右足の爪先を地面に擦るように蹴り上げた。蹴りは直接ヴィエラを襲う物ではなかったが、地面に溜まっていた砂の塊がヴィエラ目掛けて飛び散る。
砂塵を蹴って目潰しとしたのだ。
キャストは半機械の生命体だが、目の構造は生物のソレと似通っている。
効果は有る筈だったのだが、ヴィエラはその砂塵を避けていた。
ちらりと盗み見た顔の口元には余裕の笑みさえ浮かべている。
(避けられた―――!?)
手の内を読まれ始めている。
優秀な戦機である彼女は、短い交戦時間の中でヘイゼルの戦闘スタイルさえ学んだようだ。
その事実にヘイゼルの焦りは加速した。
「何とかの一つ覚えも品切れかしら?」
「ぬかせッ! その減らず口もビリーが合流するまでだ!」
ヴィエラがふふんと嫌味に鼻を鳴らし、カッとなったヘイゼルが言葉を返す。
「あら、そう? それにしては来るのが遅いんじゃないかしら、彼? そう言えば彼はどうしたの? 狙いは逸れたとは言え確かな手応えは有ったのだけど……まさか、見捨てて来たのかしら?」
「黙れと言った! 奴なら、その傷を薬で癒している所だ! 直ぐに此方にやって来る。その時がお前の最後だ!」
ヘイゼルの言葉にヴィエラはまた鼻を鳴らした。
「そうなの……でも彼も貴方も、今日は非番だった筈よね?」
二人の剣が打ち合わさり鍔迫り合いとなった。
睨み合いながらヘイゼルが吐き捨てる。
「……何が言いたい!」
「非番の日も戦闘に備えた準備をしているのかしらね……?」
ヴィエラの言葉がヘイゼルの動揺を誘う。
確かに……ヘイゼルは非番で有った為、回復薬品の持ち合わせが万全ではなかった。
それに、別れ際にビリーが見せた回復薬、あれが本当に回復薬だったのか確かめた訳でない。
(ビリー……お前、まさか―――)
僅かな隙を見せたヘイゼルにヴィエラの鋭い一太刀が浴びせられる。ヘイゼルは辛うじて受け流したが、間髪を入れずヴィエラが前蹴りを放ち、ヘイゼルを蹴り離した。十八番を奪われたヘイゼルは数歩後退り姿勢を保とうとする。
間合いが離れた―――。
機会を逃さず、ヴィエラは再び剣の刃をを蛇腹剣の形状に変形させた。
(ヤバイッ!)
再び踏み込むか? いや、それより彼女が蛇腹剣を振り下ろす方が速い!
瞬時にそう判断したヘイゼルは、ヴィエラと距離を取る為に後退した。
予想通り振り下ろされたヴィエラの蛇腹剣は空しく地面を叩いたが、彼女の操作でまるで生き物のように蠢く蛇腹剣がヘイゼルを執拗に付け狙う。
防戦に持ち込まれたヘイゼルは蛇腹剣の攻撃圏を逃れるべく、近場に山積みにされたコンクリートブッロクの影に飛び込んだ。
「それで隠れたつもりなのかしら? なら、燻り出して上げる!」
煽るヴィエラをブロックの隙間から覗くと、彼女の手にする武器が"く"の字のフォトン・ブレードを形成していた。
(また変形しただと……今度は何だ!?)
ヴィエラは腕を前方に真っ直ぐ伸ばすとフォトン・ブレードを真横に構えた。ブレード部分にフォトン・エネルギーが集束していく。
(フォトンアーツ、チッキキョレンジン……!? と言う事は今度は飛刃剣『スライサー』か!)
飛刃剣は形成したフォトン・ブレードを射出して攻撃する中距離攻撃型の武器で、射角が広く、攻撃時の隙も少ない強力な武装の一種である。
「ミンチが嫌なら、そのブロックごと粉々にしてあげるわ!」
そう言ってヴィエラが射出したフォトン・ブレードがコンクリートブロックを次々と破壊していく。長くは持ち堪えられそうも無い。
「クソッ!」
コンクリートブッロクの影に身を隠したヘイゼルは思わず悪態を吐いた。
その武装、身体能力、戦略と、あらゆる上でヴィエラの戦闘力はヘイゼルを圧倒的に凌駕している。
奇襲も奇策も騙し討ちも効かない!
(駄目だ……実力では到底歯が立たない! 考えろ、考えてアイツの隙を作るんだ……)
だが、急くほどに余計な雑念が湧き上がり、冷静な判断力を奪って行く。
焦りが様々な光景を生み、ヘイゼルの脳裏を目まぐるしく巡る。
その中でふと、ヴィエラの髪に止められた花の形の髪飾りが脳裏に浮かんだ。
不釣合いだが、彼女の緋色に良くあった白い花の飾りが―――。
試す価値はあるかもしれない。
「ユエルの様に愛されなかった事が、破滅を望んだ理由か……」
隠れたコンクリートブロックの影から、ヘイゼルの声が聞こえる。
ヴィエラはその言葉に眉を顰めた。
暗い研究所の片隅で、只一人、メンテナンス用のベッドに括らる日々。
それはまるで壁に掛けられた人形……。
ヴィエラの顔が憎悪に歪む。
「貴方に……何が解るの……」
調整途中で身動きすらできなかった彼女には、幾日も幾日も、視界に入るモニターの光景を見詰める事だけが慰めだった。
そこに映された白い外装パーツに薄紫色の髪の少女の姿。
彼女は絶えず研究員達に囲まれ、嬉しそうにカメラの前を行ったり来たりしている。
それが彼女の姉に当たる存在(モノ)だと、後に聞かされた。

私の姉……私と同じ機械として産まれたのに―――。

「君達は……そう、特別なマシナリーなんだ……マシナリーと言うよりも、キャストに近い存在なんだよ」
言い淀みながら眼鏡を掛けた若い研究員は言った。
「……MSC-00X-P……」
ポツリと呟くヴィエラの言葉に若い研究員は絶句し、息を飲んだ。
それは彼女達に与えられた形式番号……。
「……でも、"マシナリー"なのね……」
その形式の頭にあるMSと言う文字は、彼女達がマシナリーである事を意味している。
研究員は口を噤み、視線を落とした。
まるで懺悔をしているかのごとく……。
そうだ、この研究員が何をどう言い繕うと、自分達は疑う事なきマシナリーなのだ。
それなのに……それなのに……。

姉さんは私の存在を知らされていないようだったけど、私はいつも姉さんを見ていた。

他の研究員に囲まれ笑顔を浮かべている白い少女の姿を……。

何故、貴女は笑っているの?

何故、貴女だけ愛されているの?

何故、貴女だけ……何故、私だけが!

愛される事も、愛する心も持たされず、ただ破壊と殲滅を齎すためだけに産まれた。
言い知れぬ暗い感情が腹の底から、ふつふつと湧き上がる。
「私は人の心を持つ事を許されず、戦術と戦略と敵を憎み破壊する意志だけを与えられた! 人間の感情など知った事ではない! だけど……その私の"ココロ"を……お前達に理解できるものか!」
人(キャスト)でも機械(マシナリー)でもない、中途半端な存在の胸の内を誰が知る。
「ふっ……ざけやがって―――!」
ヘイゼルの胸に湧いた怒り。
だが、今は自分が熱くなる時ではない。
「だから、憎んだのかよ……!」
ヴィエラの姿を一目見た時から感じていた違和感。
彼女を構成する物の一つにして、最も似つかわしくない物……一か八かの賭けだった。
「……ならば、お前のその髪飾りは何だ!?」
「!?」
予期せぬ問いに、続けられていたヴィエラの攻撃がピタリと止む。
反応が有った! ヘイゼルは畳み掛けるように言葉を続ける。
「戦闘重視……ユエルと違って無駄の無い徹底した殺人特化の合理主義……キリングドールの鏡だよ。 ならば、その髪飾りは!?」
戦う為の戦機に飾り等必要では無い。彼女もそれを知っている筈だ。
だからそれは―――。
「お前が選んで付けた飾りじゃないだろう。だったら、それは誰が付けた!?」 
思いも掛けない言葉が、衝撃となってヴィエラの胸を貫く。
不意に眼鏡を掛けた気弱そうな男の姿が脳裏に浮かんだ。ヴィエラの開発に関わった若い研究者。暗い研究室に括られた自分の傍に気が付けば何時も居た男。
ある日、メンテナンスから目覚めると自分の髪に見慣れぬ髪飾りが付いているのに気付いた。不思議な思いだったが、その真意をヴィエラは尋ねようとしなかったし、男も語ろうとはしなかった。

髪飾りの意味。

研究所がSEEDに襲撃されたあの夜―――。
襲って来たSEEDと戦っている最中、不意を付かれたヴィエラを庇い、彼はSEEDに殺された。
戦闘用に作られた自分を庇う意味が何処にあったのだろう?
血の中に横たわる男をぼんやりと見下ろしていると、彼は今際の際にヴィエラに何かを告げた。
あれは何と言っていたか……。
束の間の邂逅に意識を馳せるヴィエラの耳にヘイゼルの声が届く。
「愛されていたんじゃないのか……お前も!?」
言葉が稲妻のように身体を駆け抜け、ヴィエラは目を見開いていた。
眼鏡を掛けた研究員の死に際の姿がフラッシュバックする。
あの時、彼は私に……。
「そんな……そんな事……私には解らないわよっ! だってそうじゃない! そんな感情理解できない。私は、そう言う風に作られたのだからっ!」
いやいやをするように後退りながらヴィエラは再び攻撃を再開した。
だが射出されたフォトン・エッジは、ヘイゼルが身を潜めるコンクリートブロックを大きく逸れる物が多くなっている。
その攻撃から先程までの精度が欠けていた。
ヴィエラは明らかに動揺している……今ならば!
ヘイゼルは身を隠したコンクリートブロックから飛び出すと、ヴィエラへ向かって駆け出した。
襲い来るフォトン・エッジの弾幕を掻い潜り、ヘイゼルは彼女の間合いに踏み込む。
「ぃっ…あああぁぁぁぁぁああああぁぁあああぁぁぁぁっ!!」
ヴィエラの叫びは意味を成していない。しかし戦機としての本能だろうか、混乱しながらも間合いを詰められたヴィエラは、武器をスライサーの形態から片手剣の形態に変形させてヘイゼルを迎え撃った。だが、その剣閃は支離滅裂で精細が無い。

それでも―――!

ヘイゼルは理性の無いヴィエラの攻撃を防ぐのに精一杯で、攻撃に転じきれない。
(及ばない!? 俺の力はこんな物か、クソッタレ!)
ヴィエラの切り上げにヘイゼルは大きく剣を弾かれた。勢い余って体勢を崩され動きが一瞬止まる。
(しま―――ッ!)
隙を付いたヴィエラの剣がヘイゼルを襲う。
次の瞬間、突然襲ってきた衝撃波がヘイゼルを襲った。
(なッ!?)
一瞬、ヘイゼルは何が起こったか理解できなかった。
ただ、その視界の片隅でヴィエラの身体が爆ぜ吹き飛んでいた。

《続く》

ユエル    「ちなみに、オリジナル新作の題名は決まってるみたいッスよ。何でも【注②クロニクル】ってタイトルらしいッス(゚∀゚)」
ヘイゼル   「タヌキの皮算用にならないと良いけどな(゚∀゚)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-37】

ユエル    「ついに明日は『PSPo2』の発売日ッスね~(゚∀゚)」
ヘイゼル   「発売日前に小説終わらせるッス~! ……とか言ってなかったか?」
ユエル    「♪~(゚ε゚) 」
ヘイゼル   「一ヶ月もなにやってたんだよ!(゚Д゚#)」
ユエル    「まあまあ……課題やってたり、風邪ひいたりもしてたみたいッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「10日以上もひきっぱなしって、どんだけだよ今年の風邪は……(;´Д`)」
ユエル    「ねえ……何とかは風邪ひかないって言うッスのにね~(゚∀゚)」
ヘイゼル   「ところでな、お前が買ったっていうPSPo2なんだけどな……」
ユエル    「あい? (゚∀゚)」
ヘイゼル   「ちょっとこれを見てくれ……」

ファンタシースターポータブル2 特典 Amazon.co.jpオリジナルピクチャーレーベル ファンタシースターポータブル2 [Video Game]
発送予定日:2009/12/2
→お届け予定日:2009/12/4

ユエル    「なん……だとッス……」
ヘイゼル   「konozama m9(^Д^)wwwwwww」
ユエル    「わかっていた……こうなることは……ただ特典につられて……わかっていた……わかっていた筈なのに……! 一縷の可能性に掛けて……コノザマ!」
ヘイゼル   「今、どんな気持ち? コノザマwwwとかいつも笑って見てたのに、自分がコノザマされて、ねぇ、どんな気持ち? (●)  (●) ♪ 」
ユエル    「クマうざいッスよ!ヽ(`Д´)ノ」

発売当日に遊べない事が確定しましたッスよ……トホホ……('Д`)

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-08 『Panther』

ヘイゼルのジートシーンとヴィエラのクレアセイバー。得物は共に片手剣同士の死闘(モータル・コンバット)。
斬りかかるヘイゼルの剣をヴィエラは苦も無く往なし、弾き返す。剣を合わせる毎にヘイゼルはジリジリと後退させられていた。
(クソッ、攻めているのは俺の方なのに……ならば!)
ヘイゼルは剣の柄を両手で握ると、裂帛の気合を上げ踏み込み、古流剣術よろしく袈裟切りに斬り付ける。
片手で力負けするのなら、両手持ちにすれば―――!
「フッ!」
ヴィエラはならばとばかりに逆袈裟で迎え撃つ。激しくフォトンの粒子を迸らせた双方の剣は、鍔迫り合いの力比べとなった。
(なっ! それでも押し返されるだと!?)
ゆっくりと、だが確実にヘイゼルの剣は押し戻されている。
ユエルと同様に彼女の身体能力もまたカスタマイズされているのだろう。力比べではヴィエラに圧倒的な軍配が上がっている。
口元に余裕の笑みを浮かべたヴィエラの表情が強張った。
脳裏に走った危険を知らせるアラートにヴィエラは剣を引き後退した。と、同時に今までヴィエラの上体があった位置をフォトンの光弾が走る。ビリーの仕業だ。
「おいおい、押されてるぜ? しっかりしてくれよ」
「クッ! ビリー、フォローが遅いぞ!」
「何て言い草なんだぜ!」
等と軽口を叩き合う二人をヴィエラは忌まわしそうに見詰めていた。
ヘイゼルとビリー、個々の戦闘力を比べれば、圧倒的にヴィエラの方が上回っているのは確かである。
だが、この二人がコンビネーションを取った時は厄介だ。
現にヴィエラは責め切れずにいる状態だ。
甘く見ていたか……ヴィエラは自分の分析の甘さに内心舌打ちしていた。
だが、それは覆せない過ちではない。
「ヒューマン風情が、やるわね……正直見くびっていたわ……」
分が悪い状況にも関わらず、ヴィエラ不敵な笑みを浮かべる。
「悪かったわ……だからお詫びに見せてあげる……私の最大出力(本気)をね―――!」
減らず口を……ヘイゼルがそう思った瞬間、ヴィエラは肩に羽織っていた緋色のケープを掴むと脱ぎ捨てた。
放り投げられ宙を舞う緋色のケープにヘイゼルが一瞬気を取られていると……。
「ヘイゼル!?」
緊張したビリーの声がヘイゼルを我に返した。
気が付くとヴィエラの姿が二人の目の前から掻き消えている。
「なッ、消え―――!?」
「ヘイゼル、危ねぇッ!」
ヴィエラを見失い驚いているヘイゼルをビリーがいきなり蹴り飛ばす。
「うおッ!?」
転びかけ、慌てて踏みとどまったヘイゼルの直ぐ脇を緋色の陰が高速で通り過ぎた。
衝撃で巻き起こった風圧がヘイゼルの顔を叩きつける。
「な、何だ!?」
「ヘイゼル、あっちだぜ!」
ビリーが叫び指差す方向に目を向けると、地上すれすれをフォトン粒子の尾を引きながら緋色の人影が滑空していた。
ヴィエラの腕部パーツ、ジェンケル・アームの肩部は取っ手の付いた籠状の形をしているが、その肩部に見慣れない球状の装置が有り、そこからフォトン粒子を噴出し滑空している。
「あれは……フォトン粒子を利用したスラスターなんだぜ!?」
ビリーが分析した通り、ヴィエラの腕部パーツの肩部には圧縮したA・フォトン粒子を推進力にするスラスターが取り付けられているようだ。
差し詰め、"フォトン・ブースター"と言った所だろうか?
キャストで有りながら上半身を覆うケープを纏っていたのは、それを悟られないようにする為だったのか!

挿 入 曲
―Panther―

「高速戦闘特化型……これが私に与えられた能力(ちから)!」
ヴィエラが高らかに告げる。
ユエルは法撃特化型として、腕部にテクニック発動体を内臓していた。
通常のキャスト体と違い、彼女達は能力に特化した機能を付加されているのだろう。
ヴィエラはスラスターの噴出孔を可動させ、左右への軸移動、急加速と急減速を繰り返し巧妙なフェイントを仕掛ける。
二人を中心に旋回するヴィエラに対し、ヘイゼルは片手剣を両手で構え身構えるが、相手との距離が有りすぎる事に加え、速度が速すぎるせいでこちらからは手が出せない。
(右か……左か……? クソッ、どこから来る!?)
ヴィエラはスラスターを下方に向け空中に飛び上がった。3m程空中へ舞い上がると身体を回転させ再び急加速し肉薄する。
(正面ッ! だが速過ぎるだろ、これは!?)
迎撃が間に合わない!
ヘイゼルは剣を正眼に構えて身を護るのがやっとの状態だ。
「遅いのよ、貴方達は!」
十字に打ち重なる二人の剣。
だが、ヘイゼルの身体は加速度が加わった一撃の力に抗いきれず、容易く弾き飛ばされる。
「がっ! かはッ!」
背中を地面に打ち付けた衝撃にヘイゼルは息を詰まらせた。
「俺に任せるんだぜ!」
ヘイゼルを薙ぎ倒し、高速で離脱するヴィエラの後ろ姿を追ってビリーが割り込む。
構えるのは彼が最も得意とする得物、フォトン・ライフル。
再び旋回軌道に戻ったヴィエラの姿を捉え、狩人(ハンター)の鋭い眼差しが彼女の影を追う。
訓練校時代、ビリーはキャスト以上と称された狙撃力の持ち主だ。
「捉えたぜぇッ!」
無意識に舌なめずりし、スコープ部分を改造して取り付けた照星と照門に捉えたヴィエラを狙い、引き金を立て続けに三度引く。
ヴィエラを狙って発射された三発の光弾は、全て彼女を掠める事無く通り過ぎた。
「は……外したぁ!? 駄目だ、速過ぎる。この俺が当てられないんだぜ!」
ビリーが素っ頓狂な声を上げる。彼が見せた表情からは、いつもの余裕が窺えない。
ビリーは自分の射撃力に絶対の自信を持っていた。その男がいともあっさり降参するとは……。
ヘイゼルの背中に冷たい悪寒が走る。
打つ手無し、状況は想像以上に深刻だ!
「悪いけど時間がないの……そろそろ終わりにさせてもらうわよ!」
終劇(フィナーレ)の予告を告げると、ヴィエラはもう一振りのクレアセイバーをナノトランサーから取り出した。双剣を携えたヴィエラが戦場を駆る戦乙女の如く飛翔する。
「お前の勝手を―――ッ!」
「ヘイゼル、危ねえんだぜ!」
告死の天使に抗おうとするヘイゼルをビリーが止める。
彼の判断力は正確だ。その力が言っている。ヴィエラのあの速度は常人がどうこう出来る物ではないと!
揉め合う二人にヴィエラが突進し斬り掛かる。
「うおッ!?」
堪らず二人は身を退くと、追撃を恐れ近場に積まれていた擁壁用CB(コンクリートブロック)の山に身を隠す。
CBに背を預け、苛立ったヘイゼルが声を荒げた。
「だがどうする! このままじゃ打つ手がねえぞ!」
ヘイゼルの焦りも尤もだ。ヴィエラとの戦闘が長引くほど、ユエルの置かれた状況は悪くなる。
時間が無いのは彼等も同様なのだ。
(止むを得ないんだぜ……)
暫し黙考し、ビリーがポツリと言い放つ。
「ヘイゼル……すまないが、ユエルちゃんの事……頼むんだぜ」
妙に真剣なビリーの口調にハッとし、ヘイゼルは彼の顔に目を向けた。
「ビリー? おい待て、何をする気だ!?」
ヘイゼルの言葉に答えずに、ビリーは遮蔽物の陰から飛び出していた。
「ビリー!」
「ヘイゼル! お前は来るんじゃない!」
ビリーはライフルを構え、無防備なその身をヴィエラに晒した。
(何をしている!? それじゃあ狙ってくれと言っているような物だぞ!)
援護しなくては! ヘイゼルがナノトランサーからハンドガンを取り出そうとするのを察し、ビリーが叫んだ。
「狙いが逸れる、余計な事はするんじゃねえぜッ!」
「しかし!」
「黙って見てろ! 活路は……俺が開いてやるんだぜ!」
ライフルで狙いを定めるビリーに対し、フェイントを駆使して攪乱を図るヴィエラだったが、彼が誘いに乗ってこない事を察した。
(誘いに乗って来ない……まさか……?)
高速戦闘時のヴィエラの攻撃方法は急接近しての一撃離脱である。極端な事を言えば、近付かなければ相手を攻撃できない。
そして攻撃する瞬間はフェイントも取れない無防備な状態なのだ。
ビリーが狙っているのは、その一瞬の隙を狙ってのカウンター攻撃なのだろう。
ようは、ヴィエラの速さと、ビリーの精密さとの勝負だ。
(チキンレースと言う訳ね……良いわ、その誘い乗ってあげる。どのみち私も勝負を長引かせるつもりは無いのよ!)
ヴィエラも意を決し、ビリーの誘いに乗る事に決めた。
一方、ヘイゼルは迷っていた。
このまま自分はビリー一人を放って置いて良いのか……だが二人の勝負に水を差せば、ビリーの折角の機会を奪う事になるのも理解している。
(クソッ、俺は……どうすれば……!?)
ヘイゼルが迷っている間にも状況は進んでいく。ヴィエラは小細工のフェイントを止め、真っ直ぐにビリーに向かって飛翔する。対するビリーは、その場を移動せずに絶えずヴィエラを正面に捉え、真っ向勝負でヴィエラを迎え撃つ気だ。
(避けていては、彼女に一発食らわす事は出来ないぜ……!)
ヴィエラが攻撃に移る瞬間は、その軌道を変更出来ない筈! チャンスは一度きり、肉を斬らせて骨を断つ!
それがビリーの狙いだった。
「今の俺、最高にロックだろ?」
口元にニヤリと笑みを浮かべ、ビリーが引き金を引く。
ヴィエラが剣を振り下ろそうとする瞬間、ビリーのライフルから発射された光弾がヴィエラの左肩のスラスターに命中した。
フォトン光弾の直撃を受け、片側のスラスターを破壊されたヴィエラは、コントロールを失い軌道を保てない。
「なッ!?」
振り下ろしたヴィエラの剣は狙いを反れたが、ビリーの身体を浅く薙いでいた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

推進力のバランスを失い、自身のコントロールを保てなくなったヴィエラは大きく弧を描いてビリーから離れて行く。
途中、ヴィエラの身体は地面に叩きつけらながら、砂煙と火花を上げて地面を引き摺り、転落防止用のフェンスを薙ぎ倒して下の階層に落ちていった。
直撃とまでは言わないが、ヴィエラの斬撃を受けたビリーはもんどり打ってうつ伏せに倒されている。地面には彼の身体から流れる血が広がり始めていた。ビリーのシールドラインはヴィエラの攻撃を相殺しきれなかったらしい。
(何て事だ……!)
ヘイゼルはヴィエラの姿を見送り、躊躇しながらもビリーの元へ駆け寄ろうとした。
「おい! ビリー、大丈夫か!?」
「来る……な! ヘイゼル、お前は……ヴィエラを追うんだ……ぜ!」
ビリーは僅かに顔を上げると、駆け寄ってくるヘイゼルを力を振り絞って制する。
「し、しかし!」
ビリーの必死の形相に気圧され、ヘイゼルは脚を止めていた。
「あれ位で終わるようなら……苦労は無いんだぜ……」
ビリーの言う通り、彼が破壊したのはヴィエラのスラスター、それも片側だけなのだ。
「お前は彼女を追え……! 活路は開いた……後はお前が……決着を付けるんだ……ぜ」
ビリーは言いながら痛みに喘いでいる。
「だがッ!」
「お前が行かなきゃ、誰がユエルちゃんを救えるんだぜ!」
渋るヘイゼルに苛立ち、ビリーが力の限り叫ぶ。その迫力にヘイゼルは二の句を告げられなかった。
「俺の事なら……気にする事ないんだぜ……」
ビリーはナノトランサーから右手に何かを取り出した。遠目な上に指の間に隠れ、よく窺えなかったがそれはメイト系の回復薬のようだ。
「身体が回復したら俺も後を追う……だからお前は……先に行くんだぜ……彼女が回復する前に! 俺がこんな怪我までして作った機会……不意にしたら承知しねえんだぜ!」
ビリーの言葉を受け、一瞬瞳を閉じたヘイゼルは大きく息を吸い込むと覚悟を決めた。
「解った……お前が作ったこの機会、無駄にはしない!」
「ああ、頼んだぜ……だが、俺の出番も残しておいてくれよ……」
「出番が欲しかったら、早く俺を追って来るんだな」
ヘイゼルとビリーは互いの顔を見詰め、不敵に笑い合う。ヘイゼルはビリーに背を向けると、ヴィエラが落ちた下の階層へ向かう階段へ向かって走り出した。その背中を見送ると、ビリーは苦痛に顔を歪めながら身体を仰向けに回転させた。
「イテェ……んだぜ……」
胸から腹部へ走る服の裂け目には夥しい血が広がっている。
ビリーは右手を顔の位置まで持ち上げるとゆっくりと広げた。右手に収まっていたのは彼がナノトランサーから取り出した、"アンチメイト"が握られている。
アンチメイトはメイト系の回復用医療キットの中でも、毒や感染症といった身体の状態異常を正常に治す為のアイテムだ。だがそれには負傷して負った傷を治療する効果は無い。
「……非番の時とはいえ、備えはしておくんだったぜ……お前は大丈夫か? ……ヘイゼル……」
ビリーは苦笑を浮かべながら独り言のように呟いていた。

《続く》

ユエル    「今回は挿入曲付で読んでもらえると嬉しいかもッス!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「痛いことすんなよ(;´Д`)」
ユエル    「ちなみに『Panther』はARMORED CORE4 オリジナルサウンドトラックの4曲目に収録されている神曲ッスよ(゚∀゚)」

↓ここの一曲目に流れるやつッスね
【作業用BGM6】ARMORED CORE4
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2171050

ヘイゼル   「ニコ厨おつ!」

AC4 OST - Panther
http://www.youtube.com/watch?v=tz7HtXQzF7g

ユエル    「じゃあ、ようつべなら……」
ヘイゼル   「そう言う問題じゃねえ!(゚Д゚#)」
ユエル    「実際、車の中でこのCD掛けちゃうと、アクセルを踏み込みたくてウズウズしちゃうこと間違いないッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「やめて! 危険運転!Σ(´Д`lll)」

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pspo2体験版とPhantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-36】

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メリッサ    「こんばんは、今日はPSPo2の体験版をリポートするわね」
ヘイゼル   「誰―――!? Σ(´Д`lll)」
メリッサ    「次の小説の主役として、いずれは、このブログの主役を奪う者です(゚∀゚)」
ヘイゼル   「 Σ(´Д`lll)」

PSPo2ベースの小説に登場(予定)するヒロイン『メリッサ・HQ』です。
漠然としかプロットがまとまっていないので、GOD EATER(PSPのハンティングACT)の小説に変わっちゃうかもですが!(゚∀゚)
そんな、どうでもいい事は置いておいて、遂にPSPo2の体験版が配布されました!
まさかの11月1日24時配信でびっくりしましたッスけど、無事DL終了!
これがPCで出来たらどれだけ良かったか!ヽ(`Д´)ノ
……って感じの大満足な出来ッスね!
武器やアイテム等は一作目準拠のドロップ式。
目新しくなったのは、その戦闘!
やり応えが感じられます。
私は初回のディ・ラガンは倒せませんでした。 (ノ∀`)
おいこれつよす……。
まさか本当だったとは……(;´Д`)
多脚に至ってはミッション所要時間 【71分】 と言う記録を打ち立てました!(゚∀゚)
成長の方法もスキル、アビリティを自分で組み合わせキャラを育てる感じに変化。
まさに『RPG』って感じです(゚∀゚)
欲を言えば戦闘が『デモンズ』くらいに楽しかったら……て思いましたが、携帯機のRPGとしては破格の出来だと思います。
カッコイイ&可愛いキャラが高い自由度で作れるのが今作品の真骨頂!
既存のゲームのキャラメイキングに満足できなかった方。
ARPGに飢えている方。
全国の仲間達とマルチプレイがしたい方は是非、チェック!

2009年12月3日発売予定ですよー!

ヘイゼル   「営業臭えな! 今回! (゚Д゚#)」

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ちなみに私も居るッスよ!(゚∀゚)
続いてオマケの小説をどうぞ!

ヘイゼル   「いや、小説が本編だろう!?(゚Д゚#)」

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-07 『裏切り』

ヘイゼルとヴィエラの決闘に割って入ったのは盟友ビリー・G・フォームだった。

頼れる相棒の登場に、自分達の絶対優位を確信したヘイゼル・ディーン。

だが、その様子をヴィエラ・プロトは嘲笑う。

ヘイゼルに向けられるビリーの銃口。

一発の銃声が無人の廃墟に木霊し、積み上げた繋がりを無慈悲に断つ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

発射されたフォトン光弾は、ヘイゼルが握っていたジートシーンのフォトン・エッジ(フォトン粒子で構築されたブレード部分)を撃ち抜き、衝撃で手からすっぽ抜けた剣の柄が空しく地面に落ち、使い手を失った剣からフォトン・エッジが消失した。
「ビリー……貴様は……」
ヘイゼルは痺れの残る右手を押さえ、自分の額を狙って突き付けられたビリーの銃口を見詰め言葉を詰まらせた。
「ああ、裏切った……だが、お前が悪いんだぞ? お前にユエルちゃんは幸せに出来ん」
何時もと変わらぬ表情と口調でビリーはヘイゼルを糾弾する。
「何時だったか、お前は"自分の絶望に付き合う必要は無い"と言っていたよな?」
思い出す。
ディ・ラガン討伐ミッションへ向かう道すがら、ヘイゼルは確かにそんな事を言ってビリーを怒らせた記憶がある。
「その言葉に従わせて貰うぞ……ユエルちゃんも、そしてアリアもお前には任せておけない」
ヘイゼルがビリーの真意を図ろうとして、無言で彼の顔を睨んでいると、ビリーはふと溜息を吐いた。
「解るか、俺の気持ちが……? お前はいつも、そんな調子で世間を渡って敵を作って……なのに何時だって俺が望む者達は、お前を求めた……甲斐の無い話しだろう? お前の尻拭いをして良い顔をする俺は、滑稽な只の道化(ピエロ)だった!」
ヘイゼルの額に銃を向けたまま、ビリーは顔を歪めて吐き捨てた。
「此処に来る途中でアリアに会った……詳しくは解らないが、彼女泣いてたぜ。嫉妬に任せてユエルちゃんに酷い事を言ってしまったと後悔していたよ……。だが、その原因を作ったのは、他人の気持ちを顧みない、お前自身だ」
ビリーが顎でヴィエラを示す。
「可哀相にアリアは、あの女(ヴィエラ)に良い様に利用されちまったのさ。だからこの際言っておくぜ、お前はそう言う所を直せよ……でないと周りの人間が傷つく事になるんだぜ……」
ビリーの言葉に返す言葉を失くし、ヘイゼルは俯いていた。
全てがヴィエラの策略によって仕組まれ、俺達は彼女の思うままに踊らされていたのか……。
他人の心の隙に付け込む魔性の女……ヴィエラはビリーをも陥れたと言うのか!
「なあ、約束は守ってくれるんだよな?」
ビリーが顔をヴィエラに移し問い掛けると、彼女は微笑んで頷いた。
「ええ、彼を始末したら約束通り、姉さ……ユエルは貴方にあげるわ」
微笑みは偽りの笑み。
ユエルの破滅を望むこの女が、彼女を解放する筈が無い。
「ビリー止せ! この女がそんな条件を飲む訳が……!」
「黙れよッ! お前の言う事に振り回されるのは、いい加減ウンザリなんだよ!」
だが聞く耳を持たないビリーは、激しい剣幕でヘイゼルの言葉を途中で遮った。
返す言葉も無いヘイゼルに、憐憫の余裕さえ見せてヴィエラは問う。
「残念だったわね……希望を断たれた感想はどうかしら?」
「一つ……聞かせろ……」
万策は尽き、虚ろな表情をしたヘイゼルの言葉にヴィエラは一瞬吹き出していた。
「あら、『冥途の土産』ってやつかしら? 良いわよ、知っている事なら教えてあげる。でも変なフラグは期待はしない方が良いわよ。答え終わったらちゃんと始末させて貰うから」
獲物を嬲る猫の様に余裕を浮かべるヴィエラにヘイゼルは訊ねた。
「お前達の正体は結局なんなんだ……何の為にこんな事をする……?」
ハリス・ラブワード邸を訪れ、ユエルと彼女を取り巻く謎は断片的に知る事は出来た。だが、まだ解らない事がある。
ユエルを姉と呼ぶヴィエラと彼女達の正体、ヴィエラが言う『復讐』の理由が……。
「……私達はエンドラム機関の手により、SEED殲滅戦用次世代SUVの管制機として創られたの―――」
勝利者の余裕からか、謳う様にヴィエラが説明を始める。
「そのコンセプトはSEED汚染生物の群れを強襲し、敵陣の中央にてSUVを召還、SEEDを殲滅する事が目的の言わば特攻機……。当初は、その管制役をキャストが果たす予定だったのだけど、キャストを特攻機として運用する事には機関内でも倫理上、人権上で問題があった……。
そこで考えられたのが、キャストではなく、マシナリーでもない、他に隷属しない人格(パーソナル)を持った機人(人型マシナリー)つまり私達の存在よ。先行試作体(プロトタイプ)として創られた姉さんの素体と、私達の心臓部である『ハイブリッド・A・フォトンリアクター』(HAFリアクター)の開発は二分化され、同時に進行されたのだけどHAFリアクターの開発は難航したわ。
そのお陰で、先に完成していた素体の姉さんは研究所で生活し、人格(パーソナル)の初期教育を受ける事になったの。でも、それが間違いの始まり……研究者達は姉さんの人格教育を誤った。甘やかし情を掛け過ぎたのよ」
無知故に純粋で無垢な少女に、閉塞的な環境下に置かれていた研究者達は安らぎを感じたのか、優しさと慈愛を持って接し、ユエルの頭脳体は、その愛情を受け人格を形成した。
「……その結果、完成したユエル・シリーズのプロトタイプたる姉さんの人格は、戦機としては不向きになっていた……。傷つく事を恐れ、傷つける事を恐れる欠陥の戦闘人形……。性能を活かしきれない機械なんて失敗作よ。そんな物を機関の上層部に報告できる訳が無い。こんな状態では姉さんは廃棄を言い渡されるのは目に見えていたわ。そこで研究員達は大慌てで姉さんの頭脳体に、隷属(スレイブ)となる戦闘用の副人格を組み込んだの。それが『デュアルブート・システム』。状況により、戦闘用のプログラムを起動する事で、姉さんの戦闘スペックを完全に引き出そう考えた。それでも、姉さんは単なるマシナリーと変わらない戦闘効果しか出せなかったわ。エンドラムの上層部がそんな物で満足する筈が無かった……でしょう? 彼等の求めていた物は、従来のマシナリーやキャストを凌ぐ戦闘力を持つ存在(モノ)だったのだから……。
上層部からユエル・シリーズの更なる改良を迫られた研究員達は、今度は別な開発コードを用いて上層部の希望に叶う戦機を創り出そうと考えた……。優しさや愛らしさ等の余計な物は必要ない。求めたのは完全無欠の戦闘人格を持つモノ……開発コード『Vieira・Proto-type』(ヴィエラ・プロトタイプ)……それが私よ!」
ヴィエラはその事実を嫌悪するように吐き捨てた。
「私の完成後間も無くして、エンドラム機関は一連のSEED騒動の責任を追及され解体された。残党と化した私達は郊外にある製薬会社にカモフラージュされた研究施設に身を隠す事になったの……。そして運命の日……研究所がSEEDに襲撃された、あの夜……! 姉さんはSEEDの群れを一掃する為にL・O・V・Eを召喚し、結果、SEEDの群れと共に研究所は壊滅したわ。多くの研究員達を巻き添えにしてね!」
ヘイゼルは彼女の言葉に息を飲んだ。ビリーも眉を顰めている。
ヴィエラがユエルを人殺しと罵った意味がやっと解った。
それが彼女の失われた記憶……背負った罪なのか―――。

頬を撫でる熱い風、崩壊したコンクリートの残骸、夜空を照らす緋色の炎、黒煙に煙る闇色の空……。

「姉さんの設計者である研究員は、自らが招いた結果に放心する彼女を連れ、壊滅した研究所から脱出すると、姉さんのメモリーを操作し、その罪の記憶を封じ開放した……戦機(マシナリー)としてではなく、人(キャスト)として生きて行けるようにと……」
ヴィエラの顔が歪む。その表情は泣き顔なのか笑っているのか解らない。
「なのに……なのに私は只一人、研究所に残された……。エンドラム機関が解体された今となっては、残党となった私達に帰る場所等無い……。私は理解した! そう……私は不甲斐無い姉さんの代わりに創られた完全なる戦機……。只、闘う為だけの機械(マシナリー)! 愛される事も……愛する事も知らない殺戮人形(キリングドール)! 私が……私だけが―――!」
感情が爆発したようにヴィエラは高らかに笑い声を上げた。
絶望と怒りと憎悪と妬み、それらが入り混じった複雑で哀れな狂気の哄笑。
歯車は全て揃った。
不協和音を上げて軋んでいた真実が動き出す。
解き明かされた真実を紡ぎ合わせ、ヘイゼルは全てを理解した。
エンドラム機関で博士が作った存在(モノ)。
L・O・V・Eと呼ばれる次世代SUVと、ユエルとヴィエラが生まれた理由。
愛されて育ったユエルと、愛されず……いや、愛される事を生まれた時から奪われていたヴィエラの嫉妬と憎悪。
「同じ戦機として生まれたのに、このままでは公平じゃないでしょう? だから私は正すの、この理不尽を全てを壊す事でね!」
エンドラム機関も、SEEDも全く関係が無いのだ。
本人には自覚が無いのかもしれない。だが、この戦いは一人の女の嫉妬が生み出した八つ当たり的な復讐劇だったのだ。
蓋を開けてみれば何とも志の低い戦いだ。
(俺も、ユエルも、アリアも、ビリーも……こんな……こんな事の為に……利用されたのか……)
「ハハハ……クハハハハハッ……!」
ヘイゼルは堪えきれずに思わず笑い出していた。
「ショックで壊れたのかしら? 本当に人間の心は解り易くて脆い事……」
ヴィエラはヘイゼルの笑いを狂人の哄笑と受け取った。
「何が可笑しい?」
ビリーも怪訝そうに眉根を寄せながら、銃口をヘイゼルに突き付ける。
「何って……解らないか? お前の芝居がだよ」
「完璧だと思うが?」
額を片手で押さえ、笑いを噛み殺すヘイゼルに対しビリーが顎に手を当て首を捻る。
何かがおかしい……そんな雰囲気を感じ取り、ヴィエラが僅かに眉を顰めた。
「そんな余所余所しい喋り方をしておいてか? この"ham actor(大根役者)"」
「言ってくれるんだぜ、相棒!」
不意にヘイゼルが身を翻し、身体を反転させビリーの背後に回り込む。ヘイゼルの陰から姿を見せたビリーの銃口はヴィエラに向けられていた。
「なッ!?」
一瞬の出来事にヴィエラは、そう声を上げるのがやっとだった。
ビリーのハンドガンから放たれた三発の光弾。ヘイゼルは落としたジートシーンを掬い取ると剣を構えてビリーの横に並び立った。
ヴィエラは大きく仰け反りよろけていたが、何とか踏ん張り持ち直す。
三つの弾痕が空けられたヴィエラが羽織る緋色のケープが大きく翻っている。
「全弾かわした!? やるんだぜ!」
至近距離からの銃撃をかわされたのを知り、ビリーは賞賛の口笛を吹いた。
ヴィエラが目を見開き歯噛みする。
「お前達は何故―――!?」
こんな逆転は有り得ない、想定すらしていない。ヴィエラは予想外の出来事に混乱していた。
彼等の行動はユエル・G・トライアにも監視させ把握していた。二人が口裏を合わせていた形跡は無かった筈だ。
「付き合いも長いとな……こいつが何か企んでる事くらい解っちまうのさ」
それが嫌だとでも言いた気にヘイゼルは苦笑する。
(だからアドリブで仕組んだと言うの!? 馬鹿な……有り得ないわ!)
ヴィエラはビリーに顔を向けて問う。
「お前も……ユエルを手に入れたくは無かったの!?」
観察からビリーがユエルに好意を抱いている事を理解したヴィエラは、ビリーに接触すると言葉巧みに彼を唆(そそのか)したつもりだった。
「男には愛より勝るものがあるんだぜ……他人の心理を利用するように学んだのかい? 大した心理作戦だが、全ての駒が自分の言うとおりに動いてくれると思ったんだぜ?」
鼻先で右手の人差し指を振り、舌を鳴らしてビリーは笑う。
「甘かったな、俺達はロッカーだ! 常識に逆らい続ける魂だッ! 人様の書いた筋書きで踊るのなんかクソ喰らえなんだぜ!」
「こいつと違いロッカーを名乗る気は無いがな!」
ヘイゼルとビリーは、それぞれ剣と銃を構えた。

さあ、反撃といこうじゃないか―――!

《続く》

ユエル    「気付いたら最近引き篭もってる事に気付いたッスよ! Σ(´Д`lll)」
ヘイゼル   「外で遊べ! Σ(´Д`lll)」
メリッサ    「……いや、仕事を探しましょうよ(;´Д`)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-35】

ユエル    「光が見えてきました…」
ヘイゼル   「あ? (;´Д`)」
ユエル    「遂に家の地域にも『フレッツ光』が入る事になったッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「ADSL8Mから間すっ飛ばしてか! いきなりだな! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「これでもう、『ラグい』とか『ふぐすま(笑)』とか『無職』とか馬鹿にさせないッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「無職は事実じゃねえか! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「回線工事は本日12日! つまりもう終わってるッス! 早速光の力を拝ませて貰うッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「…あれ? 繋がらねえぞ…アカウントとパス入れろってさ…」
ユエル    「……そんなの知らないッスよ?」
ヘイゼル   「はあっ!? 一番大事な所だろ、ちゃんと管理しとけよ!?(゚Д゚#)」
ユエル    「忘れちゃったッスから仕様が無いじゃないッスか! 取り合えずNTTに電話してみるッスよ!」

―――電話中―――

ユエル    「もしもし? あの光回線のアカウント忘れちゃって…え? 9日に新しいの送ったッスか? まだ届いてないッスけど…え、メール便? …これだから田舎はッス!(#゚Д゚)」
ヘイゼル   「いや、田舎関係無えし! お前のミステイクじゃねえかッ!(゚Д゚#)」
ユエル    「光開通のネタでブログ書こうと思ってたのに、ネットに繋がらないって…こんな事なら昨日の内に小説更新しておくんだった―――ッス! Σ(´Д`lll)」

こんな感じで光回線に変わったのに、繋がるのに今まで掛かりましたッスよ…('A`)
ネットに繋がらなくなって初めて解った、自分のネット依存度…ネットが無いと何も出来ないとか…怖ろしいッスね~(゚∀゚)

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-06 『L・O・V・E』②

「全兵装オールグリーン 『L・O・V・E』 ……起動」
終末を告げる審判者の如く、冷徹なユエルの言葉が響き、鉄の巨人の単眼がゆっくりとヘイゼルとヴィエラを見下ろす。
その身に纏う圧倒的な破壊と破滅の力。
背筋を走る悪寒、総毛立ち冷たい汗が滲む。ヘイゼルは無意識にたじろいでいた。
不意に何かが空を切り裂く風切り音がし、直後L・O・V・Eの肩口で爆発が起こった。
衝撃に揺らぐL・O・V・Eの巨体。だが、爆発の瞬間、衝撃を中和するフォトン・シールドのエフェクト(効果)が発生していた。爆発は堅固なシールドラインに阻まれダメージとはなっていないだろう。
(今のロケット弾は!?)
ヘイゼルが顔を移すと、そこには短い四脚に亀の甲羅に似た鈍重な胴体。その両側に、4連ロケットランチャーを備えた5体のマシナリーが迫って来ていた。
軍用マシナリー『GSM-05(シーカー)』を改良した軍警察の都市警備マシナリー(シティ・ガーダー)『GSM-CG-05C(クルゼード)』だ。
(こいつ等、何時の間に……!?)
『市民の方は下がって下さい……。所属不明のマシナリーに告げる。大人しく武装を解除し投降せよ! 繰り返す―――』
ガードマシナリーはヘイゼルとヴィエラが所属不明の武装マシナリーに襲われていると判断したようだ。L・O・V・Eの威容にも臆する事無く、マニュアル通りに投降を呼び掛ける。
(騒ぎ(戦闘)を嗅ぎ付けて調査に来たのか……だとしたら……不味い!)
「新たな敵影を確認……」
L・O・V・E内から聞こえる、くぐもったユエルの声にヘイゼルはハッとした。
ユエルは見比べている……先程まで交戦していたとは言え、今は剣を下ろし攻撃の構えを取っていないヴィエラと、臨戦態勢を取っているマシナリーを……。
「処理の優先度を変更……マシナリーの殲滅を優先……」
「なッ!? 止せ、ユエルッ!」
状況から判断しマシナリーの危険度を優先したL・O・V・Eを、ヘイゼルが止めようとするが遅かった。
「排除開始―――」
左肩のグロームバスター・エクステンションが展開し、砲口がマシナリーに向けられる。気配に反応し動き出したマシナリーだが、一瞬早く放たれたフォトンメーサーが真横に薙ぎ払われ、行動の遅れた二機を巻き込んだ。高熱の熱線が胴体部を焼き切る。ロケット弾の推進薬が誘爆し爆散した。
ヘイゼルは目を見張った。この威力、グロームバスターを超える出力だ。同時にラフォン草原で胴体を真っ二つに焼き切られたディ・ラガンの死骸を思い出す。
(あれも……この機体なら可能だったと言う事か……だが、ユエル……! アレは本当にお前が……!)
いつも笑っていた白い少女……その姿と、ラフォン草原の惨状が頭の中に交差する。
二機の仲間を失ったマシナリーは、慌てて小型のフォトン機関砲を乱射しながら散開し、それを追ってL・O・V・Eがヘイゼルとヴィエラの頭上を越えて跳躍する。巨体とは思えない身軽さだ。
「ちょ、待て、ユエル―――!」
着地したL・O・V・Eが起こした地響きに我に返り、ヘイゼルは後を追おうとすが、それを阻むようにヴィエラが立ちはだかった。
「邪魔だ退け!」
ヘイゼルはジートシーンの切っ先をヴィエラに突き付けた。焦りとイラ付を押さえられない様子のヘイゼルにヴィエラは小馬鹿にした視線を向けている。
「そんなに慌てないで……L・O・V・Eは従来のSUVとは違って、そのコアたる姉さんが持つA・Fリアクターの力により、長時間の運用が可能なのよ。そして、そのスペックはマシナリーを遥かに凌駕している……。あれが束になったところで歯牙にも掛ける姉さんじゃないわ……でもね―――」
ヴィエラが剣を持たない左手を口元に当ててクスリと小さく、だが嫌味に笑う。
「積載された実弾は無限じゃないし、A・Fリアクターにだって限界がある……襲い掛かる火の粉を払い続けても、また次の火の粉が現れるわ……」
ヴィエラに言われなくとも、それは解っている。だからヘイゼルはユエルを止めようとしたのだ。ガードマシナリーを全滅させれば、軍警察も黙ってはいまい。次々と増援を派遣する筈だ。
「圧倒的なスペックの差を物量で押し切られたその時、姉さんはホルテスシティを震撼させた『悪魔の兵器』として破壊されるのよ!」
ヴィエラの笑いが変質する。下弦の月のように薄く狂おしい嘲りの笑顔に……。
「テメエ……始めから、それを狙って……」
ヘイゼルは奥歯を軋ませながらヴィエラを睨み上げた。
「折角用意したこの舞台。終焉(フィナーレ)は派手でなくては意味が無いわ! それに犯した罪を償わないのは公平じゃないでしょう? 人殺しという咎の報い……しっかり受けて貰わないとね」
「させないと言ったぁ―――ッ!」
雄叫びを上げ、ジートシーンを手にヘイゼルが切り掛かり、ヴィエラはクレアセイバーで迎え撃つ為に踏み込む。
二人が交錯する瞬間―――!
足元にフォトンの光弾が着弾し弾ける。
二人は同時に反応し、後方に跳躍すると剣を構え互いを制しながら弾道の軌跡を目で追った。
狙撃手は一段高い階層の塀越しに逆光を受けて立っていた。
逆光の中でも目立つ突き出した特徴的なリーゼントヘアと長身のシルエット………。
見覚えのある影に、ヘイゼルは思わず、頼れる相棒の名を叫んでいた。
「ビリー・G・フォーム!」
「手を貸そうか?」
逆光を背に受けたビリーが不敵に笑うと、塀を飛び越えて降りる。
ヘイゼルはヴィエラに視線を戻した。背後からビリーのローファーが立てるカツカツと規則正しい足音が近付いて来る。
思わぬ加勢の登場にヘイゼルはニヤリとほくそ笑んだ。
「これで二対一だな」
ヴィエラの戦闘力は正直脅威だ……だが、俺達はガーディアンズ訓練生の時からのパートナー。二人で一緒に様々なミッションをクリアしてきた……何時だって、今だってだ! 二人が揃えば負ける事は無い!
「そうね、二対一ね……」
余裕を覗かせるヘイゼルを、ヴィエラは憐憫すら含んだ同情の面持ちで見つめ妖しく微笑む。
その余裕……何故―――?
疑問を抱くヘイゼルの真後ろから「カチリ」と銃の安全装置を解除する音が聞こえた。
「……」
嫌な予感に囚われ、ヘイゼルがゆっくりと振り向く、にこやかにビリーが笑っている。
「悪いな……これもユエルちゃんの為だ」
彼の銃口はヘイゼルに向けられている。
一発の銃声が、無人の地に木霊した。

《続く》

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-34】

ユエル    「今月から暫くは無職になりましたッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「イキイキしてんな…その調子でペース上げて頑張ってくれ(;´Д`)」
ユエル    「今まで、かなりスローな更新になっちゃったから、時間のある内に追い上げるッスよ! PSPo2を舞台にした次回作も何となく浮かんでる事だし(゚∀゚)」
ヘイゼル   「本編やっつけてからにしてくれよな…って、何でPS3にデモンズ入れてんだよ!(#゚Д゚)」
ユエル    「( ゚д゚ )……ボーレタリアよ! 私は戻って来たッスよ―――!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「そっちに戻ってんじゃねえよッ!(#゚Д゚)」

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-05 『L・O・V・E』①

近接戦闘に持ち込みたいヴィエラと、中・遠距離でのテクニック戦を維持したいユエル。両者は互いのイニシアティブを掴む為、激しく牽制し合っていた。
「H・A・Fリアクター、フルドライブ……ラ、ラ、ラ、ラピッド・バータ」
ユエルがヴィエラ目掛けて右腕を突き出す。右腕部のパーツに内蔵されたテクニック発動媒体『フォトン・スフィア』から、H・A・Fリアクターにより生み出された、有り得ないほど高出力の氷系基本法撃術『バータ』が連射されヴィエラに襲い掛かる。
迫る氷結の法撃を一瞥し、ヴィエラは鼻で笑う。
「学習力がないわよ、姉さん。誘導性も無い直進弾を何発撃ったところで、私を捉える事など出来ないわ!」
アクロバティックな側転回避で、地を這い迫る氷結弾を全て交わしきると、ヴィエラはユエルとの距離を詰める。
「リアクター、フルドライブ……グラン・ラ・バータ」
ユエルを目指し直進するヴィエラの周囲に巨大な氷塊が出現した。ヴィエラはそれを目で追う。
ラ・バータの効果に似てはいるが、具現した氷塊の大きさは通常のラ・バータの比ではない。
「潰せ……」
抑揚の無いユエルの言葉で氷塊が一斉にヴィエラ目掛けて襲い掛かる。ぶつかり合った氷塊が轟音を轟かせ、砕けた氷塊は一塊に圧着し、破片となった小さな氷の塵が細氷(ダイヤモンドダスト)となって周囲を漂う。
戦場は一転して静まり返った……。
ヴィエラは凍結効果により行動を封じられたのか? いや、それ以前に、これだけの質量に潰されればただでは済むまい。

キシリ……。

と、氷に亀裂が走る微かな音がしたのは、その時だ。
ユエルが氷塊に走った亀裂に注意を向けた瞬間、氷塊の中央部が爆砕する。
「ハッハ―――ッ!」
砕けた氷の中から、双手剣『ツインクレアセイバー』を水平に構えたヴィエラが高笑いと共に飛び出して来た。双手剣用フォトンアーツ『アサルト・クラッシュ』か!
だが、あの質量に潰されて無傷だと!? いや……違う、ヴィエラは氷塊が自分に向かって集束する寸前、後方に飛び退き逃れていたのだろう。攻撃の為、氷塊が死角となったのは誤算だった……ユエルの法撃は彼女に掠りさえしていない!
遠距離と中距離の攻撃を制され、ユエルはクロスレンジの間合いを余儀なくされる。二人の戦いは明らかにヴィエラが優勢だ。
A・Fリアクターを用いたテクニック・バースト(増幅)をしている余裕は無い。
「ギ・バータ!」
止む無く、ユエルは通常威力でテクニックを放った。
術者を中心に放射状に氷柱を具現させ目標を刺し貫く……筈のギ・バータもヴィエラに難なく見切られる。それが足止めにすらなっていない状況に、遂にユエルは戦術を変えた。
「ウェンディゴ・ギア……展開」
凍気を纏ったフォトンの刃がユエルの指先を覆い、凍てつく鍵爪と化す。氷魔の双刃が双手剣の斬撃を受け止めた。
「近接戦を挑む気? そう言えば姉さんはウォーテクターだったわね……だけど、近接戦特化型の私と戦り合おうなんて愚かよ!」
「!?」
ヴィエラが肩に羽織る緋色のケープが揺れた……と、思った次の瞬間、彼女の背後で発生した激しい閃光に、ユエルの視界(メインカメラ)が焼かれる。その光の色から推測するとフォトン粒子の閃光だったかもしれないが、続いて襲ってきた激しい衝撃がユエルの意識を吹き飛ばした。
身体が中に浮いた浮遊感の後、ユエルの身体は背中から地面に叩き付けられ激しく転がった。衝撃に全身の強化骨格フレームが軋み悲鳴を上げる。
過負荷(ダメージ)により、頭脳体を駆け巡るエラーの嵐、様々な情報が錯綜し混乱する。何が起こったか理解出来ない。状況が摘めぬまま、それでも戦闘を続ける為、身を起こそうとするが、間接部のアクチュエーションモーターが機能を回復せず、虚しく空回りするだけで言う事を聞かなかった。
必死に最適化を行い、身体機能の回復を図っていると、「ドスン」と言う重い衝撃が腹部を貫き、熱い塊が痛みのデータとして伝播された。
焼失した視界が回復し始め、現況を確認するユエルの目に、腹部に突き刺さったフォトンの刃が映る。その傍らに、腹部を貫いている剣の柄を握ったヴィエラが立ち、ニヤニヤと自分を見下ろしていた。地面に仰向けに横たわるユエルの腹部に、彼女が剣を突き立てたのだ。
「出来損ないの機械人形(オート・マタ)……所詮はこの程度か……解っていたとは言え、呆気ないわね」
ヴィエラは冷たく微笑みながらユエルの腹部に突き刺したフォトンの刃をグリグリと動かし、傷口を掻き回す。
「―――!」
ビクンと身体を弓なりに反らせたユエルだが、それでも苦痛の悲鳴を上げる事は無い。
「フン、能面みたい……こっちの姉さんじゃ顔色一つ変えないわね……でも、それじゃツマンナイわ」
ヴィエラがユエルの反応に興醒めし鼻を鳴らしていると、不意にユエルの周りの冷気が収束し始めた。
(これは……?)
訝るヴィエラだったが、一転し表情を強張らせると、慌ててその場から飛び退いた。その直後、ユエルを中心に棘状の氷塊が無数に具現する。ギ・バータの応用か派生の凍結テクニックだろうが、気付くのが遅ければ串刺しになっていたかもしれない。
「油断したわ……やるじゃない姉さん……でも……」
氷塊を砕きユエルが立ち上がる。
腹部に穿たれた風穴、土塗れの四肢、掠り傷だらけの生体パーツ……顔面の生体部分は、自ら発する凍気で凍て付き、ひび割れ大きく裂けだしている。それでも出血が認められないのは、傷口まで凍り付いてしまっている為だろう。見るからに痛々しい状態だ。

006
ユエルは脇腹を貫く傷に手を当てると凍気を発生させた。傷口が見る間に凍り付き、氷の塊が傷口を塞ぐ。
その様子を見て、ヴィエラが溜息を付いた。
「えげつないわねえ……そんなんじゃ彼氏もドン引きよ?」
ヴィエラの言葉を聞き流したユエルだが、彼女の脚はヨロヨロと覚束無い。腹部の傷は塞いだとは言え、ダメージは相当なのだろう。
「AP40%減少……シールドライン出力20%減少……本体稼働率……60%に低下……の使用……を……提案……」
ユエルが聞き取り辛い小さな声で何かを呟いている。
ヴィエラにはそれが聞こえたようだ。口の端が満足そうにニヤリと吊り上った。
「役者も揃ったし、本当に計画通り……」
ヴィエラが、ふと後ろを振り返る。そこには銃弾の痕が残るドリズラージャケットを身に付けたヘイゼルの姿があった。
「遅かったじゃない騎士(ナイト)様、あんまり遅いから、お姫様はあんな状態よ」
ヴィエラがユエルを指差し嘲笑(わら)う。
「ユエル……! 貴様ぁぁぁぁぁ―――ッ!」
ヘイゼルは悲惨なユエルの状態に気付き、眉を吊り上げた。衝動的な怒りに駆られ、ナノトランサーから片手剣『ジートシーン』を転送すると、ヴィエラに斬り掛かって行く。ヴィエラがクレアセイバーで斬撃を受け止め鍔迫り合いとなった。
「そんなに焦らないで、せっかちさん」
ヴィエラが合わせた剣から不意に力を抜くと、ヘイゼルの上体が勢い余って泳いだ。バランスを崩したヘイゼルの胸元に、ヴィエラは前蹴りを放ち蹴り離す。
「ぐぁッ!」
蹴り足に押され後退さるが、ダメージにはなっていない。だが、何と言う脚力だろう、彼女の力は完全に自分を上回っている。
ヘイゼルはヴィエラを睨み付けると、彼女は余裕の表情でユエルを示した。
「ほら、始まるわよ」
ヴィエラがユエルに視線を移し怪しく微笑む。
陽動を警戒し、横目でユエルを盗み見ると、彼女は右手を高く掲げ背伸びするような仕草を見せていた。
(あれは……SUVウェポンの召還!?)
その姿にヘイゼルは見覚えがあった。以前、ミッションを共にしたキャストが使用したのを見た事があったからだ。

【SUVウェポン】

同盟軍が所有し、個人が運用する戦術兵器の中では、トップクラスの効果を齎す兵器の総称である。
だが、その巨大さ故に兵士が携行する事は出来ないと言う欠点を持ち、同盟軍は転送装置を利用し、直接戦場にSUVウェポンを転送する事で運用している。その際、転送軸補正とナビゲーション機能を必要とする為、現状、SUVウェポンの使用はキャスト及び一部のマシナリーに限定されていた。
同盟軍は、この兵装を運用するに当たって、三惑星を網羅するネットワークシステム『ガーディアンズ・サテライト・ネットワーク(通称GSN)』をガーディアンズより借り受けている。その為、ガーディアンズに所属する隊員は、一定の条件下に措いてシステムの貸出を許可されているのだ。
「ガーディアンズ・サテライト・ネットワーク、ハッキング……ファイアーウォール・ブレイク……ダミーデータを送信……」
ユエルがしようとしているのは、SUVの管理を司るホストコンピューターへのアクセスだ。
(だが、まさか! その筈は無い!)
あの時(ディ・ラガン戦)もそうだったが、ユエルはSUVの使用権利を取得していない筈なのだ。
「惑星間転送装置(サテライト・トランスポーター)使用許可、認証……転送元を同盟軍アーセナル衛星から、惑星パルム『END-R016』に書き換え……偽装完了(コンプリート)……転移着装、実行―――」

005
空中にフォトン光が複雑な幾何学図を描き、転送の術式を表す『転送紋』が出現した。回転しながら交差する円環(リング)の中心で空間の歪みが黒い球体を形作り、別空間と結び付く一種のワームホールを形成する。

「転・装!」

007

ユエルが通信姿勢から大きく腕を一回点させ構えを取った。それはどこか、GCH5(グラールチャンネル5)の子供用特撮ヒーローの変身ポーズを連想させた。黒い球体から目も眩む程のフォトン粒子が閃光となって迸る。
「クッ! ユエル―――!」
余りの眩しさにヘイゼルは左腕で目を覆った。一瞬、ユエルの身体が中に浮き、光の中に消えて行くのが見えた気がした。
やがて中空の転送紋が消滅し光が治まる。閃光で焼かれた目を瞬かせながらも、ヘイゼルの視線はユエルを探し求める。
その視界を大きな影が覆っていた。
(……?)
ヘイゼルは大きな影を形作る物体を見上げる。その全容を認識するのに数秒を有した。
「な……ッ……!」
しかし、それを理解した瞬間、ヘイゼルは己が目にした物に絶句していた。
目の前に聳え立っていたのは、巨大な人型をした物体だった。
全高、約7メートル。見上げる程、無骨で屈強な鋼鉄の機人。
その右肩部にはグロームバスターを彷彿とさせる、フォトンメーサー砲の砲身が―――。

001

「グロームバスター・エクステンション、エネルギーライン正常……」

左肩部にはヘーゲルバスターより凶悪な七つの砲口を持つ機関砲(ガトリング砲)が―――。

002

「ヘーゲル・パニッシャー、セーフティー解除……」

右腕には凶悪な大型鋼拳、左腕には禍々しく、鋭利で獰猛なパイルバンカーが―――。

003

004

「デストロイ・ハンマー、コネクト……ストライカー・パイル、炸薬装填……」

例えるなら、全身を強大な兵装で覆った鉄の巨人。
武装を変え、現代に甦った強壮なる武神。
その迫力、その質量……余りの威容にヘイゼルは思わず後退さる。
「こ、これは―――ッ!?」

「エンドラムが造った次世代のSUV……

Large

Obstinate

Vanguard

Experiment-machine

これが……これこそが姉さんの真の姿……!」

ヴィエラの声がエキセントリックに跳ね上がる。
そんな二人に対し、審判者の如く、冷たいユエルの声が響く。

008

「全兵装オールグリーン L・O・V・E ……起動」

《続く》

ヘイゼル   「ネクストじゃねえか―――ッ!(#゚Д゚)」
ユエル    「フロムさん、早くACの次回作出してくださいッスよ…あ、あとデモンズも…(゚∀゚)」
ヘイゼル   「話し全然関係ねえしッ! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「今回は作者が一番書きたかったシーンらしいッスよ?(゚∀゚)」
ヘイゼル   「PSU体験版の時からあっためてたシーンらしいな」
ユエル    「タイトルの『L・O・V・E』に込められた本当の意味が解るシーンだったッスね…でも、予想以上に盛り上がった書き方ができなくて、また凹んでるらしいッスよ (ノ∀`)」
ヘイゼル   「プギャー(^Д^)」
ユエル    「で、『L・O・V・E』には『おっきくて・頑丈な・前衛機・の実験機』って意味があるそうッスよ(゚∀゚)」
ヘイゼル   「相変わらず、センスねえなッ! しかも適当臭い!(;´Д`)」
ユエル    「本当に適当だったみたいッスよ? と、言う事で『甘え! 俺ならこうこじつける!』って言うアイデアがあったら教えて下さいッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「人任せかよッ!(#゚Д゚) てか、採用されたら何かあんのか!?」
ユエル    「オプーナを買う権利でも……」
ヘイゼル   「いらんッ!(#゚Д゚)」

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-33】

ユエル    「PSPo2が発売決定ッスね!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「ああ、聞く所によると、PSUとはガラッと変わる仕様らしいな(;´Д`)」
ユエル    「ぶっちゃけ、初めからPSUをこうしとけよ! って話しッスよね?(゚∀゚)」
ヘイゼル   「俺は大人だから何も言わん(;´Д`)」
ユエル    「このチキン野郎ッス! Σ(´Д`lll)」

PSO10周年って事で何やら動きがあるみたいッスね……。
これは期待して良いッスか!?
絶賛ニート中ッスから、今なら何だって歓迎ッスよ!(゚∀゚)

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--------- 再開 ----------

【L・O・V・E】 Scene-04 『死戦』

全身が痛む……耳鳴りがする……。

鈍痛の残る頭を上げ、周囲を確認する。

爆発によって舞い上がった砂煙は、未だ落ち着いてはいない。

と、すれば意識が途絶していたのは……数瞬か……。

全身を走る激痛を堪え身を起こす。

四肢は健在、生きている……この身体が動く限り、戦いは終わらない。

戦士は再び立ち上がった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

黒いユエルは銃口からフォトン粒子を燻らせるGRM社製榴弾銃『アスールファイア』をナノトランサーに収めた。
ヘイゼルの着地地点から予測した地点への爆撃は一通り終了した。計算が正しければ効果は認められる筈である。
彼女は崖渕に近寄ると、身を屈めそっと下の様子を伺った。3メートル程の高低差がある下の階層には榴弾の炸裂で出来た爆発痕が有り、周囲は舞い上がった砂煙で覆われ視界を遮っている。黒いユエルは瞳を忙しなく動かし、ヘイゼルの行方を追っていた。
ふと、砂煙の中に蠢く影を見止めた彼女は、転送したライフルを素早く構え影を狙撃した。
撃ち込んだ合計三発のフォトン光弾は全て影を貫き、黒いユエルはその感触に確かな手応えを感じていた。
薄れて行く砂煙の中から影が正体を現す。地面に突き立てられた槍の柄に括りつけられた、黒いドリズラージャケット。それには三つの弾痕が穿たれていた。
「フェイク……?」
騙された事に気付いた黒いユエルの耳に突然爆発音が轟く。反射的に地面に身を伏せ、警戒しつつ爆発の元に銃口を向けると、別の場所で再び爆発が起こった。銃口を彷徨わせながら事態を把握しようとするが、更なる爆発が彼女を惑わせる。
「時限式爆弾……?」

トラップ系アイテム 『ダメージトラップ』

文字通り爆発により目標にダメージを与える事が出来る、設置型時限式の小型爆弾である。
黒いユエルの分析通り、爆発はそれを利用した物と思われるが、爆発が起こった位置に規則性が窺えなかった。ヘイゼルが仕掛けた物の可能性は高いが、その目的が何なのか解らない。
彼の出方が解らない以上油断は出来ない。黒いユエルは地面に腹這いになりながら注意深く崖渕から下を見渡す。彼はまだ階下に潜んでいるのだろうか……?
爆発音の余韻に混って、低いフォトン・タービンの音がする事に気付いたのはその時だ。肩越しに振り返った黒いユエルの視界に小型のスクーターが猛スピードでこちらに近付いてくるのが映った。スクーターに跨っているのは……あの男(ヘイゼル・ディーン)!?
黒いユエルは自らの判断ミスに気付いた。あの爆発もフェイク……ジャケットの影と爆発に彼女が気を取られている間にヘイゼルは階層を移動し廻り込んでいたのだ。そして彼女が警戒をしている裏を掻き、乗ってきたスクーターの機動力を活かし彼女を強襲……爆発はスクーターのエンジン音を隠す目的もあったのだろう。
「おおおおおおおぉぉぉぉ―――ッ!」
ヘイゼルは雄叫びを上げながら、更にスピードを上げ黒いユエルに肉薄する。彼女は腹這いのまま、ライフルの銃口をヘイゼルに向け引き金を引いた。だが発射された光弾はスクーター本体が持つ、衝突時衝撃緩和用のシールドにより阻まれる。ヘイゼル自身もカウル部分に上体を隠し射線から逃れている。自爆覚悟の特攻……それを停めるにはこちらの火力が足りていない。
オーバードライブ射撃なら車体を守るシールド事貫けるかもしれないが、チャージに若干の時間が必要だ……間に合わない、防ぎきれない!
そう判断した黒いユエルは、その場を逃れるべく跳躍し起き上がった。緊急の為、限界値を超える稼動をした関節(アクチュエーション・モーター)と鋼線状人工筋肉(ワイヤード・マッスル)が悲鳴のように軋みを上げる。
「遅えッ!」
ヘイゼルが跨るスクーターが猛烈な加速度で黒いユエルに迫っていた。
白い少女の姿は浮かばない。
起き上がりかけた黒いユエル目掛けて車体を特攻させる寸前、ヘイゼルはスクーターから飛び降りた。しかし運動エネルギーに抗うことは出来ず、ヘイゼルは激しく地面を転げ回る。回避の間に合わなかった黒いユエルはまともにスクーターの激突を受け弾け飛び、車体ごと崖下に転落していった。
「……クッ……ソ……イテ……ェ……」
暫く動かなかったヘイゼルだったが、毒づきながらゆっくりと上半身を起こした。
シールド・ラインの反発力が地面に叩きつけられた衝撃を緩和したとは言え、受けたダメージは相当だ。痛みを堪えて立ち上がると、黒いユエルが落ちていった崖の段差まで左脚を引き釣り歩み寄った。自分もこの様子なら彼女も只では済むまい。崖下を覗くと、半壊したスクーターのエンジンが白い煙とフォトン粒子を噴き上げていた。
「やっちまった……な……モリガンに何て言い訳するか……」
痛みに顔を顰めながらヘイゼルは苦笑いをする。型は旧式とは言え、ビンテージ物で可也の値が付く彼女のお宝をジャンクにしてしまったのだ。バレれば只では済まないだろう。だが、今は黒いユエルの動向だ。彼女は一体どうなった?
見回すとスクーターの残骸から大分離れた所で彼女はうつ伏せに倒れていた。衝突の衝撃はかなりの物だったのだろう。その彼女の上体が僅かに動いた。
生きている……あれ程のダメージを受けて、まだ、あいつは活動可能だと言うのか!?

『身体が動く限り、戦いは終わらない』

それは、つい先程ヘイゼル自身が噛み締めた言葉……アイツも……未だ終わっていない!
「クソがぁぁぁぁあ―――ッ!」
ヘイゼルは怒声を上げ、崖を飛び降り黒いユエルの下に向かった。彼女は背後を振り返り、こちらを確認したがヘイゼルの存在に構わず這い進み続けている。
(逃げる? 戦う為に造られたマシナリーが逃げると言うのか!?)
ヘイゼルは知る良しも無かったが、彼女達に内蔵されたAフォトンリアクターは、遺跡(レリクス)で回収されたAフォトンリアクターと、現代の科学技術で製造可能なAフォトンリアクターを融合し完成した『ハイブリッド・Aフォトンリアクター』である。主要部分にロストテクノロジーの遺物を利用したジェネレーターは、その出自ゆえ絶対数が少なく、それを内蔵した彼女達の戦略目標はSEED殲滅の次に、H・AFリアクターを破壊する事無く帰還、自身が破損した場合は可能な限り敵勢力圏を逃れ、味方部隊が回収可能な場所まで離脱する事が優先されるのだ。
黒いユエルはスクーターとの衝突で人体で言う背骨部分(脊柱フレーム)に損傷を受けていた。加えて神経伝達にも支障を来たし、立ち上がる事はおろか脚部を動かす事もままならない。黒いユエルは優先事項に従い逃走の道を選択した。
ヘイゼルはドリズラージャケットを括り付けたフォトン・スピア『ムグングリ』を地面から引き抜き、黒いユエルに駆け寄った。彼女は最早、ヘイゼルの事等、気に留めず逃走し続けている。ヘイゼルは槍の柄を両手で握ると彼女に止めを刺すべく勢い良く振りかぶった。その瞬間、黒いユエルがクルリと身を翻し仰向けになった。その手には何時の間に転送したのか、ドラムライン(マシンガン)が握られていた。
「無駄だッ!」
ヘイゼルはマシンガンを握る黒いユエルの腕を蹴りつけた。彼女の手からすっぽ抜けた銃があらぬ方向へ飛んでいく。最後の奇襲も通じず、万策尽きた黒いユエルは無感情な瞳でヘイゼルを見上げる。彼はもう一度両手で握った槍を振りかぶり、その鋭い切っ先を彼女の胸元へ振り下ろした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

生まれながらにして人は平等ではない。
だが一つだけ例外に与えられた平等がある。
それは、死……。
生きる事が権利ならば、死は総ての生物に対し、平等に約束された最後に果たすべき義務だ。
「……」
その死が、黒いユエルに訪れる事は無かった。
彼女は無機質な瞳で胸元ギリギリで止められた槍の切っ先と、ヘイゼルの顔を見比べている。
フォトンの切っ先は彼の苦悩を表す様に小刻みに震えていた。
結局、ヘイゼルは黒いユエルに止めを差す事が出来なかった。
ユエルを救う為に、今しなければならない事……それは解っている。
「解って……いるのに……!」
ヘイゼルは顔を顰めた。
その救いたい者の面影が、どうしても目の前の少女とだぶってしまう。
「クッ……! 行けよ……」
槍を引いたヘイゼルは視線を逸らし吐き捨てた。
「勝負は付いた。俺の勝ちだ……だから消えろ……俺達の前に二度と顔を見せるな」
身を翻したヘイゼルが見せた背中を、黒いユエルは一瞬見詰め、また直ぐに這いつくばって進み始めた。
この選択が何を齎すか、ヘイゼルには解らない。
(俺は……甘いのだろうか……)
ヘイゼルは自問する。
少し前の自分になら、こんな迷いは無かった筈である。
自分が変わったとするならば、それはあの雨の日……白い少女と出会ってからだ。
アイツの存在が俺を弱くしたとしても、それでも俺はアイツの為に今、戦わなければならない。
何故かは未だ解らなかったが……。

《続く》

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Phantasy Star Universe-L・O・V・E 【2-32】

ユエル    「久々の更新ッスよ~!」
ヘイゼル   「いや、久々すぎだろ Σ(´Д`lll)」
ユエル    「生まれ変わった新生ブログ! 今日から私を“ユエル・ニート”って呼んで欲しいッスよ!(゚∀゚)」
ヘイゼル   「ニ……? え……と、待てよ……(;´Д`)」

ポワポワ……

『生活環境が変わって、ウンヌンカンヌン……負けてたまるかッスよ―――!ヽ(`Д´)ノ』

ヘイゼル   「結局、負けてんじゃねえか! Σ(´Д`lll)」
ユエル    「うるさいッスね! 試合に負けても勝負には勝ってるから良いッスよ!(゚Д゚#)」
ヘイゼル   「なんだそれは!(#゚Д゚)」

と、言う事で暫くはブラブラする事になりましたッスよ('A`)
引継ぎとか色々で9月中は現状そのままの感じッスけど、以降は新しい生き方でも探す事にするッスよ(゚∀゚)
ビバ、無職!

ヘイゼル   「この不況の折になぁ……('A`)」
ユエル    「ポジティブに行こうッスよ!(゚Д゚#)」

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【L・O・V・E】 Scene-03 『Juel The Dark』

側頭で結い上げた薄紫色のお下げ髪。

クリッとした大きな瞳。

だが、見慣れた顔が持つ、彼女の身体は漆黒の外装(パーツ)で覆われている。

其処に立っていたのは紛れも無く、黒い"ユエル"だった―――。

(いや、違うッ!)

否定し、ヘイゼルは改めて黒いユエルを凝視する。

ユエルの身長はもっと低かった……。

ユエルの目は、こんなに吊り上っていなかった……。

ユエルは、こんな魂を感じない瞳をしていなかった……。

それはオリジナルとは異なる、似て非なる存在(モノ)。

こいつは……この女はユエルでは無い、断じて!

001

「ユエル・G・トライア(Juel・Gunner・Trial)……」

緋色の女は黒いユエルをそう呼んだ。
「ユエル・シリーズの砲撃戦特化型試験機……。姉さんが本来のスペックを発揮していれば、生まれる筈だった可哀想な彼女の妹……今のその子は完成していたボディに、粗末な戦闘用人格を埋め込まれただけの只の人形(マシナリー)よ。演算力や自律思考力は私達には遥かに及ばないけど、私達と同様にハイブリッド・A・フォトンリアクターを内臓しているわ。貴方に勝てるかしらね?」
ヴィエラの言葉が終わると、黒いユエルは構えていたライフルをナノトランサーに収納し二挺の短銃を転送させ身構えた。
「悪いが……お前の相手をしている暇は無い!」
そう、全ての元凶はこの緋色の女―――!
ヘイゼルはハンドガンで黒いユエルを牽制し、緋色の女へと駆け寄った。右手を振り上げると同時にナノトランサーから転送させたGRM社製の片手剣、ジートシーンで斬り付ける―――。寸前、発射された光弾がヘイゼルの行く手を阻んだ。黒いユエルの横槍だ。
「クッ!」
「悪いけど、私も貴方の相手をしてる暇は無いの……トライア、代わりに貴女が彼の相手をして上げて」
「ハイ、姉サマ―――」
ヴィエラが顎で指示すると、黒いユエルは抑揚の無い無感情な言葉で頷く。
「さあ、待たせたわね、姉さ……」
ヴィエラはユエルを振り返り眉を顰めた。ユエルは胸元に手を翳し拳を固めている。彼女が身に付ける腕部外装(パーツ)レドミエル・アームには拳を守る為の装甲部が有るのだが、その先が不意に開閉し中からフォトン・スフィアが姿を現した。フォトン・スフィアはテクニック反応を生じさせる、言わば触媒となる物で、本来は短杖(ワンド)や長杖(ロッド)と呼ばれる法撃用デバイスに取り付けられている物だ。ユエルはそのフォトン・スフィアに凍気の法術を集束させると、ヴィエラ目掛けて一気に解き放った。凄まじい冷気が空気を軋ませながら、地を這う氷結の魔弾となりヴィエラに襲い掛かる。反応からして氷系テクニックの基本法術『バータ』かと思われるが、その法撃力は尋常ではない。精神力の高いニューマンにさえ、これ程の法撃出力は出せない筈である。
「流石は法撃特化型……と、言いたい所だけど―――」
ヴィエラは迫る氷結の魔弾をサイドステップで難なく避けると……。
「攻撃が単純すぎるのよ!」
何時の間にか転送していた片手剣を振り上げユエルに斬り込んで行く。切っ先の鋭い片手剣はGRM社製のクレアセイバーだろうか?
「はああああぁッ!」
「"アイギス"展開……」
裂帛の気合と共に斬り付けられたフォトンの刃にユエルが左手を翳すと、凍気を纏った局所型のフォトン・シールドを発生させ受け止める。緋色の女、ヴィエラと電脳の魔女、ユエルの闘いの火蓋は切って落とされた。
「待て、この野郎!」
その二人を追うヘイゼルの足を黒いユエルが阻む。
「邪魔をするな―――ッ!」
無視するには厄介な相手だ。先に、この女をどうにかしないと二人を追う事は出来はしない。ヘイゼルは止む無く黒いユエルに襲い掛かった。彼女は長い銃身(ロングバレル)を持つテノラ製の双短銃、アルブ・マガナを乱射し、弾幕でヘイゼルの足を止めよう試みる。だが―――。

004
「止められるかよ! その程度で―――ッ!」
ヘイゼルは巧みに弾幕を掻い潜ると、電光石火で黒いユエルの懐に踏み込んだ。
黒いユエルの攻撃は単調すぎる。ヴィエラは彼女には粗末な戦闘用人格しか組み込まれていないと言っていた。なるほど、それも頷ける。
(ガードマシナリーでさえ、もう少しマトモな動きをするぞッ!)
間合いを詰め剣を奔らせると、黒いユエルも反応して回避行動を取る。だが、遅い! コンマ数秒の遣り取りでヘイゼルは勝利を確信していた。その瞬間―――。

黒いユエルと視線が重なった。

やや沈んだ萌葱色の瞳は彼女と同じ色彩……。
白い少女の姿が二重となって映る。
(馬鹿がッ! こんな時に出るんじゃねえッ―――!)
刹那の一瞬、太刀筋が鈍る。だが、その隙は命取りだった。
黒いユエルの構えた銃口がヘイゼルを捕らえる。発射された光弾を寸前で交わした積りだったが、一発の銃弾がシールドラインの防御を抜けて、ヘイゼルの太股を貫いていた。
「ぐぁッ!」
激痛に上がった悲鳴を噛み殺すが、負傷によって機動力が奪われた、この状態ではまともに動けそうもない。黒いユエルはバックステップで距離を取ると左手にマシンガンを転送しヘイゼルに狙いを定める。
マシンガンの乱射で弾幕を貼り、こちらを逃がさぬ気か……確実に仕留める積りだ。

003
「ッソタレが!」
ヘイゼルの右手にナノトランサーから物質が転送される際に生じるフォトン光が輝き、同時に黒いユエルが構えるGRM社製ドラムラインから発射された銃弾の嵐がヘイゼルを襲う。だが、手応えが無い。気付くと、ヘイゼルの姿が掻き消えていた。黒いユエルは急ぎ索敵を開始すると、ヘイゼルは高速移動するスピアに捕まり、その場を逃れていた。

006

槍術フォトンアーツ "ドゥース・マジャーラ"

リアクターから発生するフォトン粒子を推進力として突撃する技なのだが、ヘイゼルはその移動力を離脱に利用したのだ。本来で有れば、突撃する槍の上に乗る形なのだが、足を負傷したヘイゼルにはそれが出来ない。やむを得ず、槍に捕まり引っ張られる格好になっているが、咄嗟の判断で窮地を凌いでいた。
その姿を目で追いながら、黒いユエルはマシンガンをナノトランサーに収めた。距離を空ければ射程、威力、精度共にマシンガンは欠ける。代わりに彼女はライフルを転送していた。
「ハイブリッド・A・フォトンリアクター、フル・ドライブ……オーバードライブ射撃モードへ移行……」
黒いユエルの胸元にあるシールドラインシステムが、過剰に出力されたフォトンエネルギーにより激しく輝く。フォトン粒子は彼女の身体を走る血脈とも呼べるフォトンラインを駆け抜け、フォトンエネルギーがライフルに収束して行く。外部から充填された許容量ギリギリの出力にライフルが本来持っているフォトンリアクターが悲鳴のように光を放ったいた。
「なっ!?」
尋常では無い様子にヘイゼルが絶句する。
「―――開放(フルバースト)」
黒いユエルはヘイゼルを捕らえて引き金を引いた。
銃口から放たれた光弾は尾を引く一条の光線と化しヘイゼルを襲うが、彼は寸前で地を蹴り、進行の方向を変えていた。
その脇を光線が掠めて過ぎる。
「熱ッ!」
この熱量、威力は通常のライフルの物とは比べ物にならない。グレードで言えば最上級ランク(Sグレード)に匹敵する携帯レーザーカノンか、それ以上のエネルギー出力である。
「携帯武器のカタログスペック以上のエネルギー出力を無理やり引き出す能力……」
ヘイゼルは理解し、苦々しげに顔を顰めた。
A・フォトンリアクター搭載型……これが彼女達(ユエル・シリーズ)が持つ特殊能力か!

ヘイゼルは二射目の光線を何とかドゥース・マジャーラを使って避け、間一髪の所で敷地と敷地の段差を飛び降り死角へと逃れた。

005
「イッ……テェ……!」
着地の衝撃に負傷した脚に激痛が走るが、泣き言を言っている余裕は無い。
ヘイゼルはナノトランサーからディメイトを転送した。
ディメイトは一般的に流通している回復薬品である。アンプルの成分は細胞再生促進薬と治療用ナノマシンで構成されており、重症ですら瞬く間に治癒する事ができるのだが……。
「マズイな……」
ディメイトを服用したヘイゼルは、メイト系回復薬の所持数を確認し小さく舌打ちした。
回復薬の手持ちが少ない。有事に備え最低限度の武器は所有していたのだが、回復薬の補充を怠っていた。中継地や街中でも簡単に入手する事が出来る手軽さが仇となった。だが、それは自らの失態であり、誰も責める事は出来ない。
それを踏まえても……。
「戦れるか? あの二人を相手に……」
緋色の女と黒いユエル―――。
何れもA・フォトンリアクターを搭載した、未知数の戦闘力を持つ相手、その二人を相手に万全の備え無くして勝算はあるのか……疑問である。
しかし、戦わなくては……勝たなくては……。

007
脳裏に白い少女の姿が浮かんで消える。そしてそれを覆い尽くそうとする緋色の女の姿も……。
「戦えるか……勝てるかじゃねえ……戦って、勝つしか……それしかッ!」
ヘイゼルが槍の柄を固く握り締めた時、何かが空気を切り裂く音がし、上の段差から光球が落ちてきた。
(あれは……フォトン・グレネード弾!?)
着弾後に爆発するよう調整されたフォトン榴弾……カテゴリー的にフォトン・グレネードと呼ばれる重火器から発射された榴弾である。
理解したと同時に目の前で閃光が弾けた。

《続く》

更新があまりにも久し振りでやりかたを忘れちゃってるッスよ! Σ(´Д`lll)

ヘイゼル   「 Σ(´Д`lll)」 

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